2022年度診療報酬改定に向け、中央社会保険医療協議会は2022年1月14日、「議論の整理」をまとめました。同協議会・総会での検討はこれから、今回まとめた内容に沿って点数の配分などを含む個別改定項目の検討に移っていきます。
訪問看護については、20年度介護報酬改定による対応に合わせ、医療保険の訪問看護でもBCPの策定義務化や理学療法士等が訪問する場合の訪問看護指示書の記載欄見直しが行われる方針です。また、専門性の高い看護師の単独での訪問を評価する方針も示されました。訪問看護に関する項目を確認しておきましょう。
中医協がこの日まとめた「議論の整理」は、これまでの検討内容を22年度改定の柱である「I.新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築」「II.安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進」「III.患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現」「IV.効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上」の4つの大項目に沿って整理したものです。
訪問看護に関する議論については、「I.新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築」の項目のうち、「I-6 質の高い在宅医療・訪問看護の確保」の中に以下のように記載されています。
(8) 利用者が安心して24 時間対応を受けられる体制の整備を促進する観点から、24 時間対応体制加算について、複数の訪問看護ステーションが連携して当該体制を整備する場合の要件を見直す。
(9) 感染症や災害が発生した場合であっても、必要な訪問看護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、訪問看護ステーションにおける業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション) の実施等を義務化する。
*関連記事:訪問看護の24時間対応体制加算の要件緩和とBCP義務化を検討
(10)機能強化型訪問看護ステーションの更なる役割の強化を図る観点から、 研修の実施等に係る要件及び評価を見直す。
*関連記事:機能強化型訪問看護ステーションの要件見直しを検討、中医協
(11)訪問看護ステーションの利用者に係る関係機関との連携を更に推進する観点から、訪問看護情報提供療養費の対象者及び情報提供先等を見直す。
*関連記事:小児への訪問看護を巡る22年度診療報酬改定に向けた方向性
(12)医師の指示に基づき、医療的ニーズの高い利用者に対する理学療法士等による訪問看護が適切に提供されるよう、理学療法士等が訪問看護の一環として実施するリハビリテーションに係る訪問看護指示書の記載欄を見直す。
*関連記事:22年度改定での訪問看護ステーションからの理学療法士等の訪問の方向性
(13)質の高い訪問看護の提供を推進する観点から、専門性の高い看護師による同行訪問について、当該看護師が受講する褥瘡ケアに係る専門の研修に、 特定行為研修を追加する。
(14)質の高い訪問看護の更なる充実を図る観点から、専門性の高い看護師が、 利用者の病態に応じた高度なケア及び管理を実施した場合について、新たな評価を行う。
(15)質の高い訪問看護の提供を推進する観点から、医師が特定行為を行う必要性を認めた患者の病状の範囲及び診療の補助の内容等に係る手順書を交付した場合について、新たな評価を行う。
*関連記事:2022年度診療報酬改定へ専門性の高い看護師単独での報酬評価など検討
(16)在宅での看取りに係る評価を拡充する観点から、訪問看護ターミナルケア療養費について要件を見直す。
*関連記事:訪問看護ステーションによるICT死亡診断支援と退院当日の評価が焦点に
(17)看護補助者による複数回の同行訪問のニーズを踏まえ、複数名訪問看護加算の要件を見直す。
(18)退院日の利用者の状態及び訪問看護の提供状況に応じた評価を行う観点 から、退院支援指導加算の評価の在り方を見直す。
(19)訪問看護の事務手続簡素化の観点から、難病等複数回訪問加算等における同一建物内の利用者の人数に応じた評価区分を見直す。
*関連記事:2022年度診療報酬改定の訪問看護の論点「複数名訪問看護加算」と「退院支援指導加算」
こうしてみると訪問看護に関する検討は、今後もほとんどが当初の厚労省の提案や問題提起通りに進み、22年度改定で何らかの対応が行われそうです。
逆に、これまでの検討の最中に問題提起や要望があったものの「議論の整理」に盛り込まれなかった項目としては、
・前回の診療報酬改定で実施された、理学療法士が訪問した場合の週4日目以降の評価引き下げについての見直し ・小児患者が外来受診する際の看護師等の同行 ・専門性の高い看護師など、リハビリテーション専門職以外の職種が訪問する際の指示書への妥当性の記載
などが挙げられます。
「議論の整理」の内容については、1月21日までパブリックコメントが募集されています。
また、同日に開催される公聴会を通じて一般からも意見を募る予定です。その上で中医協では個別改定項目(具体的に新設・再編する各種加算とその算定要件など)の検討に移ります。
また、看護職員の収入引き上げについては既報の通り22年度改定全体の議論とは別に、中医協としての見解が厚労相に示されます。検討は、診療報酬改定を行う4月以降になる予定で、初めの段階で対象となるのは「救急医療管理加算を算定して救急搬送に年200件以上対応する病院」や「三次救急病院」の職員です。政府方針に沿って10月以降に診療報酬の新たな仕組みが作られ、3%程度の引き上げが実施される見通しです。
*関連記事:訪問看護事業所職員の賃上げはどうなる?看護職の処遇改善巡る議論の整理
介護経営ドットコムの記事を制作・配信している編集部です。日々、介護事業所を経営する皆さんに役立つ情報を収集し、発信しています。