2022年度診療報酬改定でも、機能強化型訪問看護ステーションの要件が見直される見込みです。中央社会保険医療協議会(中医協)の議論では、現在は実施が「望ましい」とされている人材育成等に関する要件を義務化することや、専門性の高い看護師の配置を要件化することについて意見が交わされました。
*関連記事:訪問看護の議論キックオフ、2022年度診療報酬改定に向け機能強化の推進など焦点に、訪問看護ステーションによるICT死亡診断支援と退院当日の評価を議論
機能強化型訪問看護ステーションとは、24時間対応の実施や看取り・高い医療ニーズを持つ患者の受け入れ実績を評価するに対応するための機能を評価する「機能強化型訪問看護療養費(1~3)」を算定している訪問看護ステーションです。算定要件には、1~3までそれぞれに看護職員の人数も定められています(下記の画像参照)。
厚生労働省は経済的な合理性から、訪問看護ステーションの大規模化を促すための施策としても、機能強化型訪問看護ステーションを推進してきました。
【画像】第500回中央社会保険医療協議会総会(2021年11月26日開催)資料より
2014年度の診療報酬改定で創設されて以降、機能強化型訪問看護ステーションの制度は、報酬改定の度に算定要件の見直しや算定区分の創設などの改正が行われてきました。
前回の2020年度診療報酬改定では、「より手厚い訪問看護の提供体制を推進する」ために、機能強化型訪問看護ステーションの人員配置要件が見直され、看護職員の割合が盛り込まれています。また、この改定では、訪問看護ステーションの働き方改革を推進するという観点から、一部の看護職員について非常勤の職員を常勤換算することが認められました。
なお、機能強化型訪問看護ステーションの届出数は増加傾向にあるものの、全国で1万事業所以上ある訪問看護ステーションのうち、1~3いずれかの区分を届け出ている事業数は702件に留まっています(2020年7月時点)。
22年度診療報酬改定に向けた検討の当初から、機能強化型訪問看護ステーションの扱いは議論の対象範囲とされていました。
11月26日の検討で厚労省は、さらに具体的な論点として、「機能強化型訪問看護ステーションに所属する専門性の高い看護師の評価の在り方」を示しました。
その前提として、機能強化型訪問看護ステーションの実に9割以上が、地域住民等に対する情報提供・相談対応や、看護実習の受入等の人材育成のための研修を実施していることなどを、同日の会合で示しています(下記画像参照)。
また、より細かい状況を見ていくと、機能強化型訪問看護ステーションの約33%に専門性の高い看護師(専門看護師または認定看護師)が所属しており、こうした専門性の高い看護師は他の訪問看護ステーション等へのコンサルテーションの実施や研修等の開催をしていることなども明らかになっています。
これに対して、委員からは、地域住民などに対する情報提供や相談、人材育成のための研修といった取り組みを22年度改定を機にさらに促していくべきとする意見が複数挙がりました。
健康保険組合連合会理事である松本真人委員は一歩踏み込み、研修の実施などの取り組みを義務化することを求めました。日本看護協会常任理事の吉川久美子委員もこの点について、医療資源の少ない地域のことを考慮した上で、「必須要件とするべき」との考え方を示しています。
また、吉川委員は、専門性の高い看護師の配置についても、「望ましい」という形で機能強化型訪問看護ステーションの要件とするべきと述べました。専門性の高い看護師の活躍の場を広げ、その評価を求める趣旨の主張をしています。
介護経営ドットコムの記事を制作・配信している編集部です。日々、介護事業所を経営する皆さんに役立つ情報を収集し、発信しています。