介護事業所の人材難を救う「賃上げ支援助成金パッケージ」―補助金を賢く組み合わせて活用するコツ

2025.05.27
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1.介護現場の賃上げ手段は処遇改善加算だけじゃない

高まり続ける介護サービスの需要。その一方で、介護現場で働く人材の待遇や職場環境は、依然として改善の余地が大きいと言われています。

経営者の多くが、「職員の給料を上げたい。でも収支が厳しくてできない」と頭を抱えています。しかし、処遇改善加算の算定では限界があり、手続きにも手間がかかるため、十分に活用できていない事業所も少なくありません。

そこで、目を向けていただきたいのが介護の現場で働く人の賃上げ原資を得る方法は、処遇改善加算だけではないということです。国は【賃上げを応援するための複数の助成制度】を整備しています。

これらを組み合わせることで、無理だと思っていた賃上げや業務改善が、現実的な選択肢になり得るのです。

2.「『賃上げ』支援助成金パッケージ」とは何か?―まず補助金を使ってみよう

まず、今回紹介したいのが、厚生労働省の賃上げ支援助成金パッケージです。「パッケージ」と名の付く通り、この支援メニューは単独の制度を指すものではありません。

複数の助成金メニューを“組み合わせて活用する”ことで、賃上げや職場改善にかかる事業主の負担を軽減するアプローチです。

従業員数が少ない小規模介護事業所であれば、「制度を調べる余裕がない」「申請が複雑そう」と感じるのは当然です。しかし、いま国が提示しているこの制度群は、まさにこの層を対象としたものが多く、使いこなせることができれば大きな支援になります。

このパッケージでは、たとえば、人材育成・業務改善・非正規雇用者の処遇改善がカバーでき、加えて、設備投資や賃上げ後の税負担軽減を図る中小企業向けの支援制度もあります。

このように、国が用意している支援制度を組み合わせて使えば、あなたの介護事業所が抱えている「困りごと」を幅広くカバーすることができるのです。

「助成金は難しそう」「自分たちには関係ない」と感じている介護事業所の経営者がいらっしゃるのも事実です。しかし、実際に活用してみると、想像以上に手厚く、現場にとってありがたい支援策が多く存在します。

「業務をラクにするための設備導入が対象になる」「研修をするだけで助成される」など、“存在を知らなかったら損をしていた”というケースが非常に多いのです。

このパッケージや合わせて紹介する制度を上手に使えば、利益の改善だけでなく現場職員の負担軽減や定着率アップにもつながります。まさに、「経営者の悩み」と「現場の課題」の両方に効く制度だと思いませんか。

3.5つの制度で介護事業所の「現場」が変わる―中小企業の賃上げ・働きやすさ向上の助成メニュー

ここからは、介護業界で特に活用しやすい5つの制度を簡潔に紹介します。 先述の「パッケージ」に限らず、中小企業向けに用意されているメニューなども横断して取り上げます。

  1. 業務改善助成金 :最低賃金を引き上げた上で、業務効率化のための設備導入(例:記録ソフト、業務用PC、見守り機器など)を行うと、導入費用の一部を助成。最大600万円まで支給されます。導入した設備によっては、日々の記録業務の時短や転記ミスの防止にもつながり、職員のストレス軽減や残業の削減といった効果も期待できます。
  2. 省力化投資補助金: 介護ロボットや自動排泄センサー、記録のICT化など、省人化・省力化を図るための設備導入を支援する補助金。賃上げとセットにすることで補助率もアップします。とくに人手不足が深刻な夜勤帯や、スタッフ1人あたりの業務負荷が高い事業所には有効で、「限られた人数でまわす現場」を救う施策となり得ます。
  3. キャリアアップ助成金 パートや契約職員の基本給を3%以上引き上げることで、1人あたり最大7万円が支給されます(中小企業の場合)。処遇改善加算と併用することで、職員のやる気にもつながります。非正規から正規への転換も対象となるコースがあり、将来的に安定的な人材確保を図る上でも有効です。特に新卒や若手の定着率を高めたい法人には心強い支援策です。
  4. 人材開発支援助成金: 職員の外部研修や資格取得、またはOJT形式の研修にかかる費用と、その間の賃金を一部支援。人が育ち、離職が減る好循環を生み出します。新人研修の体系化やスキルアップを目的とした専門研修への参加など、現場の教育力強化にも活用可能です。研修に取り組むことで、現場全体の士気も高まりやすくなります。
  5. 賃上げ促進税制 :一定の賃上げを実施することで、法人税の最大45%が控除される制度。「利益が出た分だけ税金で取られる」構造を軽減し、内部留保にも貢献します。税制優遇は一見地味に思われがちですが、中長期的な財務戦略として非常に有効で、年度末の資金繰りにも好影響をもたらします。

これらの制度は、個別でも効果がありますが、組み合わせることで相乗効果が生まれます。たとえば、「業務改善+キャリアアップ」「省力化+税制優遇」といった形で、経営の選択肢を広げられる点が大きな魅力です。

4.実際にあった!助成金の組み合わせで経営がラクになった介護事業所の話

宮崎県内のある小規模通所介護事業所では、3名のパート職員の時給を30円引き上げた際、キャリアアップ助成金を申請。1人7万円、合計21万円の支給を受け、処遇改善加算ではまかなえなかった部分をカバーできました。

さらに、業務改善助成金を活用してパソコンと業務用プリンターを新調。記録の電子化により、スタッフの残業時間が月平均6時間減り、離職率も低下しました。

「こんなに手厚い制度があるなんて知らなかった。もっと早く相談していればよかった」と語る代表者。制度の組み合わせが、職員と経営者の両方に“余裕”を生み出しています。

また、別の事業所では、慢性的な人手不足に悩んでいたことから、省力化投資補助金を活用して、排泄支援機器とナースコール連携型センサーを導入しました。これにより夜勤時の負担が大幅に軽減され、職員からは「身体的にも精神的にもゆとりができた」という声があがっています。

同時に、非正規職員への賃上げも行い、キャリアアップ助成金を組み合わせて申請。負担の少ない範囲で処遇改善を進めることができ、結果として定着率の改善にもつながりました。

これらの成功事例に共通するのは、「一気にすべてに取り組んだ」のではなく、「一番苦しい部分から一歩ずつ改善した」ことです。そして、専門家に相談しながら制度を適切に活用したことが、成功のカギとなっています。

あなたの事業所でも、似た課題があるかもしれません。重要なのは、「ウチにはムリ」と決めつけず、「何ができるか」を考えてみることです。

5.まず、何から始めるべきか?―便利な制度活用のコツ

すべての制度を一度に使いこなす必要はありません。大切なのは、「今、自社にとって一番困っていることは何か?」を明確にし、それに対応する制度をひとつ選ぶことです。

採用がうまくいかないなら、処遇改善や省力化。 職員が育たないなら、人材開発支援。

手続きに不安があるなら、社労士などの専門家に相談する。

小さな一歩から始めて、それを積み重ねることで、事業所の未来は確実に変わっていきます。

6.経営者が孤独にならないために──最後にお伝えしたいこと

介護事業の経営は、情熱と忍耐の連続です。毎日を回すだけでも大変ななか、制度を調べ、申請し、実行していくのは至難の業かもしれません。

でも、ひとりで抱え込まなくても大丈夫です。あなたを助ける制度と、寄り添って伴走する専門家がいます。

「もう無理かも」と思ったそのときが、“仕組みを変えるチャンス”です。

今こそ、職員と職場、そしてあなた自身を守るために、行動を始めてみませんか?

きっとその一歩が、未来への突破口になります。

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