高まり続ける介護サービスの需要。その一方で、介護現場で働く人材の待遇や職場環境は、依然として改善の余地が大きいと言われています。
経営者の多くが、「職員の給料を上げたい。でも収支が厳しくてできない」と頭を抱えています。しかし、処遇改善加算の算定では限界があり、手続きにも手間がかかるため、十分に活用できていない事業所も少なくありません。
そこで、目を向けていただきたいのが介護の現場で働く人の賃上げ原資を得る方法は、処遇改善加算だけではないということです。国は【賃上げを応援するための複数の助成制度】を整備しています。
これらを組み合わせることで、無理だと思っていた賃上げや業務改善が、現実的な選択肢になり得るのです。
まず、今回紹介したいのが、厚生労働省の賃上げ支援助成金パッケージです。「パッケージ」と名の付く通り、この支援メニューは単独の制度を指すものではありません。
複数の助成金メニューを“組み合わせて活用する”ことで、賃上げや職場改善にかかる事業主の負担を軽減するアプローチです。
従業員数が少ない小規模介護事業所であれば、「制度を調べる余裕がない」「申請が複雑そう」と感じるのは当然です。しかし、いま国が提示しているこの制度群は、まさにこの層を対象としたものが多く、使いこなせることができれば大きな支援になります。
このパッケージでは、たとえば、人材育成・業務改善・非正規雇用者の処遇改善がカバーでき、加えて、設備投資や賃上げ後の税負担軽減を図る中小企業向けの支援制度もあります。
このように、国が用意している支援制度を組み合わせて使えば、あなたの介護事業所が抱えている「困りごと」を幅広くカバーすることができるのです。
「助成金は難しそう」「自分たちには関係ない」と感じている介護事業所の経営者がいらっしゃるのも事実です。しかし、実際に活用してみると、想像以上に手厚く、現場にとってありがたい支援策が多く存在します。
「業務をラクにするための設備導入が対象になる」「研修をするだけで助成される」など、“存在を知らなかったら損をしていた”というケースが非常に多いのです。
このパッケージや合わせて紹介する制度を上手に使えば、利益の改善だけでなく現場職員の負担軽減や定着率アップにもつながります。まさに、「経営者の悩み」と「現場の課題」の両方に効く制度だと思いませんか。
ここからは、介護業界で特に活用しやすい5つの制度を簡潔に紹介します。 先述の「パッケージ」に限らず、中小企業向けに用意されているメニューなども横断して取り上げます。
これらの制度は、個別でも効果がありますが、組み合わせることで相乗効果が生まれます。たとえば、「業務改善+キャリアアップ」「省力化+税制優遇」といった形で、経営の選択肢を広げられる点が大きな魅力です。
宮崎県内のある小規模通所介護事業所では、3名のパート職員の時給を30円引き上げた際、キャリアアップ助成金を申請。1人7万円、合計21万円の支給を受け、処遇改善加算ではまかなえなかった部分をカバーできました。
さらに、業務改善助成金を活用してパソコンと業務用プリンターを新調。記録の電子化により、スタッフの残業時間が月平均6時間減り、離職率も低下しました。
「こんなに手厚い制度があるなんて知らなかった。もっと早く相談していればよかった」と語る代表者。制度の組み合わせが、職員と経営者の両方に“余裕”を生み出しています。
また、別の事業所では、慢性的な人手不足に悩んでいたことから、省力化投資補助金を活用して、排泄支援機器とナースコール連携型センサーを導入しました。これにより夜勤時の負担が大幅に軽減され、職員からは「身体的にも精神的にもゆとりができた」という声があがっています。
同時に、非正規職員への賃上げも行い、キャリアアップ助成金を組み合わせて申請。負担の少ない範囲で処遇改善を進めることができ、結果として定着率の改善にもつながりました。
これらの成功事例に共通するのは、「一気にすべてに取り組んだ」のではなく、「一番苦しい部分から一歩ずつ改善した」ことです。そして、専門家に相談しながら制度を適切に活用したことが、成功のカギとなっています。
あなたの事業所でも、似た課題があるかもしれません。重要なのは、「ウチにはムリ」と決めつけず、「何ができるか」を考えてみることです。
すべての制度を一度に使いこなす必要はありません。大切なのは、「今、自社にとって一番困っていることは何か?」を明確にし、それに対応する制度をひとつ選ぶことです。
採用がうまくいかないなら、処遇改善や省力化。 職員が育たないなら、人材開発支援。
手続きに不安があるなら、社労士などの専門家に相談する。
小さな一歩から始めて、それを積み重ねることで、事業所の未来は確実に変わっていきます。
介護事業の経営は、情熱と忍耐の連続です。毎日を回すだけでも大変ななか、制度を調べ、申請し、実行していくのは至難の業かもしれません。
でも、ひとりで抱え込まなくても大丈夫です。あなたを助ける制度と、寄り添って伴走する専門家がいます。
「もう無理かも」と思ったそのときが、“仕組みを変えるチャンス”です。
今こそ、職員と職場、そしてあなた自身を守るために、行動を始めてみませんか?
きっとその一歩が、未来への突破口になります。
厚労省の助成金制度は、毎年度ごとに制度改廃が行われます。これに合わせて、オフィススギヤマグループでは、「助成金診断サービス」を提供しています。A4サイズ1枚のアンケートにお答えいただくと、10ページほどのレポートを作成することができます。
貴事業所がどのような助成金に該当しそうなのか?助成金を受給するためにどのような環境整備が必要なのか?など、診断結果レポートの内容を検証いただくことで、「賃上げ支援助成金パッケージ」をより有効に使えるようになると信じております。 希望者全員に無料でプレゼントしますので、お気軽に下記からお申し込みください。
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Office SUGIYAMA グループ代表。採用定着士、特定社会保険労務士、行政書士。1967年愛知県岡崎市生まれ。勤務先の倒産を機に宮崎県で創業。20名近くのスタッフを有し、採用定着から退職マネジメントに至るまで、日本各地の人事を一気通貫にサポートする。HRテックを精力的に推進し、クライアントのDX化支援に強みを持つ。著書は『「労務管理」の実務がまるごとわかる本(日本実業出版)』『新採用戦略ハンドブック(労働新聞社)』など