社会保障審議会・介護給付費分科会では、2024年度介護報酬改定におけるサービス別の具体的な対応案について検討が進んでいるところです。訪問介護については、厚生労働省が看取り期の利用者への対応を評価するため、特定事業所加算の見直し案を提示しました。
一方で、集合住宅で暮らす利用者へのサービス提供を対象とした”同一建物減算の更なる単位減”を図る提案には、賛否が分かれています
訪問介護および訪問入浴介護に関する最新の論点と検討状況をまとめてお伝えします。
11月6日の分科会では、訪問系サービスに関する2回目の審議が行われました。
そのうち、訪問介護・訪問入浴介護について、厚生労働省が示した具体的な論点および改定案を以下にまとめます。
(【画像】第230回社会保障審議会・介護給付費分科会資料より(以下同様))
(※特定事業所加算の要件等はこちら)
(※同一建物等減算の要件等はこちら)
(※特別地域加算の要件等はこちら)
(※中山間地域等における小規模事業所加算の要件等はこちら)
(※中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算の要件等はこちら)
委員からの発言が目立った論点について、検討状況や意見を以下にまとめます。
厚労省が示したデータによると、看取り期の利用者への対応実績がある事業所は、訪問介護で39.8%、訪問入浴介護で59.5%あります。また、看取り期に提供したサービスについては、通常時と比べて提供時間や行為などに変化があるとの回答も目立ちます。
厚労省の提案は、特定事業所加算の要件見直しの中で、このような取り組みに対する評価が可能となる仕組みを整えようとするものです。
厚労省の提案に対して目立った反対意見は出ていません。方向性に賛同したうえで、主に以下のような指摘がありました。
また、各サービス間での看取りに関する要件の違いについて、「医師が一般的に認められている医学的知見に基づき、回復の見込みがないと診断した方」を統一した基準にするべきとの指摘もありました。
段階的に報酬の適正化を図る、同一建物減算の更なる単位数減については、賛否が分かれました。
今回の見直し案には介護費の抑制に加え、同一建物等に居住する利用者以外の、地域で暮らす人にもサービス提供の実施を促したいという狙いがあります。また、これまでに画一的なケアプランや過剰なサービス提供等の是正が求められていることも背景にあります。
厚労省は検討を促すためのデータとして、
などの傾向を示しました。
審議会では、厚労省の提案に対する賛成意見もありましたが、慎重な検討を求める反対意見が比較的多く出ています。具体的な反対意見は以下のとおりです。
訪問入浴介護における看取り期への対応評価や、中山間地域等における移動距離等を踏まえた報酬の見直し案については、目立った反対意見もなく今後さらに具体的な対応案を検討する流れになりそうです。
同一建物減算の拡充案への各種意見やそのほかの要望など、引き続き検討の経過を追い、随時お伝えしてまいります。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。