2024年介護報酬改定では、基本報酬0.9%弱のプラスだった居宅介護支援事業所。
特定事業所加算も一律14単位のアップとなり、プラス改定というイメージが強い。しかし、居宅介護支援には処遇改善加算は存在しない。居宅介護支援事業におけるケアマネジャーの処遇改善は経営上の大きな課題と言えるだろう。
今回は、居宅介護支援をテーマに24年度改定の主要な変更点を振り返りつつ、運営指導で重点的に確認される21年度の改定項目にも目を向けながら点検しよう。
(*全サービス・概要編はこちら、通所介護編はこちら)
居宅介護支援事業所の基本報酬引き上げ。ここには、「ケアマネジャーの処遇改善に充ててほしい」という意図が国から示されている。逓減制が緩和されて一人あたりの最大担当件数が拡大されたことにも、増えた分の収入を処遇改善の原資とさせようとする意図がある事は間違いない。
もちろん、賃上げは事業者の義務ではないが、圧倒的なケアマネジャー不足を勘案すると、経営努力を含めた処遇改善は急務である。
個別の加算に目を移すと、ターミナルケアマネジメント加算の対象疾患に制限が無くなった。これまでは末期ガンのみが対象であったが、算定対象が大きく拡大したことになる。
6年に一度の医療と介護の同時改定だった同改定では、情報連携を評価する加算にも変更が加えられている。このうち、通院時情報連携加算の変更が持つ意味は大きい。算定要件である通院の対象に歯科医師の診察が追加された。24年度からは、ケアマネジャーの法定研修カリキュラムも変更になり、誤嚥性肺炎のマネジメントが大きく取り上げられた。高齢者の死亡要因で誤嚥性肺炎は高い割合を占める。その予防においては口腔ケアが重要である。しっかりとケアプランに口腔ケアを位置づけることが求められ、歯科医師との連携も重要であることが示された。
全体的なプラスムードの中で、24年度改定では同一建物減算が居宅介護支援に創設された。所定単位の5%が減算となる。
この減算の基本的な考え方は、訪問介護などと同じである。一般住宅に居住する利用者のモニタリング訪問には移動時間や交通経費が発生するが、事業所と同一の建物の居住者には、それらは発生しない。大人数の利用者が同一建物に居住する場合は、移動は建物の上下の移動で事足りる。であるならば、相当数の報酬を減額するというロジックだ。
(【画像】厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」より)
他にも予防ケアプランやBCP、高齢者虐待関連の減算、身体拘束等、必要な対応が数多く示された。
24年度改定では福祉用具のうち、比較的廉価な固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖に貸与と販売の選択制が導入されたことも大きな変更点だ。
選択制の対象となる福祉用具を提供する場合には、福祉用具専門相談員かケアマネジャーが、貸与または販売のいずれかを利用者が選択できることについて、十分な説明を行う必要がある。
利用者の選択に当たって必要な情報を提供することと医師や専門職の意見、利用者の身体状況等をふまえて、提案を行うことも義務化された。利用者の選択に当たって必要な情報とは
小濱介護経営事務所 代表。一般社団法人日本介護経営研究協会専務理事。一般社団法人介護経営研究会 専務理事。一般社団法人介護事業援護会理事。C-MAS 介護事業経営研究会最高顧問。