LIFEのフィードバックデータの提供が始まって5カ月が経過しました。介護事業所に提供されているデータは依然として、「暫定的」な内容に留まっており、個々の利用者に提供するケアの内容に反映できるものではありませんが、登録されているデータの傾向を知り、通所介護事業所での活用について考えてみましょう。
*関連記事:LIFEで2度目のフィードバック開始、登録データはデイサービスで16万件以上に
厚生労働省は10月末時点で、2021年8月10日までにLIFEを通じてデータ提供を完了した事業所に対し、7月利用分までの全国の集計データをフィードバックとして提供しています。
8月10日までの登録データは34万5,943人分にまで増え、4月利用分と比べると3倍以上になっています(フィードバック帳票の「科学的介護推進に関する評価」シートでサービス「通所介護」、パターン「該当者数」を選択した場合の数値)。
介護サービス施設・事業所調査によると、通所介護の利用者数は130万5,922人(2019年時点)なので利用者のうちおよそ4人に1人分のデータが登録されていると見られます。
【表】LIFEのフィードバック帳票から「科学的介護推進に関する評価」シートでサービス「通所介護」を選択し、表示された数値を転記して作成(上段はパターン「該当者数」下段はパターン「割合・平均値」を選択)
【表】介護サービス施設・事業所調査の概況から抽出した通所介護の利用者数(2019年9月時点。参考値)
フィードバック帳票では現在、LIFEの活用が算定要件になっている加算種別に対応する様式を選択しすることで、項目ごとの全国の集計値や分布を確認することができます。
例えば、デイサービスで算定できる加算に対応した様式では、科学的介護推進体制加算を算定する際にデータ登録する様式「科学的介護推進に関する評価」(通所・居住サービス)の各項目や「個別機能訓練加算II」の生活機能チェックシートの項目について全国の通所介護事業所による提出データの集計値を参照することができます。
これらのデータの経過を見ると、それぞれの様式にデータ登録を行っている事業所の傾向としては、
・要介護1~3がコアターゲット ・80歳から90歳以上がコアターゲット ・男性の登録者はおよそ35%に留まること ・日常生活自立度ではJ2、A1、A2がコアターゲット
【表】LIFEのフィードバック帳票の「科学的介護推進に関する評価」シートでサービス「通所介護」を選択し、表示された数値を転記して作成(各項目上段はパターン「該当者数」下段はパターン「割合・平均値」を選択)
こうした傾向は、一般的なデイサービスの利用者の特徴とも言えます。しかし、自事業所の特色を知り、どのサービスを強化していくか検討するというステップを踏む上で、職員と現状認識するための足掛かりにはなるかもしれません。
また、加算の算定要件には、「フィードバック情報を活用したPDCAサイクルの推進及びサービスの質の向上」が含まれています。それを踏まえると、全国平均値を比べて、自営業所の数値が低くなっている部分について現状を理解・事業所内で共有し、その原因を検討し、改善に向けた検討を行うことが現時点では求められると考えられます。
フィードバックデータの数値について、シート別に詳しく見ていきましょう。
デイサービスで個別機能訓練加算(II)を算定するために登録が必要な「生活機能チェックシート」の状況を見ると、ADLの評価項目では「食事」や「整容」、「トイレ動作」では「自立」の状態の利用者が多く、「入浴」、「平地歩行」、「階段昇降」では課題を抱えている利用者が多いことが伺えます。
【表】LIFEのフィードバック帳票の「生活機能チェックシート」に対応するシートでサービス「通所介護」を選択し、表示された数値を転記して作成(パターンは「割合・平均値」を選択)
事業所個別で見た時のデータも全国平均と同じ状況にあるのか、それとも独自の特徴や傾向があるのか分析した結果を、サービスを組み立てていく根拠として考えることができるでしょう。また、事業所で採用している戦略・方針と実際の利用者の状態像の間にギャップがないか役立てることもできるかもしれません。
さらに注視すべきが、IADLのレベルや起居動作の課題の有無についてです。
IADLの課題についてはいずれの項目でも、70%以上の利用者について「課題なし」と登録されています。しかし、この項目に関しては、アセスメントでしっかりと利用者の状態把握ができているのか、という点にも目を向けなけれなならないでしょう。利用者ではなく、事業所側の課題が潜んでいる可能性にも留意する必要があります。
さらに起居動作の課題については、「立ち上がり」、「立位」で「課題あり」の割合が比較的高く30%台となっていますが、その他の項目では「課題なし」の割合が80%台と高くなっています。LIFEで収集したデータは、政策立案にも使われるものですので、これがそのまま実態を表していると評価されれば、デイサービスの必要性・存在意義についても検討が及ぶ可能性があると言えるでしょう。
※記事制作の協力・監修:株式会社ケアモンスター代表取締役 田中大悟氏
介護経営ドットコムの記事を制作・配信している編集部です。日々、介護事業所を経営する皆さんに役立つ情報を収集し、発信しています。