訪問看護ステーションのBCP策定に向けた準備とステップ~BCPを運用する~

2022.12.22
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2024年から訪問看護ステーションでも策定に取り組む必要があるBCP(Business Continuity Plan/業務継続計画)について3回に分けて解説します。
今回は最終回です。

(*1回目:訪問看護ステーションにおけるBCP策定~防災訓練、感染症対策との違い~)

(*2回目:訪問看護BCP策定の手順解説~初めの一歩のハードルを下げる便利ツール~)

1.BCPはどう運営していくかが大切

BCPは作成が目的ではありません

BCP作成に当たって、「テンプレートを参考に計画だけ作ればいいんでしょ」「日々の業務で精一杯なので、作成するのがやっと」といった思いはないでしょうか?

BCPは、作成するだけでものかなりの労力と時間を要するため、このようなお気持ちになるのも分かります。しかし、厚生労働省が「義務」としている内容は、以下の通りです。そのため、BCPを作成して終わりという訳にはいきません。

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実際に災害が起きたときに適切な対応できないと、会社(事業所)、スタッフ、ご利用者様、関係各所が困ることになります。

そうならないためにも、災害が起きたときに誰が何をすべきか、また、どういう事が起こりえるのかをある程度想定して、心構えをしておくことがとても大切です。

計画(BCP)は立てて終わりではなく、実行してみて見直し修正・追加(BCM)していきましょう!

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2.BCMの具体例~事業所の体制と利用者対応の確認ポイント~

そうはいうものの、BCPを災害時に機能させるため、平常時からどういった事を準備して実行していけばよいのかは分かりづらいかもしれません。

そこで、今回はBCMを1)事業所の体制、2)ご利用者様、の2つの観点からどういう準備をするか、

自社のマニュアルの紹介なども含めながら解説していきます。

1)事業所の体制について

画像 ①ステーション内の指示命令系統の明確化

超簡易版BCPの解説でも確認したように、BCPを発動する際に誰が何をするのかそれぞれの役割を確認しておくことが重要です。これが決まっていないと「誰が指示するの?」「指示を出す管理者と連絡が取れないけどどうしたらいいの?」と皆が混乱することになります。

あらかじめ誰がどういう役割を行うかを決め、実際にその役割が果たせるように実践しておきましょう。

②災害時や感染時に向けて業務見直しの優先業務やご利用者様の優先度を整理する

BCPを発動するような状況になった時は、物理的にも人員的にも十分なケアが提供できない環境に置かれます。それでも必ずやらなくてはいけない業務は何なのか、どのご利用者様には必ずケアを行わなくてはいけないかを整理しておきましょう。

業務を最低限のものに見直すポイントとしては、以下のようなものがあります。

例)

・週2回の訪問を1回に変更する
・60分訪問を30分訪問に変更する
・自立度の高いご利用者様にはもしもの時にご自身の管理ができるよう指導をしておく

災害に備え、各スタッフが受け持つ利用者の優先度合いを見える化しておくことも有効です。

例えば、以下のような項目で評価すると、優先順位を点数で確認することができます

③稼働可能条件の確認

災害時やコロナ感染時はスタッフが出勤できずに人員が足りない状況に陥ります。

そのため予め曜日によって最低限何名が揃わないと現場が回らないか、もし回らない時は②でも検討したようにどの業務を継続するか、どのご利用者様の訪問を調整させて頂くかを想定しておきましょう。

④ハザードマップの確認とスタッフ間での周知

市区町村や県庁の窓口には、事業所がある地域のハザードマップを置いてくれているかと思います。

または【国土交通省 ハザードマップ】で自分の地域のハザードマップを検索する事が出来ます。

まずは自分の働く地域で何に気を付けておくか、またできれば過去にどういった災害があったかを確認し同様の状況になったらどう対処するかを考えておきましょう。

そして、半年に2回など時期を決め、皆でハザードマップを確認し、どこが避難所か、洪水・土砂災害の際はどこに気を付ければいいかなどを周知しておきましょう。

また、洪水や土砂災害が起きたとき、危険なところを避けて訪問する場合はどれくらい時間がかかるかという事も把握しておきましょう。

⑤感染予防に関するスタッフへの教育、指導(フルPPEを全スタッフ3回練習)

