2025年度の介護職員等処遇改善加算の取り扱いが決定―新たな職場環境等要件に猶予期間を設定

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2025年度以降の介護職員等処遇改善加算について、算定要件や事務手続き、計画書の新様式などの内容が明らかになっています。

介護施設や事業所にキャリアアップの支援や有給休暇を取りやすい環境づくり、ガイドラインに沿った業務改善活動などといった幅広い取り組みを求める「職場環境等要件」に26年3月末までの猶予期間を設けるほか、現在「キャリアパス要件」に適用されている緩和措置も1年延長されます。

こうした手続きの内容とともに、厚生労働省は関連するQ&Aも示しました。

こちらのページではこれまでのルールとの変更点を中心に、25年度版の通知(「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」)の内容を整理しています。

介護職員等処遇改善加算の取得促進を図るための新たな緩和措置

介護職員等処遇改善加算の取得状況には施設・事業所により格差

24年度介護報酬改定でそれまでの処遇改善関連加算が集約された「介護職員等処遇改善加算」。

介護職員の処遇や賃金の改善を進めるための方策として加算の算定要件が整備されてきましたが、在宅系サービス(訪問介護、通所介護、通所リハビリテーション、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、地域密着型通所介護、 小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護等)の場合で、最上位区分(Ⅰ)の取得事業所が35.7%と、事業所によって取り組みの状況には格差があります。

(【画像】2024年8月時点の介護職員等処遇改善加算の取得状況(第243回社会保障審議会介護給付費分科会資料より))

そこで、同加算の取得促進を図って介護職員らの処遇改善を広げるため、24(令和7年)度中を期限として以下の通り算定要件が緩和されることになりました。

  • 2025年度から適用予定だった「職場環境等要件」に関する緩和措置の導入
  • キャリアパス要件Ⅰ~Ⅲに適用されている経過措置の延長

2025年度から適用予定だった「職場環境等要件」に関する新たな緩和措置

職場環境改善要件は、介護職員が働きやすい環境を整備し、定着を促進するための取り組みを事業者に促すために定められている要件です。

25年度以降に介護職員等処遇改善加算を算定する場合、加算区分(「ⅠかⅡ」あるいは「ⅢまたはⅣ」)によって定められたルールに沿い、「入職促進に向けた取組」「資質の向上やキャリアパスに向けた支援」といった取り組みを実施する必要があります。

(【画像】2月7日付の厚生労働省老健局長名通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和7年度分)表5職場環境等要件より)

この職場環境等要件は当初、25年度から適用される新要件(上の表の内容)が明示されていましたが、この度新たに発出された25年度版の正式な通知(「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」)では、

  • 新要件の内容を26年の3月末までに整備する旨を処遇改善計画書によって誓約した場合は、25年度当初から要件を満たしていたものとして取り扱うことができる(その場合、26年3月末までに実績報告書による報告が必要)。
  • 「介護人材確保・職場環境改善等補助金」の申請を行った場合、25年度の職場環境等要件に関する適用を猶予する

という緩和措置が新たに示されました。

(【画像】同通知別紙2-1(処遇改善加算総括表)「介護職員等処遇改善加算処遇改善計画書(令和7年度)」より職場環境等要件の誓約に関する部分を抜粋)

キャリアパス要件(I~Ⅲ)の緩和措置を延長

もう一つの変更点が、24年度末までの予定だったキャリアパス要件(区分Ⅰ~Ⅲ)に適用されている緩和措置の延長です。

キャリアパス要件には、介護職員の専門性や能力向上を助けるための取り組みを評価するⅠ~Ⅴの取り組みが算定要件として定められており、このうち、要件Ⅰ~Ⅲは24年度中にそれぞれの内容を整備すると誓約すれば、要件を満たしたこととされていました。

