引き続きこのシリーズでは、現場のリーダーや管理者からよく聞かれる悩みを題材に、介護現場で起こりやすい人材問題とその対処法について検討したいと思います。
第3回は、職員の「やりがいの喪失」という、特養のフロアリーダーCさんの悩みについて一緒に考えてみましょう。
(事例は、筆者が見聞きした実話を題材にしたフィクションです)
Cさん:「施設の中では毎日、この時間は食事、この時間は入浴など、どうしても時間に追われてしまいます。流れ作業にように業務、業務で時間が過ぎていってしまうと、目の前の利用者にしっかり向き合えていない…となってしまいがちです」
そう話し始めるCさんは4年生大学から新卒で現在の社会福祉法人に入職し、3年目で特養のユニットリーダー、5年目でフロアリーダーに昇進し、現在7年目の期待の若手リーダーです。
Cさん:「ある時、入職2年目の子が辞めたいって言ってきたんです。理由を聞くと、“仕事が楽しくない”って言うんですね。日々の日課や介助をただこなすだけになってしまって、利用者に全然向き合えていないということのようでした。
介護職をしている人はみんな、利用者の役に立ちたいという思いをもってやっている人が多いと思うんですけど、毎日が流れ作業のように過ぎていけば、確かにそれはモチベーション下がりますよね」
Cさんは続けます。
Cさん:「最初はやりがいを求めて入職してきた人たちも、どんどん疲弊し、やりがいを喪失していってしまいます。人材不足というのはもちろんあるのですが、多忙ななか、利用者に向き合う時間も十分にとれず、自分たちのやっている仕事の意義とか目的とかがわからなくなってしまう、というような部分が出てきてしまいます」
Cさん:「できるだけ希望休をとれるようにするとか、有休をとってもらうとか、リフレッシュできるように工夫しているところなのですが、それだけでは根本解決につながっていないように思うのです」
このような悩みは、仕事をする上で最も深刻な問題とも言えるかも知れません。一体どう対応したらよいのでしょうか。
Cさんが言うように、時間に追われ多忙な生活が続けば、誰でも心身ともに疲弊してしまいます。自分でコントロールがきかないような場合は、なおさらです。
計画的に有給休暇や希望休、あるいは連続休暇などをとれるようにするなど、オン・オフを切り替えてリフレッシュできるような工夫は、重要だと言えるでしょう。できるだけシフトを早めに作成し、お互いに譲り合い、調整し合うことができれば、比較的取組みやすい施策といえるのではないでしょうか。
しかしながら、休みがとれれば、それだけで「仕事が楽しくない」という部下の気持ちをモチベートできるわけでなないでしょう。一体どのような方法があるでしょうか。
茨城キリスト教大学経営学部准教授。博士(政策学)、MBA(経営管理修士)。人事労務系シンクタンク等を経て現職。公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査検討委員会」委員。著書に『福祉サービスの組織と経営』(共著)中央法規出版(2021年)、『介護人材マネジメントの理論と実践』(単著)法政大学出版局(2020年)など。