サービスや介護報酬請求の適正化を目的に行政によって実施される「運営指導」。
原則は在宅系サービスの場合で6年に1度の実施ですが、不正請求・虐待の疑いや・内部告発があった場合は、抜き打ちで実施されることもあります。
重大な違反が見つかった場合は、監査へ即移行し、さらに厳しい調査が行われることも…。
弊社では、これまで200社以上の運営指導対策に関わってきました。クライアントの中には、過去に運営指導で返還を求められた経験がある方や、周囲の事業者が返還を受けるのを目の当たりにし、不安になって相談された方も多くいらっしゃいます。
その際に伺った返還事例や、弊社独自の調査をもとに、運営指導で指摘されやすい“あるある”とそれに応じた具体的な対策を解説いたします。
運営指導では、些細な発言や管理の不備が思わぬ指摘につながることがあります。
実際に運営指導を受けた事業者が、「こんなことで指摘されるとは思わなかった」と驚かれるケースも少なくありません。
早速、よくある失敗事例と事前に準備できる対策を紹介しましょう。
【失敗事例】 運営指導の際、指導員から「この研修は定期的に実施されていますか?」と質問された際、事業所の担当者が「頻度ってどのくらいでしたっけ?」と答えました。
この発言を受け、指導員は「どれくらいの頻度かご存知ないのですか? ということは、定期的に実施していないのでは?」と疑いを持ち、 その後、詳細な調査が行われ、結果として数十万円の返還を求められることになりました。
【対策】
【失敗事例】 運営指導では、管理者だけでなく、その場にいた従業員に質問が及ぶことがあります。 ある事業所では、指導員がたまたま近くにいた介護職員にこう尋ねました。
「処遇改善加算はどのように使われていますか?」
この質問に対し、従業員は「知りません」と回答。
指導員はこれを受け、処遇改善計画はすべての介護職員に周知しなければならないという基準を満たしていないと判断し、不適切な運用と評価しました。
結果、加算が取り消され、多額の返還が発生することに。
特に処遇改善加算については数千万円単位の返還事例も多く報告されており、細心の注意が必要です。
【失敗事例】 運営指導では、書類の整備状況が細かくチェックされます。
これらの不備があったケースではそれぞれ、数百万円の返還を求められることに。
特に、加算の要件や計画書関連の不備は指摘されやすく、返還につながるリスクが高いため、慎重な管理が求められます。
運営指導で指摘を受けるリスクを減らすには、日頃の管理体制の見直しと事前準備が欠かせません。特に、一度返還を受けると、その後の事業運営に大きな影響を与え、場合によっては事業が継続できなくなることもあります。指導当日に慌てることのないよう、今からできる対策を実施していきましょう。
運営指導で特に確認されるのが、提供記録・ケアプラン・請求内容の整合性です。日頃から書類を確認し、加算要件や人員配置が適正であるかチェックしましょう。
また、事業所内で自主点検を行う体制を整え、定期的に記録の不備を確認することが重要です。
運営指導では、管理者だけでなく、現場職員も指導員から質問を受けることがあります。そのため、職員全員が加算や制度の基本的な仕組みを理解しておくことが求められます。また、日頃から加算の要件に沿って定期的な研修や会議をしましょう。
運営指導では、書類の不備や記録のズレが指摘されやすいため、書類の管理を徹底する必要があります。
加算に関する書類は、運営指導で重点的にチェックされるため、常に最新の状態に更新し、記録の整合性を確保しておきましょう。また、書類管理の負担を軽減するために、電子データ化やシステム導入を検討するのも有効です。
法改正により運営指導の指摘ポイントは変化するため、外部の専門家による監査を活用するのも有効です。
事業所内部での確認だけでは見落としが発生することもあります。外部の監査を受けることで、事前に問題点を洗い出し、対応策を準備できるため、リスクを最小限に抑えることができます。
運営指導は、事業運営の見直しを行う良い機会でもあります。普段から適切な体制を整え、書類の管理や従業員教育を徹底することで、運営指導に慌てることなく対応できる環境を整えることが重要です。
運営指導は、事前の準備がどれだけできているかが大きな分かれ道になります。
「何から始めればいいかわからない」「運営指導が不安だ」という事業者の方は、運営指導の通知が来る前から早めに対策を講じることが重要です。
事前に準備を整え、万全の体制で運営指導に臨みましょう。
①中小規模の介護事業者が直面する3大課題とその解決策 ②介護事業所における人材獲得に向けた戦略立案の方法 ③とにかく数をこなす営業”を脱するための根拠ある活動とは?―介護事業所における営業戦略の見直しポイント
Professional Care International株式会社代表取締役。17歳で介護業界に入り、高齢者虐待をなくすことを決意。全国200箇所の施設を見学し、NARBRE合同会社を史上最年少で設立。訪問介護事業を展開する。その後、介護・福祉業界向け総合コンサルティング会社を設立。事業再生、運営指導対策等の総合コンサルティングサービスを提供し、全国150社以上を支援。ITに強く、DX化を推進する。現在は複数の会社役員を務め、全国で研修やセミナーを実施している。