今回の通知では25(令和7)年度の扱いに関する記載が刷新されていて、この緩和措置の期限が26(令和8)年3月末までとなっています。

なお、計画書でこの誓約をした場合、26年3月末までに各要件が定める内容を実施して実績報告書でその旨を報告する必要があります。

概要 対応する介護職員処遇改善加算の区分 2025年度の変更点
キャリアパス要件Ⅰ

(任用要件・賃金体系)

介護職員の職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件を定め、それらに応じた賃金体系を整備する。 ⅠⅡⅢ 要件整備の「誓約」も可

※2026年3月末までに整備を行い、実績報告書でその旨を報告

キャリアパス要件Ⅱ

(研修の実施等)

介護職員の資質向上の目標や以下のいずれかに関する具体的な計画を策定し、計画に係る研修の実施または研修の機会を確保する。

a 研修機会の提供又は技術指導等の実施、 介護職員の能力評価

b資格取得のための支援(勤務シフトの調整、 休暇の付与、費用の援助等)

ⅠⅡⅢⅣ 要件整備の「誓約」も可

※2026年3月末までに計画策定等を行い、実績報告書で研修実施または研修機会を確保した旨を報告

キャリアパス要件Ⅲ

(昇給の仕組み)

介護職員について以下のいずれかの仕組みを整備する。

a 経験に応じて昇給する仕組み b 資格等に応じて昇給する仕組み c 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み

ⅠⅡⅢ 要件整備の「誓約」も可

※2026年3月末までに整備を行い、実績報告書でその旨を報告

ここまで紹介した内容は、通知のうち「3介護職員等処遇改善加算の要件」の③~⑤、及び⑧に記載があります。

また、24年度改定により以前の旧処遇改善関連加算を算定していた場合に、旧加算の算定状況に応じた経過措置区分として設定されていた介護職員等処遇改善加算Ⅴ⑴~⒁は予定通り廃止されます。

これらの加算を算定している事業所には、介護職員等処遇改善加算Ⅰ~Ⅳへの移行を支援するためのガイドとなるツールが厚労省によって用意されています。

介護職員等処遇改善加算を2025年度に算定する場合の申請スケジュール

25年4月または5月から介護職員等処遇改善加算を算定する場合、処遇改善計画書の届出期日は、厚労省から自治体に向けた通知上は25年4月15日となっています。

なお、6月以降に同加算を算定する場合は、算定を始める月の前々月の末日までに提出が必要です。

また、体制等状況一覧表等の届出は原則として、居宅系サービス・施設系サ-ビスとも25年4月1日となっています。(ただし、計画書に合わせて自治体判断で4月15日に設定することも可能)

25年度の実績報告書の提出期日は、通常の場合26で年7月31日です。

詳細は管轄自治体の案内をご確認ください。

「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」の内容

今回の通知に合わせ、介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)も発出されています。

通知の内容を含む「介護保険最新情報vol.1353」の最後に、25年度以降の本加算に関する見解が

  • 賃金改善方法・対象経費
  • 対象者・対象事業者
  • 月額賃金改善要件
  • キャリアパス要件Ⅰ~Ⅲ
  • キャリアパス要件Ⅳ(経験・技能のある介護職員の賃金改善後の年収を440万円以上とする要件)
  • キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置要件)
  • 職場環境等要件
  • その他(地域密着型サービスの市町村独自加算には、処遇改善加算の算定における介護報酬総単位数に含める取り扱いとする旨、算定する加算区分を検討するためのガイドの紹介 )

に整理されていますので、申請書類の作成に当たってお目通しください。

介護職員等処遇改善加算に関する問い合わせ窓口(厚生労働省)

厚労省は同加算に関する不明点や相談を受け付ける問い合わせ窓口を設置しています。なお、この窓口は、「令和6年度介護人材確保・職場環境改善等事業(介護保険事業費補助金)」に関する問い合わせ対応も実施しています。

【介護職員等処遇改善加算等 厚生労働省コールセンター】
電話番号:050-3733-0222
受付時間:9:00~18:00(土日含む))

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