看護師定着と売上獲得を叶えるための採用~人材選抜編~―理論に基づく訪問看護経営(4)

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前回(採用プロセスの全体像と第一段階である「募集」についての説明)に引き続き、「会社の目指す方向性や目的に合った人を採用し、その人がより活躍できるような環境を整える」ための採用について、ヒントをご紹介してまいります。これは、従業員満足と利益の獲得を同時に達成するサービスプロフィットチェーンの実現において最も大切な要素でした。

今回は、採用プロセスの第二段階「選抜」について詳しく説明をしていきたいと思います。

「採用」の細分化―人材選抜の目的は何か

採用のプロセスは、会社と求職者とのマッチングの機会だと考えることができます。具体的には下記図の3つの要素がマッチングしているかを確かめるプロセスだと言えます。

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前回のコラムでは、自社で採用するべき人材像を明確化して、労働条件や必要となる技能や経験等を具体的に明示して募集をすると良いと説明いたしました。この過程を経ることで、基本的には自社の求める人材と求職者とは近づいているはずです。しかし、実際には応募者が条件等を十分に読んでいない、会社側と理解が異なる等ということも多くあります。そこで、選抜の目的は、求職者と組織がマッチングしているかを確かめることとします。

選抜において実践するべきこと

それでは、選抜(採用選考)において”期待のマッチング”、”能力のマッチング”、”フィーリングのマッチング”をそれぞれどのように確認をしていくのかについて説明をしていきます。

一般的に、選抜の場面では、履歴書等の書類選考と面接が行われていると思います。弊社では、これらに加えて看護技能に関するチェックリストや適性検査等の各種テストを行なうことをお勧めしています。

こういった様々な情報収集をした上で、応募者を採用するかどうかを決定していきます。決定においては『会社の目指す方向性や目的に共感し、自組織で活躍できる人かどうか』ということを基準にすると良いでしょう。

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書類選考時の確認事項

まず、履歴書ではその求職者の方のプロフィールから期待のマッチングをしているかを確認します。取得資格として看護師免許がある、自動車免許がある等必要要件を満たしているかは大切です。その上で、今までどのようなキャリアを辿ってきたのかも確認しましょう。

特に看護師を採用する上では、どのような臨床経験を積んできたのかが求職者の能力を推し量る上でとても重要になります。その他には、住所は通勤可能でオンコールは持てる距離にあるのかといった点なども確認しておく必要があります。

チェックリストやテストにおける確認事項

次に、チェックリストや対象者の特性や傾向を測るようなテストを活用して能力のマッチングをしているかを確認していきます。こういったテスト実施の目的は、自社で働く上で必須でかつ採用後に自社で伸ばせない能力の有無を確認することにあります。

例えば、看護チェックリストは自社のサービスを提供するにあたり必要な看護師としての技能、知識を一覧にして〔自立している/経験あり/未経験〕等にチェックをつけてもらいます。教育体制が整っている訪問看護ステーションであれば未経験なことが多い看護師であっても自社で能力を伸ばすことは可能でしょう。しかし、教育体制がまだ整っておらず人員の余力も無い訪問看護ステーションにおいては未経験部分について自社で能力を伸ばすことが難しい状況にあると思います。そういった場合に無理に採用してしまうと、なかなか独り立ちできない職員に関する費用負担が長期間続き、会社の負担が大きくなってしまいます。それだけではなく、採用された職員にとっても十分な教育を受けられずに不安を抱えて働かなければなりません。

このようなことはお互いにとって不幸な結果になってしまうので避けるべきだと考えられます。

そして、対象者の特性や傾向を測るようなテストというものは様々に種類がありますが、良し悪しの順位がつくものよりは、その方の特性や傾向が分かるものを選ぶと良いでしょう。

例えば、新しい取り組みを積極的に行なっているような会社であれば、新しい物事に対処することによって高いストレスを感じる傾向にある人は合っていないと言えます。また、チームを大切にしているのであれば協調性があまりにも低い傾向にある人は馴染めない可能性があります。もちろん、就職後に伸びる可能性がある要素も多いですので、こういったテストにおいてはあまりにも極端な結果が無いかどうか、虚偽の解答の傾向が無いかどうかが重要な指標になります。

面接で注意するべきこと

面接において注意すべき点として、採用面接においては『基本的人権の尊重』と『応募者の適性や能力に基づいて行うこと』という原則があります。厚生労働省のHPには職業差別にならないように採用面接において配慮すべき事項として下記11項目が挙げられていますので注意してください。

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こういった点に注意をしながら、面接ではフィーリングのマッチングと共に期待と能力のマッチングの最終確認をしていきます。

期待のマッチングについては特に給与や勤務時間、休日の取り方、オンコールの方法等についてはお互いの認識のすれ違いから採用後に「思っていたのと違った」というトラブルが多く発生しますので最終確認は必ず口頭で説明をして確認をすることが重要です。

能力のマッチングについては、現在持っている技能が求めている能力を満たしているか、ということとともに自社で伸ばしていくことができるかという視点での最終確認がとても重要になります。

採用でよく見かけるのは、履歴書の経歴と看護チェックリストの技能が見合っていないという方です。”この臨床経験ではこの技術は経験しないのではないか?”と疑問を感じた部分について「この看護技術について“自立してできる“となっていますがどちらで経験されたのですか?」などと面接で確認をしていくと良いでしょう。

中には「経験は無いが、実習で見学したのでできます!」という方もいらっしゃいます。基本的に1人で訪問しながら技能を成長させていく訪問看護の特性上、自分の技能についての評価や言語化能力はとても重要になります。こういった質問への回答によって自社でその方の能力を伸ばしていくことができるかどうかを推し量ることができます。

また、能力のマッチングについては短いケースを読んでもらって、そのケースに対して自分が看護師としてどのように対応するかという回答をしてもらうことによって、求職者の看護師としての判断能力や看護観を知るという方法も有効です。

最後に、会社や事業所の組織に合っているかどうかということがフィーリングのマッチングです。採用担当者だけではなく、実際に事業所内の雰囲気を見てもらうことや、職員と実際に少し話してもらうということも良い方法です。以前、事務員さんと少し話してもらうことで、他職種連携や営業ができる人なのかどうかを確認しているという話も聞いたことがあります。感染症の流行でオンライン面談も増えていますが、様々な工夫をしてみると良いのではないでしょうか。

今回は、採用プロセスの第二段階の選抜について詳しく説明をしました。次回は、採用プロセスの第三段階である定着について説明をしていきたいと思います。

参考文献

• 服部泰宏(2016)『採用学』新潮社

厚生労働省. “公正な採用選考の基本” (2022/08/23)

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