【弁護士による事例解説付き】介護現場における利用者家族からのハードクレーム(過剰要求)への対応

2024.02.06
2024.02.06
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こちらの連載では、介護現場におけるカスタマーハラスメントの事例や対応についてこれまでも取り上げてきました。今回はグループホームで起きた事例を交えて考えてみましょう。

転倒事故によって障害を負ってしまった利用者の息子が、賠償対応完了後も様々な要求を続けているため施設長を悩ませているようです。

目次
    1.グループホームで生じたトラブル事例―賠償対応完了後も利用者の息子が特別対応を要求
      2.賠償対応とその後のケアの在り方―ポイントは線引きの明確化
        3.施設での対応:ケアチームとクレーム対応チームとを切り分ける
          4.過剰要求が収まらない場合の対処法

          1.グループホームで生じたトラブル事例―賠償対応完了後も利用者の息子が特別対応を要求

           

          <相談内容>

          私はグループホームの施設長です。

          去年、利用者(女性)がグループホーム内で転倒し、大腿骨頸部骨折という怪我を負ってしまいました。

          この事故の原因を調査すると、うちのスタッフの不注意で生じた事故でした。

          保険会社とも協議したところ、最終的に賠償額300万円をお支払する形で賠償対応は完了しました。

          しかし、この利用者のキーパーソンである息子が賠償対応完了後も様々な要求をしてきており大変困っています。

          一番困っている要求は、「入浴介護を一般浴で継続してくれ」というものです。

          というのも、この利用者は元々お風呂が好きだったのですが、事故後、車椅子生活になってしまいました。その関係で計画作成担当者が一般浴は危険だと判断し、シャワー浴に変更すると判断したのです。

          これに対し、息子が激怒し、「グループホームが引き起こした転倒事故のせいで母親は車椅子生活になってしまったんだ!シャワー浴に変更だなんて納得できる訳がない。何人がかりになっても良いから母親には一般浴を継続しろ」と要求しているのです。

          息子の主張にも一理あるような気がしておりますが、一般浴を継続することは利用者本人にとって危険を伴うことですし、うちのスタッフの業務も圧迫されてしまいます。

          どのように対応すれば良いのでしょうか。

          2.賠償対応とその後のケアの在り方―ポイントは線引きの明確化

          今回の相談のような事例は、現場の方々も非常に対応に苦慮されることでしょう。

          転倒事故の原因が介護事業所側にある訳ですから、息子の要求はもっともなように感じますね。

          ですが、仮にこの息子の要求を受け入れてしまうと、今後、入浴介護の度にスタッフが複数名で車椅子の利用者を抱きかかえて一般浴で入浴させるという過度な負担が発生し、現場は疲弊してしまいます。

          また、息子の過剰な要求をひとたび受け入れてしまうと、要求はその先もどんどん肥大化することでしょう。

          「車椅子になったことで今までできていた●●もできなくなってしまった。スタッフ総動員で担当してくれ」というように、入浴介護と同じ構図で●●の部分が際限なく増えていくのです。そして、これを断わると、「何故断るのだ?入浴介護はこちらの要求を受け入れて実施しているじゃないか。それと同じ理屈だ。必ず実施してくれ」というように、ひとたび要求を受け入れたことを根拠として、要求を強く通そうとしてくる訳ですね。容易に想像できる情景です。

          重要なポイントは、賠償対応とその後のケアの在り方はしっかり線引きして考える必要があるということです。

          あくまで賠償対応は金銭賠償です。保険会社と協議の上、保険金の支払いを済ませたのであれば、事故に対する法的責任は果たしたことになります。法的には、それ以上の要求に応じる義務は無いのです。

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