2024年度の介護報酬改定の全容が決まるまで、およそ半年と迫っている。
物価高などによる影響で事業者の経営環境悪化が進む中、改定の行く末についてこれまでの関連審議や政府方針から考察する。
また、処遇改善加算の1本化やケアマネジャーの処遇改善、LIFEと成果報酬の関連付けといった、今後注目のポイントについて予想を交えて概説したい。
5月12日に令和6年(2024)度介護保険法が通常国会で成立した。
しかし、残された3つの論点
の審議が、7月10日の介護保険部会から再開されている。
その結論については、6月16日に閣議決定された骨太の方針2023において、年末までに出すものとされている。
介護保険法の審議に並行して、令和6年度介護報酬改定の審議が始まった。現在は4つの主要な論点について、一巡目の審議が行われている。
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【2024年度介護報酬改定】ショートステイの利用長期化や医療ニーズの高まりに分科会が着目
8月頃までに一巡目の審議を終了して、9月に業界団体ヒアリング。10月から12月にかけて二巡目の審議を行う。この二巡目で多くの論点は取り纏めされるが、一部の論点について三巡目の審議を行う。12月中旬には、介護給付費分科会としての意見が取りまとめられて結審となる。12月下旬に令和6年度介護報酬改定の改定率が示される。
年が明けて、2024年1月下旬、遅くても2月初旬に、令和6年度介護報酬単位が答申される。算定要件である解釈通知とQ&Aは3月初旬となる見込である。これが、今回の介護報酬改定のスケジュールである。
(【画像】第107回社会保障審議会介護保険部会の資料より)
皆さまは、令和6年度介護報酬改定率がプラス改定とマイナス改定のどちらになると予想しているだろうか。長期化したコロナ禍の影響とウクライナ情勢に端を発した物価高騰もあって、楽観的にプラス改定を予想されている方が多いと感じる。しかし、コロナ禍は実質的に5月8日の5類移行で収束しているし、物価高騰も流動的な一過性の問題である。これらは介護報酬ではなく、補助金や助成金の類で対応する問題だ。
6月16日に閣議決定した骨太の方針2023における記載はこうである。
「次期診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定においては、物価高騰・ 賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・ 保険料負担の抑制の必要性を踏まえ、必要な対応を行う。〜中略〜医療・介護分野の課題について効果的・効率的に対応する観点から検討を行う」
問題は、改善や引き上げと言った文言が一言も無い事である。「効果的・効率的に対応する」という記載は、介護報酬全体を引き上げること無く、定められた枠組みの中でやり繰りが行われる事を示唆している。重要な部分を引き上げ、その原資として他の部分を引き下げると言うことだ。明確に「引下げ」という言葉が入らなかっただけでも良しとしなければならない。
というのは、国としての政策転換の影響が大きい。現在、国の施策の重要課題は少子化対策である。その資金3兆円の出所が決まっていない。その資金源泉として、当然に社会保障費用の削減も覚悟しなければならないだろう。すなわち、令和6年度介護報酬改定は、厳冬の改定となる可能性を捨てきれないのだ。
さて、ここからは介護報酬改定について複数のサービスに影響しそうなポイントや積み残しとなっている論点について5つ取り上げたい。
小濱介護経営事務所 代表。一般社団法人日本介護経営研究協会専務理事。一般社団法人介護経営研究会 専務理事。一般社団法人介護事業援護会理事。C-MAS 介護事業経営研究会最高顧問。