2022年度診療報酬改定に向け、高度な医療ニーズに対応できる訪問看護サービスを確保するための施策が引き続き実施される見通しです。この記事では、10月27日の中央社会保険医療協議会(中医協)で行われた訪問看護関連の施策の検討のうち、専門性の高い看護師による訪問について詳細を取り上げます。
*関連記事:22年度改定での訪問看護ステーションからの理学療法士等の訪問の方向性、小児への訪問看護を巡る22年度診療報酬改定に向けた方向性
訪問看護の質の向上・担保を巡っては、前回の2020年診療報酬改定で訪問看護ステーションが算定が算定する「訪問看護基本療養費」や、医療機関が算定する「在宅患者訪問看護・指導料」、「同一建物居住者訪問看護・指導料」のうち、専門の研修を受けた看護師が外部の訪問看護ステーションや医療機関の看護師らと共同で同一日に訪問看護サービスを提供した場合に算定できる報酬区分の要件が変更されています=下記資料参照=。具体的には、現場のニーズを受けて、算定対象に「人工肛門若しくは人工膀胱のその他の合併症を有する利用者」への訪問が評価対象に加わっています。
【画像】第493回中央社会保険医療協議会総会(21年10月27日開催)資料より(以下同様)
22年度診療報酬改定に向けては、現在、
・外部の訪問看護師等との同行訪問が報酬で評価される「専門性の高い看護師」の範囲を拡大すること ・「専門性の高い看護師」単独での訪問を新たに評価すること
の2点が検討されています。
*編集部注:CNS:Certified Nurse Specialist、専門看護師、CN : Certified Nurse、認定看護師
現状、専門性が高い看護師として診療報酬上外部の訪問看護師等との同行訪問が評価されているのは、専門分野での実務経験に加えてそれぞれ、看護系の大学院を卒業し、専門の単位を取得した上で認定審査を通過している「専門看護師」と大学病院などでの一定の研修を受けた後に日本看護協会が認める「認定看護師」です。
厚生労働省は、今回、22年度診療報酬改定に向けた検討事項として、この2つの資格に加えて「特定行為」に関する研修を修了した看護師による訪問も診療報酬上で評価することを提案しました。
今回、検討のテーブルに上った特定行為研修は、本来、医師や歯科医師の判断・指示を受けて実施する特定行為について、医師や歯科医師が作成した「手順書」に従い看護師が自ら実施することを認めるための研修です。研修の内容やそれぞれの研修を修了した看護師が実施できる特定行為は多岐にわたります=下記資料参照=。そのため、訪問看護の領域で研修修了者を評価対象として認めるかどうかという検討とは別に、評価すべき特定行為・技能の範囲も検討の対象となります。
厚労省は検討の手掛かりとして、現在(2020年10月時点)訪問看護ステーションに所属している職員の状況を見ると、「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」や「創傷管理関連」の特定行為区分の研修修了者が相対的に多いことなどを示しました。
中医協の委員からは、専門性の高い看護師による単独での訪問を評価したり、評価対象を特定行為の研修修了者にも広げたりする方向性についての反対意見はありませんでした。
ただし、専門性の看護師を配置したり、訪問したりといった体制を整備していることだけで評価するのではなく、「患者さんの状態や看護の内容に応じた評価とすべき」「能力を活かした専門的な処置を行ったことを評価するべき」などの意見が相次ぎました。これを受け、今後は具体的な要件設定ついて、検討が進められるものと考えられます。
このほかに主な指摘としては、
▽専門性の高い看護師の単独での訪問は、同行する相手への教育効果が見込めない分、報酬評価はその差も考慮した設計とするべき
▽専門性の高い看護師による訪問看護でも、医師も含めたチームとして在宅医療を提供するということが大前提。訪問看護ステーションが作成する計画書や報告書が過度に包括的なものになりすぎないように、注意しておく必要がある
▽内科医と皮膚科医など、複数のドクターが在宅療養に関与することなど関与することも考えられるため、そうした場合の指示の確認方法についても、検討が必要
▽医療機関からの訪問看護についても評価を行うべき
▽特定行為研修修了者と専門/認定看護師はそれぞれ目的や役割が異なる制度である。そのため、制度を横断して評価する場合、特定のテーマにおける研修のレベルを同一に担保する必要がある。
-といったものがありました。
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