2022年度(令和3年度)診療報酬改定に向けた検討を行っている中央社会保険医療協議会(中医協)では、訪問看護について2回目の議論が行われました。患者の状態に合わせた訪問看護サービスを提供するために、適切な職種・頻度・内容について検討が行われ、その結果が報酬体系や点数に反映されます。この記事では、訪問看護ステーションからの理学療法士等リハビリテーション専門職の訪問に絞って取り上げます。
*近年の診療報酬改定における訪問看護の動向と中医協での議論についてはこちら
訪問看護の利用者数や給付費は増加が続いていて、特に医療保険での訪問看護の利用者数や医療費は、介護保険と比べて総数が小さいものの、伸び率が顕著です。そこで、22年度診療報酬改定に向けては、高い医療ニーズを持つ患者に対応する訪問看護のサービス提供主体を増やすという観点と、医療費を抑制する観点との両面から適切な報酬体系が検討されます。
こうした背景から、厚生労働省は10月27日の会合で、
・専門・認定看護師や特定行為研修修了者の専門性の高い看護師による訪問看護の評価の在り方 ・訪問看護ステーションからの理学療法士等による訪問看護の在り方 ・小児への訪問看護について関係機関同士の連携強化を図るために、「訪問看護情報提供療養費」の算定を認める情報提供先等や頻度
訪問看護ステーションからの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の訪問は、2021年度介護報酬改定では基本報酬が引き下げられています。また、理学療法士等が行う訪問看護は、訪問先で実施したケアの内容を訪問看護報告書に添付することも義務付けられました。
さらに、介護報酬についての検討を行う社会保険審議会・介護給付費分科会では当初、「役割を踏まえたサービスの提供」を名目として、人員配置基準に訪問看護の提供に当たる従業員のうち6割以上を看護職員とする要件を設けることも検討されていました。この案は、サービスが継続して提供できなくなるといった反発なども大きかったことから、「看護体制強化加算」の要件に盛りこむという形に修正されています。
そして、同分科会は改定後の課題として「訪問看護事業所から理学療法士等が訪問して行う訪問看護と、訪問リハビリテーション事業所が行うリハビリテ ーションについて、実態調査等を行い、それぞれの役割に応じたサービス提供の在り方や看護職員の確保の強化策について、検討していくべき」という見解をまとめています。
理学療法士等が訪問して行う訪問看護についての実態把握は、診療報酬改定を巡る今回の検討でも焦点になっています。
厚労省はこの日、理学療法士らによる訪問の実態を共有するための資料として、
・脳血管疾患、筋骨格・運動器疾患、神経難病の利用者は、理学療法士らによる訪問看護を受けることが多い(看護職員のみの訪問はがん、精神疾患が多い) ・2021年度介護報酬改定では、理学療法士等が訪問看護の一環としてリハビリテーションを行う場合、訪問看護指示書に時間と回数を記載する変更を行った
といった状況を中医協の委員に示しました。これらを踏まえ、22年度診療報酬改定で必要な対応について議論を促しています。
【画像】第493回中央社会保険医療協議会総会(21年10月27日開催)資料より
これに対しては、職種によって提供しているケアの内容が異なるのであれば、報酬もそれに見合ったものにすべきという意見が一部の委員からありました。
ただし、理学療法士が実際にどのようなケアを実施しているのかという実態を把握するには、厚労省が示したデータでは不十分であり、より精緻なデータを示すべきと複数の委員が指摘しています。
理学療法士らの訪問の実態把握を進めていくという視点からは、日本医師会の城守国斗常任理事が、「指示を出す我々医師側も含め、もう少し丁寧に実態を見ていく必要があるのではないか」と問題提起しました。その上で、医療保険を使う場合でも、訪問看護指示書に理学療法士等が行う訪問看護の時間や頻度について記載することを検討するよう提案しました。
この提案には、支払い側の立場として参加している保険者代表委員も賛同しています。
幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)はさらに踏み込み、22年度改定では指示書に訪問看護を提供する職種を専門性の高い資格を持つ看護師なども含めて指定し、その頻度も明記するような変更を行うよう求めました。
厚労省は今回の会合で論点としては示しませんでしたが、前回の診療報酬改定では、理学療法士が訪問した場合の週4日目以降の評価が引き下げられています。
【画像】第486回中央社会保険医療協議会総会(8月25日開催)資料より
この日の議論の中で、日本医師会の城守国斗委員は、週4日目以降の報酬を継続して低いままにしておくことを支持する考えを示しています。
これに対し、専門委員という立場で参加した半田一登委員(中医協にはチーム医療推進協議会代表として参加。日本理学療法士連盟会長)「週4日目以降の点数を下げるという根拠はない」と主張し、身体に障害を持つ療養者のサービス受給を阻害しているとして見直しを要望しました。
22年度報酬改定に向けて改めて検討が行われるかどうかも、着目すべき要素といえそうです。
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