2022年度診療報酬改定を巡る議論では、年々増加している小児の訪問看護利用者をどのように支えていくかも焦点になっています。今後は、訪問看護ステーションからの情報提供に報酬上の評価が行われる「訪問看護情報提供療養費」の見直しについて検討される見通しです。
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小児の訪問看護については、2020年度診療報酬改定で、訪問看護ステーションが15歳未満の利用者に関する情報を、自治体や幼稚園・保育所などへ必要に応じて提供した場合に評価されるようになっていました(訪問看護情報提供療養費1、2の算定要件見直し)。
これは、市町村などが小児患者を持つ家庭などに保健サービスや福祉サービス(健康教育や健康相談、機能訓練、訪問指導など)を提供することや、幼稚園・保育所などで適切な医療的ケアが実施されることを促すための施策です。
【画像】第493回中央社会保険医療協議会資料(10月27日開催)より(以下同様)
22年度改定に向けた議論に入ってからはこれまで、訪問看護ステーションと小児患者に関わる関係機関の間で、患者の成長に合わせてさらにきめ細かく、また、切れ目のない情報共有を進めていく必要性が指摘されてきました。そこで、厚生労働省は、10月27日の中央社会保険医療協議会(中医協)で、報酬評価の対象と認められる情報提供先を高校や障害児相談支援事業所などにも広げることや、報酬が算定できる頻度の見直しについて、検討を促しました。
ただ、中医協の検討の範囲ではありませんが、小児患者が学校などで適切な医療的ケアを受けるには、訪問看護ステーション側の働き掛けでなく、学校側の体制整備も課題です。20年9月時点で小・中学校や保育所などに対する情報提供を算定要件とする「訪問看護情報提供療養費2」を算定した機能強化型訪問看護ステーションが1.9%に留まるという厚労省の調査結果はこうした状況を物語っています。
議論の中で、松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、15歳未満の小児に関する情報提供が報酬で評価され、関係機関の連携を推進する制度ができたことで「小児、在宅ケアが進む結果になった」との認識を示しました。
その上で、人工呼吸器や胃ろうなどのデバイスを装着していても、活発に活動する小児患者へのケアには、技術が必要になったり、人手がかかったりすることなどを指摘し、今後も関係機関との連携を進めていくことに賛意を示しています。
そのほか、一部の委員からは、「基本的には、情報提供というのは主治医が行うべき」という考え方も示されましたが、訪問看護情報提供療養費が算定できる情報提供先に、高等学校や指定障害児相談支援事業所などを加えるという方向性には、反対意見はありませんでした。
また、患者側の立場として中医協に参加している間宮清委員(連合・「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、新たな視点として、大学病院などの外来にかかっている小児患者には継続して関わっている在宅医が存在しないことに言及しました。そうした場合、訪問看護ステーションなどの看護職員の同行が家族の負担軽減にもつながっている実態があるなどとして、相応の評価を求めています。
この要望については、吉川久美子専門委員(日本看護協会常任理事)も、患者の外来受診に同行している看護師が、在宅での様子を医師に伝えたり、患者家族の質問や不安な点などを代弁したりと言ったかたちでケアに関わっているという実態を訴え、報酬での後押しについて検討を求めました。
また、訪問看護情報提供療養費2の算定頻度についても、小児患者の成長に合わせた提供が行いやすくなるよう、現状の各年度1回限りから増やすことなどを要望しています。
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