2024年度介護報酬改定後の運営指導対策〜全サービス・概要編【解説・小濱道博】

2024.09.27
2024.10.08
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2024年度に入り、コロナ禍の間に自粛傾向にあった介護施設・事業所への運営指導が一気に強化されている。BCP関連の対応や高齢者虐待防止措置など、多岐にわたる新要件に適切に対応することも必要だ。今回から、運営指導のトレンドを解説すると共に、事業所が対応すべき項目について点検していこう。

目次
    1,急増する運営指導件数と増える報酬改定対応―運営指導を巡るトレンド概説
      2,標準確認項目と標準確認文書で運営指導の効率化・標準化を促進
        3,業務継続計画(BCP)の義務化―減算適用は免れても運営基準違反となることに注意を
        4,高齢者虐待防止措置への対応
        5,感染症対策の義務化
        6,認知症介護基礎研修の受講義務とその対応
          7,身体拘束の記録の義務化とその対応

            1,急増する運営指導件数と増える報酬改定対応―運営指導を巡るトレンド概説

            24年度の運営指導の実施件数は全国で10万事業所を超えると推測される。更に、24年3月で3年弱の間続いてきたコロナ禍特例も廃止となった。今後は、コロナ感染などを理由とした人員の欠員であっても、無条件で人員欠如減算となる。しかし、コロナ禍特例が採用されていた3年の間に介護業界に就労した職員は、それが普通と思い込んでいる場合がある。本来の基準について再確認と周知が急務である。

            24年度の介護報酬改定を振り返ると、変更のあった項目数は過去最大規模である。人員基準や運営基準だけでなく、多くの既存加算の算定要件に変更があった。前回の2021年度改定辺りから、既存加算の算定要件が見直されることが増えている。

            以前の報酬改定は基本報酬の増減と新加算の創設が主体であり、新加算を算定しない場合は、特に日常的な業務を見直す必要が無かった。それゆえに改定内容にアンテナを張ることも無く、従来通りの業務を繰り返すだけでも対応が足りた時代があった。

            しかし、現在は、自らセミナーに参加するなどして最新情報を確認しなければならない時代となった。これを怠る事業所は、運営指導において返還指導などを受けることとなる。

            (資料出典:令和5年度 全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料(総務課介護保険指導室))

            2,標準確認項目と標準確認文書で運営指導の効率化・標準化を促進

            運営指導は、基本的に「標準確認項目」及び「標準確認文書」に基づいて実施される。24年7月4日に発出された「介護保険施設等運営指導マニュアル」に関する通知で、最新版が公開された。

            介護保険施設等運営指導マニュアル掲載ページ(厚生労働省ウェブサイト)

            「標準確認項目」は、いわば運営指導におけるチェックリストである。「標準確認文書」は、事業所がチェックリストにある各項目を満たしているかどうかという視点で確認すべき書類である。例えば、確認項目は、「専門職は必要な資格を持っているか」であれば、その確認文書は「資格者証」という関係である。これらを活用して、行政担当者は運営指導を行うことになる。

            現在の運営指導は、2時間程度で終わる形式に移行している。従来のように1日掛けて実施していた“質の重視”から、ポイントを絞った“量の指導”に変わりつつある。この標準確認項目は、運営指導の標準化や効率化を図るために定められたものでこれによって一件当たりの所要時間を短縮し、一日に複数件の運営指導を実施することが想定されている。

            今回、各サービス共通項目として新たな「標準確認項目」に組み込まれたのは、24年度から義務化されて、減算も創設されたBCPなどへの対応である。

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