2025年度以降に介護職員等処遇改善加算を算定する場合、これまでよりもハードルが高くなった「職場環境等要件」を満たす必要があります(経過措置あり)。力点がおかれているのが、「生産性向上のための取組」であり、特に上位区分の算定をするには、厚生労働省が示している「生産性向上ガイドライン」に基づいて、「業務改善活動の体制構築」などに取り組まなければなりません。
そうはいっても、特に中小規模の介護事業所にとっては、委員会やプロジェクトチームを立ち上げ、さらにそれを機能させていくというのは簡単ではないでしょう。
そこで、今回は委員会やプロジェクトチームの立ち上げ方と、それを継続して機能させていく方法について取り上げます。
厚生労働省老健局が作成している「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」を読んだことはありますか?
介護施設や事業所の従事者1人当たり労働時間増大を伴わずに、生産性を向上させるために役立つ指針として、職場環境の整備の仕方(5Sの取り組み)や、業務の明確化・役割分担といった取り組みを進めるためのステップやそもそもの意義などがまとめられています。
25年度以降の介護職員等処遇改善加算の算定要件(職場環境等要件のうち、生産性向上のための取り組み)には、この「ガイドライン」に基づき、「業務改善活動の体制構築(委員会やプロジェクトチームの立ち上げ、外部の研修会の活用等)を行っている」ことが盛り込まれています。
しかし、重要なのはこうした知識やノウハウを現場で実際に活用して、業務改善のための委員会・プロジェクトチームを実際に機能させ、職員の労務時間を増やさずに、一人でも多くの利用者に質の高いケアを届けることです。
そこで、今回は委員会・プロジェクトチームの設置・運営方法についてポイントをお伝えしたのち、真にその目的を達成するための準備や周囲の働きかけについて考えてまいります。
委員会やプロジェクトチームといった体制づくりは、業務改善活動を推進するための有効な手段となりえます。ガイドラインでも、改善活動の標準的なステップとして、まずはプロジェクトチームを立ち上げることが推奨されています。
しかし、設置・運営方法によっては、期待した効果を発揮できない場合もあります。
委員会やプロジェクトチームをうまく機能させるためのポイントには、例えば以下のようなものがあります。
ちなみに委員会とプロジェクトチームは、どちらも組織で掲げる目標の達成に向け、複数人で協力して活動を行う組織体ですが、設置目的や活動期間、活動内容などに違いがあります。
委員会は、組織全体の運営や業務改善、課題解決など、比較的長期的な視点で活動を行う組織体です。 委員は、それぞれの専門知識や経験を活かし、組織運営に貢献します。一方、プロジェクトチームは、特定のプロジェクトを遂行するために、期間限定で設置される組織体です。プロジェクトの目的を達成したら、チームは解散となります。
組織の安定的な運営を支える委員会と、組織の柔軟性や機動力を高めるプロジェクトチームは、設置目的や活動期間、活動内容などが異なります。それぞれの特性を理解し、状況に応じて使い分けることも重要です。
特に、小規模な介護事業所では、委員会やプロジェクトチームの立ち上げや運営の経験がないこともあると思います。
そこで、小規模事業所でも簡単にできる、委員会・プロジェクトチームの立ち上げ方について考えます。ポイントは、以下の3つです。
委員会やプロジェクトチームを立ち上げる際は、まず、その目的を明確にすることが重要です。目的が曖昧なまま活動を始めると、方向性を見失い、期待する成果を得られない可能性があります。
目的を具体的に設定する際には、職場環境の改善、業務効率化、人材育成など、事業所が抱える具体的な課題を解決することを目的とします。 例えば、「職員の残業時間を削減する」「サービスの質を向上させる」「人材の定着率を高める」といった課題の解決を、委員会やプロジェクトチームを立ち上げ目的として明確化します。
委員会・プロジェクトチームのメンバーは、多様な視点から課題を検討し、より良い解決策を生み出すために、以下の3つのポイントに注意して選定することが大切です。
委員会・プロジェクトチームの運用ルールを具体的に設定することで、スムーズな運営が可能になります。あらかじめ、以下の項目についてルールを定めておきましょう。
これらの運用ルールを事前に設定しておくことで、委員会・プロジェクトチームをスムーズかつ効果的に運営することができるようになります。
ここまで、委員会やプロジェクトの立ち上げや円滑化についてお話してきましたが、業務改善活動は、施設や事業所の職員一人ひとりの意識と行動が変わらなければ成功しません。
まず、職員全体に業務改善の必要性や重要性が浸透していなければ、委員会やチームの活動は理解を得られず、孤立してしまう可能性があります。そうした事態を避け、取り組みを効果的なものにするには、経営層の姿勢も重要です。委員会やプロジェクトチームの活動に当たって、広報を行いましょう。 業務改善は、一部の職員で行うものではなく、事業所全体で取り組むべき課題であることを理解し、全員参加の意識を持つことが重要です。
また、改善策を検討するだけで、具体的な行動に移れない場合、検討のステップ自体が時間や労力の無駄になってしまいます。【行動計画を立て、実行し、評価する】というPDCAサイクルを回して具体的な成果に繋げましょう。
新しい取り組みや変化に対して、抵抗感や不安感を抱く職員が多いと、業務改善はスムーズに進まない可能性があります。職員の意見を丁寧に聞き取り、不安や疑問を解消することで、安心して業務改善活動に参加できる環境を作りましょう。このほかにも勉強会や意見交換会などを開催し、業務改善の必要性や重要性を理解してもらい、積極的に参加できる雰囲気づくりをすることが重要です。
多くの介護事業所の悩みである、人材・時間・費用の不足。業務改善活動を進めるための体制づくりを、と言われても、「人がいない」「時間がない」「お金がない」と言いたくなる方は少なくないでしょう。
まず、限られた人員で効率的に業務改善活動を進めるには、業務の標準化やICT化など、業務効率化を図る必要があります。また、外部人材の活用や職員の多能工化なども検討する必要があるでしょう。
日々の業務に追われ、委員会やチームの活動に十分な時間を割けないなら、時間の使い方を見直すポイントとして業務の棚卸しやかかっている時間の把握、会議時間の短縮などが考えられます。
業務改善に必要なツールや研修費用などを捻出できない場合、活動の幅が狭まり、効果的な改善策を実行できない可能性があります。助成金制度の活用や、費用対効果の高い改善策も検討してみてください。
やり方はわかっても、いざ具体的に行動に起こそうとすると、つまづくことも多いのではないでしょうか。
そこで、この度は委員会・プロジェクトチームの立ち上げ及び運営をよりやりやすくするための「委員会・プロジェクトチーム立上・運営らくらくセット」として①課題発見シート②目標設定シート③メンバー選定チェックリスト④運用ルール設定シート⑤改善策検討シートというツールを用意しました。
ぜひこちらも活用しながら、委員会・プロジェクトチームを立ち上げ、また、取り組みを見直してください。
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Office SUGIYAMA グループ代表。採用定着士、特定社会保険労務士、行政書士。1967年愛知県岡崎市生まれ。勤務先の倒産を機に宮崎県で創業。20名近くのスタッフを有し、採用定着から退職マネジメントに至るまで、日本各地の人事を一気通貫にサポートする。HRテックを精力的に推進し、クライアントのDX化支援に強みを持つ。著書は『「労務管理」の実務がまるごとわかる本(日本実業出版)』『新採用戦略ハンドブック(労働新聞社)』など