どんなに気を付けていても家族間や外部から職員が感染する可能性はあります。

感染をしても広げない・持ち込まないために、感染症対策の知識を身に付け練習をしておくことが大切です。正しい知識や練習して身に付けた技術は余計な不安を取り除いてくれます。

正しく恐れ、正しく対応できるように教育、指導をしていきましょう。

私の事業所では以下の取り組みをしています。
・フルPPEの動画を確認し、実際に3回以上練習する
・十分練習出来たら先輩や上司に問題なく出来ているかテストしてもらう
・1年以内に全スタッフが出来えている事を管理者が確認を行う
・コロナの最新情報や自治体で決まった情報の共有を定期的に行う

参考に、私が所属している法人のスタッフへの周知資料をお示しします。

⑥スタッフ健康チェック体制と症状発生時の報告体制

毎日スタッフの体温、咳症状、鼻水、倦怠感、のどの痛みを確認し、コロナの疑いがないかを確認しておきましょう。またスタッフだけでなくスタッフの家族にも体調変化があれば報告させるようにしましょう。

症状が出た際は、管理者に情報を集約するようにし、感染疑いがあれば自宅で検査できるように全スタッフにキットを1個は持たせておくことが望ましいです。

2)ご利用者様について

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①感染災害時に訪問ができない可能性があることの契約書での説明

先に伝えておけば説明、後から言えば言い訳、になってしまいます。

あらかじめ想定されることや事業所としての体制については契約時に説明するか、重要事項説明書の中に入れ込んでおきましょう。

私の事業所では「天災等不可抗力」という項目にて災害時には訪問をキャンセルしたり、担当以外のスタッフが訪問したりする可能性がある事を記載しています。

②ご利用者様へ災害と感染対策のお知らせ、避難場所を一緒に確認

私の事業所では3月と9月に防災強化月間としてご利用者様に防災物品、避難場所の確認、ハザードマップの確認などを行っています。また人工呼吸器を装着している方や保健師が介入している方に関しては個別計画を立案して避難方法や準備物品を確認し、シミュレーションを行っています。

③ご利用者様ごとの医療機器の使用状況やADL、サポート体制のリストアップ

災害が起こった際、全てのご利用者様のところに駆けつける事は出来ません。

そのため誰のところに駆けつける必要があるか、連絡を取る必要があるか、自分たちがいけない場合誰が救助できるかを把握しておくことが大切です。

また、停電などが起きた時必要な治療が受けられなくなったということがないように、どのような医療機器を使っているのか確認し、停電でも困らないように非常用のバッテリーを準備しておくなど、ご利用者様のことをしっかりと把握しておきましょう。

④マニュアルやルールなどはクラウド管理にしていく(どこでも見られるように)

災害が起きた時に事業所にいられるとは限りません。道中かもしれませんし、自宅かもしれませんし、ご利用者様宅かもしれません。どこにいてもマニュアルが確認できるように紙やクラウド上での保管など複数の手段で確認できるようにしておきましょう。

最後に

報酬改定では、BCP作成までに3年の猶予が与えられました。「3年経つまでに作ればいいや」ではなく、「災害や感染症などのリスクに備えるには3年かかるのだ」と心得る事が大切です。

すぐに全部が完成するわけではないですし、スタッフ皆がすぐに対応できるわけではありません。

忙しい業務の合間で作成していくことになりますので、少しずつできる事から進めていくことが大切です。

また、自分たちだけで作らなければならないわけではなく、小規模の事業所は積極的に事業所同士で声を掛け合って一緒に作っていきましょう。

それにより新たにできる関係性もあり、BCPを機に一緒に勉強会やカンファレンスを行うようになったりもします。

BCPには完成はありません。

常に更新し、自分たちの活用しやすいBCPを作成していきましょう!

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