2024年度介護報酬改定に向け、直近の社会保障審議会・介護給付費分科会は通所介護の報酬体系について議論しました。
前回(21年度)改定で見直しされた入浴介助加算(Ⅱ)は算定が低調であり、同加算が”実質的な減算”となっている実態について見直しを求める意見が複数あがりました。
同加算の枠組みについて、再考の余地があるというのが分科会メンバーの共通認識といえそうです。
7月10日の社会保障審議会・介護給付費分科会における議題は、通所系サービスの報酬体系でした。以下のサービス種別ごとに意見が交わされています。
本稿では通所介護・地域密着型通所介護を巡る議論について、整理・考察します。
通所介護、地域密着型通所介護及び認知症対応型通所介護について、厚労省が「論点」として示したのは、「必要な日常生活上の機能向上並びに自立支援につながる質の高いサービスを提供する」ための方策です。
21年度改定でも利用者の「機能向上」や「自立支援」といった文脈で、個別機能訓練加算(加算区分の統合、LIFEでのデータ提出を評価)、入浴介助加算、生活機能向上連携加算(ICTツールなどを使って外部のリハビリテーション専門職との連携を図る場合を評価)の見直しなどが行われています。
これらの加算の算定状況は以下の通りとなっています。
(事業所ベース)
※LIFE対応で追加
今回は特に、多くの事業所が算定している入浴介助加算について意見が集中しました。
入浴介助加算は、21年度改定で利用者が自宅での入浴を実現できるよう、専門職が個別の計画立案を行い、それに従った入浴介助を評価する区分(Ⅱ)が新設されました。それに伴い、従来の入浴介助加算は、実質10単位の引き下げとなりました。
新設された加算(Ⅱ)は10分の1の事業所しか算定できていないため、ほとんどの事業所で減収の要因となった見直しです。
入浴介助には人的及び費用面でのコストがかかっていることを踏まえてそれ相応の手当を求める意見が事業者団体や専門職を代表する団体から挙がっています。
また、「そもそも(デイサービスで特殊浴槽や機械浴を使うような)中重度の方々は、入浴介助加算(Ⅱ)になかなかなじまない」(稲葉雅之委員/民間介護事業推進委員会代表委員)といった制度の建付けと現場の乖離についての指摘もありました。
いずれにしても、(Ⅱ)の算定が低調であり、「今後どういうふうに考えていくかということは議論の必要がある」(江澤和彦委員/日本医師会常任理事)ことは共通認識といえそうです。
もう一つ中心的な論点となったのが、認知症対応型通所介護についてです。
認知症対応型通所介護はほかのサービスに比べて近年の収支差率が高い水準で推移している一方、事業所数は伸びていません。
(【画像】7月10日開催 第219回社会保障審議会介護給付費分科会資料より)
認知症対応型通所介護の事業所数が増えていない理由について問われた厚労省の和田幸典認知症施策・地域介護推進課長は、「詳細な理由までは分析できているわけではない」としながらも、サービスを通じて認知症の対応力を向上させるための施策の影響が考えられるとしています。
特に21年度改定では、資格を持たない介護職員らに認知症介護基礎研修を受講させるよう事業者に求めており、「必ずしも認知症特化のデイだけでなく、一般のデイ等でも認知症の方の人が増えてきているということが考えられるのではないか」と見解を示しました。
この説明に対し石田路子委員(NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事(名古屋学芸大学客員教授))は、通所介護や地域密着型通所介護を認知症の人がどのぐらい利用しているか、データで示すよう要望しています。
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