訪問看護ステーションによるICT死亡診断支援と退院当日の評価が焦点に

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2022年度の診療報酬改定に向け、厚生労働省から訪問看護を巡る施策の方向性が示され、その検討が進んでいます。今回、在宅での看取りを支える体制の整備を進めるため、”ICTを活用した死亡診断等の支援を行った場合の訪問看護ステーションの評価”と”退院当日の訪問看護基本療養費の算定及び訪問看護ターミナルケア療養費の扱い”が焦点となりました。

在宅での看取りを支える訪問看護を推進するための切り口

厚労省は11月26日の中央社会保険医療協議会で、以下の切り口に沿って現状の訪問看護を巡る施策や課題を示しました。

1.訪問看護の提供体制について
 1-1 有事に備えた提供体制の整備
 1-2 在宅での看取りを支える提供体制の整備
 1-3 機能強化型訪問看護ステーションにおける役割の強化
2.利用者の状態に応じた訪問看護の充実
 2-1複数名訪問看護加算等について
 2-2退院支援指導加算について

このうち、1-2を進めていくための論点としては、

▽情報通信機器(ICT)を利用し、看護師と連携して死亡診断等を行った医療機関は、診療報酬で評価が行われていること(「在宅患者訪問診療料」の加算)に対し、その際の情報提供など、医療機関への支援を行った訪問看護ステーションを評価する仕組みがない
▽退院当日の訪問時は、訪問看護基本療養費を算定できない。また、このルールによって、 退院当日とその翌日に患者宅に訪問した場合は、「訪問看護ターミナルケア療養費」の算定が認められていない
-点が示され、22年度診療報酬改定でどのような政策をとっていくのか検討が行われました。

ICTを利用した看取りを推進するための近年の政策と医師・看護師の関係

まず、ICTを利用した死亡診断について、近年の政策を確認していきます。

通常、医師は、最後の診察から24時間経過後に患者が死亡した場合、対面で死後診察をした後に死亡診断書を交付する必要があります(医師法20条)。これに対し、「在宅での穏やかな看取りが困難な状況に対応する」ため、この規制を緩和する方針を盛り込む「規制改革実施計画」が2016年に閣議決定されました。この決定によって、患者が受診後24時間経過して死亡した場合でも、5つの要件を全て満たせば、医師が対面での死後診察によらず死亡診断を行い、死亡診断書を交付することができるよう、ルールが一部見直されることになりました(下記の図表参照)。

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【画像】中央社会保険医療協議会総会(第500回)資料より抜粋

現在の制度では、厚労省がこの計画に従って策定した「情報通信機器(ICT)を用いた死亡診断等ガイドライン」に基づいて、医師がテレビ電話装置などのICTを利用し、看護師と連携して死亡診断を行った場合、在宅患者訪問診療料の「死亡診断加算」の算定ができることになっています(2018年度診療報酬改定項目、離島など定められた地域に居住する患者が対象)。

ただし、その場合には、実務要件を満たした上で法医学などの研修を受けた看護師が、医師に必要な情報を提供する必要があります。

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【画像】中央社会保険医療協議会総会(第500回)資料より抜粋

今回、中医協で検討が行われたのは、ICTを用いた死亡診断等をサポートする訪問看護師の評価についてです。

2021年10月時点で、医師による死亡診断等に必要な情報を報告するための研修を修了した看護師は177名と多くはありません。しかし、医師と看護師、在宅医療を担う医療機関や訪問看護ステーションの役割や責任について定義する部分であるため、この先の動向も含めて注視すべき論点といえます。

実際に当日の議論では、医師を代表する委員と支払い側委員の双方から慎重な検討を求める意見が挙がっています。

日本医師会の城守国斗委員は、「(ICTを用いた死亡診断等をサポートすることに対する評価は)研修を修了された看護師であったとしても、医師と看護師が通常以上にしっかりとした信頼関係が築けているということが前提」という立場から、「訪問看護ターミナルケア療養費の評価を個別に検討ということよりも、死亡診断を行う医師やICTで連携する看護師が、チームとして機能しているということを評価する方が、実態に合っているのではないか」との考えを示しました。

退院当日の訪問看護を認め、訪問看護ターミナルケア療養費の算定対象に

訪問看護の看取りを評価する仕組みとしては、訪問看護ターミナルケア療養費があります(下記図表参照)。

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【画像】中央社会保険医療協議会総会(第500回)資料より抜粋

訪問看護ターミナルケア療養費は、患者の死亡日と死亡日前14日以内の合計15日の間に2回以上の訪問看護を実施すること(訪問看護基本療養費または精神科訪問看護基本療養費の算定)と、ターミナルケアの実施などを評価する制度です。しかし、現状の報酬制度の枠組みでは、退院当日の訪問が訪問看護基本療養費の算定対象として認められていません。

そのため、在宅で最期を過ごすために、状態が悪いまま退院した患者をサポートする目的で退院当日に訪問看護を提供した場合でも、訪問看護基本療養費の算定だけでなく、訪問看護ターミナルケア療養費の算定も認められないことになります。

そこで、厚労省は、この仕組みを改めることについて意見を求めました。

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【画像】中央社会保険医療協議会総会(第500回)資料を編集部で加工(赤枠部分を追加)

この点については、サービスの提供・ニーズの実態に評価の在り方を合わせるため、退院当日から訪問看護の算定を認めターミナルケアの評価をできる仕組みを認めるべきとする意見が相次ぎ、支払い側委員も理解を示しました。

2021年度介護報酬改定で、退院当日の訪問看護の報酬算定が認められるようになったことからも、診療報酬改定でも同様の対応がとられることが予測されます。

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