最近、顧客が従業員に対し、恫喝や理不尽な要求、過剰な要求を突き付ける「カスタマーハラスメント」(以下、「カスハラ」といいます。)が社会問題となっています。
介護現場でも、利用者だけではなく、利用者のご家族やその関係者が従業員に過度な要求、理不尽な要求を突き付ける不当要求が問題になっており、我々弁護士法人かなめには頻繁にカスハラに関する相談が寄せられています。
そこで、今回から3回に渡って介護現場におけるカスハラをテーマに論じていきましょう。まずは、カスハラの実態と法人が対応を怠った場合の問題点について解説します。
当法人に寄せられるカスハラに関する法律相談の一例を紹介します。
実態調査としては、2017年にUAゼンセン流通部門が実施したアンケート結果 及び2019年に厚労省補助金(老人保健健康増進等事業)の助成を受けて株式会社三菱総合研究所が実施した「介護現場におけるハラスメントに関する調査研究」 等があります。
仮に、介護事業を運営する法人が、職員から上記のようなカスハラ被害の訴えを受けた場合、法人がその訴えを放置したり、中途半端な対応に終始し、現場に任せきりにしたならば、どのような責任が発生するのでしょうか。例えば、訪問系サービスでは職員がセクハラ被害に遭う事例が目立ちます。利用者や家族からセクハラ被害を受けた職員が、運営会社に相談したときに、「ヘルパーがセクハラを受けるのはこの業界だと当たり前。そんなこと一々言ってたらこの仕事は務まらないよ」と言われ、一切対応してもらえなかった場合、運営会社はどのような責任を負うのでしょうか。
介護業界の事例ではありませんが、一つ裁判例を紹介したいと思います。
学校法人M学園の講師が、授業中に生徒から臀部を触られるというセクハラ被害に遭い、この講師が学校法人に被害を訴えました。学校法人は、調査の結果、セクハラの事実があったかもしれないと認識したにも関わらず、それ以上対応せず、セクハラは無かったという結論を下しました。この杜撰な対応について、講師が学校法人を訴えたという事件です(もちろん加害者の学生も訴えています)。(【学校法人M学園ほか(大学講師)事件】:千葉地裁松戸支部平成26(ワ)第1013号。)
弁護士法人かなめ代表弁護士。29歳で法律事務所を設立。 現在、大阪、東京、福岡に事務所を構える。顧問サービス『かなめねっと』は35都道府県に普及中。 福祉特化型弁護士。特化している分野は、介護事業所・障害事業所・幼保事業所に対するリーガルサポート、労働トラブル対応、行政対応、経営者支援。 無料で誰も学べる環境を作るためYouTubeチャンネル『弁護士法人かなめ - 公式YouTubeチャンネル』を運営中。https://www.youtube.com/@kaname-law テキストで学びたい人向けに法律メディアサイト『かなめ介護研究会』も運営中。 https://kaname-law.com/care-media/