働き方改革において、介護事業者が抑えるべき労務管理のポイント(2)休憩・休日のポイント

2021.07.27
2021.11.17
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前回の記事に続き、介護事業所における「働き方改革を戦略的に実践するポイント」について、お伝えします。第2回目は「働き方改革における労働時間のポイント②と休憩・休日のポイント」です。

目次
    なぜ、「労働時間」が重要なのか
      「働き方改革」における労働時間のポイント②
        「変形労働時間制」の取り組み
          多様な働き方の時代だからこそ労働時間マネジメント者の評価を
            介護事業所における「休憩・休日」の取り組み

              なぜ、「労働時間」が重要なのか

              私は社会保険労務士として、人事労務コンサルティングの場面で「労働時間」「賃金」「貢献」についてかなりの時間を要して検証します。

              具体的には、「事業所としての経営的数値(売り上げ、利益)」と「賃金」の関係についての検証です。

              それは、労働者にとって「賃金とは労働の対価」であり、経営者にとって「賃金とは貢献の対価」であるが故に、この部分のバランスがとても重要だからです。

              介護事業所における人件費率(売り上げに占める人件費の割合)は60〜70%、中には80%近くの事業所もあり全産業の中では高くなっています。

              例えば、訪問介護で、平均の報酬単価約5,000円/時間(身体介護や家事援助の単価を勘案した参考単価)を1日5件、1ヶ月22日とすると、1ヶ月の報酬が約55万円、この60〜70%ですから、33〜38万円が人件費であり、これには、会社の法定福利費等も含まれますので実質の支給額は25万円〜38万円となります。

              介護事業所においては、定員や職員状況に応じて、報酬(売り上げ)について、上限(天井)があります。

              その限られた条件の中で、責任、評価、実績、役職に応じた手当を振り分け賃金を構成していく必要があります。

              それゆえ、報酬を生まない時間をスリム化する事、また工夫で削減できる割増賃金等をスリムにする事が原則となります。

              また、「労働時間」の扱いは、人事労務トラブルにつながる可能性もあります。「サービス残業代」「未払い残業代」に関するご相談は依然多いのが現状です。ご相談の中には、意図的に払わなかったわけではなく、「知識を持ち合わせていなかった」「そのような認識がなかった」という実態も見られます。

              それゆえ、残業代に関する運用は理解し、誠実に行う必要がありますし、分かりやすい運用をおすすめしています。

              「働き方改革」における労働時間のポイント②

              労働基準法では、労働時間は原則として、1日8時間・1週40時間以内とされています。これを法定労働時間と言います。これを超える労働については割増賃金を支払う必要があります。

              例えば、時給1,200円の場合、割増分(0.25)は300円となり、法定労働時間を超過した時間は、時給1,500円となります。

              割増賃金の支払いは、法律や自社の就業規則に準じて支払う必要がありますが、私は実務において、この超過労働時間について検証させていただきます。ポイントは、仕事の内容がどうとか、態度がどうとかいったことではなく(この部分は事業所の方しか分かりませんから)、日々の労働時間の割り振りに改善できる部分はないかという事です。

              例えば、次の事例をご覧ください。

              例:

              月 8:30 〜 17:30 休憩1時間  実労働 8時間

              火 8:30 〜 17:30 休憩1時間  実労働 8時間

              水 8:30 〜 18:30 休憩1時間  実労働 9時間 超過1時間

              木 8:30 〜 17:30 休憩1時間  実労働 8時間

              金 8:30 〜 17:30 休憩1時間  実労働 8時間

              土 8:30 〜 12:30 休憩なし   実労働 4時間 超過4時間

              日 休日

              原則の労働時間運用の場合、水曜日の1時間、休日の土曜日に出勤した4時間について、割増賃金を支給する必要があります(法定労働時間 1週間40時間の事業場の場合)。

              上記の例では、時給を1,200円とした場合、超過時間分の割増分が1,500円となっております。

              割増分が月単位で約6,000円、年間では約7万2,000円(6,000円×12カ月)となります。

              このような状況において、私はその労働時間について検証します。

              例えば、火曜日は、他の従業員の働き方を工夫することで、午後は休んでもらえないだろうかといった切り口があります。

              ※火曜日の労働時間を3時間にする。

              その分を、他の労働時間に分配、つまりは、水曜日の労働時間を、そもそも9時間に、土曜日の労働時間を4時間分配することで、割増分の支払いを削減する労働時間運用です。

              さらに、子育て中の従業員について、朝と夕方の勤務それぞれ30時間短縮し、その分を土曜日に分配する労働時間運用です。

              私が支援させて頂く中で、「正職員、常勤は、1日8時間労働」が前提とされている事業所様が見られます。

              後ほど、記述させていただきます「変形労働時間制」においては、1日の労働時間を8時間に固着する必要はありません。制度を活用する事で、フレキシブルなシフトを組むことができます。

              パートタイマーは、限られた時間で勤務するため、フレキシブルな勤務シフトが難しい部分があるかもしれませんが、正社員はフレキシブルな勤務シフトでの勤務を前提とする労働条件とすることも考えられます。

              また、削減できる割増分を、手当や評価として分配する事や、他の人材の雇用に活用も可能です。

              「変形労働時間制」の取り組み

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