【2024年度介護報酬改定】看取り期の対応評価・同一建物減算の拡充を検討|訪問介護・訪問入浴介護の論点

2023.11.14
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社会保障審議会・介護給付費分科会では、2024年度介護報酬改定におけるサービス別の具体的な対応案について検討が進んでいるところです。訪問介護については、厚生労働省が看取り期の利用者への対応を評価するため、特定事業所加算の見直し案を提示しました。

一方で、集合住宅で暮らす利用者へのサービス提供を対象とした”同一建物減算の更なる単位減”を図る提案には、賛否が分かれています

訪問介護および訪問入浴介護に関する最新の論点と検討状況をまとめてお伝えします。

訪問介護の特定事業所加算見直しや同一建物減算の拡充案などを厚労省が提示

11月6日の分科会では、訪問系サービスに関する2回目の審議が行われました。

そのうち、訪問介護・訪問入浴介護について、厚生労働省が示した具体的な論点および改定案を以下にまとめます。

【訪問介護】看取り期の利用者への対応に関する見直し案 (特定事業所加算の見直し)

  • 特定事業所加算における重度者対応要件に、「看取り期にある者」に関する要件を新たに追加する。
  • 特定事業所加算の要件見直しと併せて、現行の区分の整理統合を実施する。

(【画像】第230回社会保障審議会・介護給付費分科会資料より(以下同様))

(※特定事業所加算の要件等はこちら

【訪問入浴介護】看取り期の利用者への対応に関する見直し案

  • 事業所のサービス提供体制について適切な評価を図る観点から、新たに加算を設ける。

【訪問介護】同一建物等居住者にサービス提供する場合の報酬に関する見直し案

  • 同一建物減算(10%〜15%減算)について、一定割合以上が同一建物等に居住する利用者へのサービス提供である場合には、更なる単位数減による段階的な報酬の適正化を図る。

(※同一建物等減算の要件等はこちら

【訪問介護】中山間地域等における移動距離等を踏まえた報酬の見直し

  • 中山間地域等でも現行の加算要件に該当せず、事業運営が非効率にならざるを得ない状況(地域資源の状況等によりやむを得ず移動距離を要する、悪路が多い、積雪時の雪かき負担が大きいなど)の中、利用者へのサービス提供体制を継続的に構築している取組みに対して新たな評価を行う。

(※特別地域加算の要件等はこちら

(※中山間地域等における小規模事業所加算の要件等はこちら

(※中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算の要件等はこちら

特定事業所加算の見直し案には反対意見無し│厚労省提案に対する委員の賛否

委員からの発言が目立った論点について、検討状況や意見を以下にまとめます。

看取り期の利用者への対応に関する見直しに対する意見(訪問介護・訪問入浴介護)

厚労省が示したデータによると、看取り期の利用者への対応実績がある事業所は、訪問介護で39.8%、訪問入浴介護で59.5%あります。また、看取り期に提供したサービスについては、通常時と比べて提供時間や行為などに変化があるとの回答も目立ちます。

厚労省の提案は、特定事業所加算の要件見直しの中で、このような取り組みに対する評価が可能となる仕組みを整えようとするものです。

厚労省の提案に対して目立った反対意見は出ていません。方向性に賛同したうえで、主に以下のような指摘がありました。

  • 訪問介護は重度者以外の利用者への対応比重も大きい。重度化を押しとどめる意味でのサービス提供への適切な評価も必要。
  • ケアの決定プロセスにおける関係者が増えることにもつながる。訪問介護や訪問入浴介護での対応を想定したガイドラインの見直しを。
  • アドバンスケアプランニング(ACP)への取組みを加算に位置付けることも重要。利用者の尊厳と自己決定権の尊重を促進する点を踏まえて、加算要件を見極める必要がある。
  • 現行の体制加算申請では対応できないとの現場の声があり、検討を求める。

また、各サービス間での看取りに関する要件の違いについて、「医師が一般的に認められている医学的知見に基づき、回復の見込みがないと診断した方」を統一した基準にするべきとの指摘もありました。

同一建物等居住者にサービス提供する場合の段階的な単位減に対する意見

段階的に報酬の適正化を図る、同一建物減算の更なる単位数減については、賛否が分かれました。

今回の見直し案には介護費の抑制に加え、同一建物等に居住する利用者以外の、地域で暮らす人にもサービス提供の実施を促したいという狙いがあります。また、これまでに画一的なケアプランや過剰なサービス提供等の是正が求められていることも背景にあります。

厚労省は検討を促すためのデータとして、

  • 同一建物減算を算定する利用者のみにサービス提供を行う事業所の割合が半数以上ある
  • 同一建物等居住者へのサービス提供割合が多くなるにつれ、訪問件数は増加、移動時間や移動距離は短くなる

などの傾向を示しました。

審議会では、厚労省の提案に対する賛成意見もありましたが、慎重な検討を求める反対意見が比較的多く出ています。具体的な反対意見は以下のとおりです。

  • 生産性向上の結果により介護報酬が減算等されることになれば、各事業者や従事者による取り組みの努力を否定することとなり、意欲が阻害される。
  • 一部の不適切な事例の存在から、すべてに一律に減算対応するのは慎重であるべき。
  • スマートシティ化や、人材不足の中でも効率的な移動としての同一建物居住を進める方策であれば、「集合しているところは効率的だから報酬を下げる」ことが正しいか慎重に検討を。
  • 同一建物に居住していない利用者へ対応する訪問介護事業所の閉鎖や廃止が相次いでいる現状を懸念している。同一建物居住者へのサービスと、それ以外のサービスを分けて考える必要があるのでは。
  • 同じサービスを受けるにもかかわらず、利用者の居場所による自己負担の差をさらに拡大するのは、介護保険方式の中では好ましくないのでは。

訪問入浴介護における看取り期への対応評価や、中山間地域等における移動距離等を踏まえた報酬の見直し案については、目立った反対意見もなく今後さらに具体的な対応案を検討する流れになりそうです。

同一建物減算の拡充案への各種意見やそのほかの要望など、引き続き検討の経過を追い、随時お伝えしてまいります。

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