皆さまの法人・介護事業所では、キャリアパス制度は有効に機能していますか? 「制度はあるが、うまく運用できていない」とか、「査定のためだけの存在になってしまっている」という現場の声も時折耳にします。
今回から数回にわたって、キャリアパスの制度設計や運用に目を向け、それが本当に人材の定着や育成に有効に機能しているのか、もしうまくいっていないとすれば、どうすればうまくいくのか、切り込んで考えてみたいと思います。
初回は、「キャリアパス制度は機能しているのか」と題して、キャリアパスに関連した問題提起をします。
まず、今さらの話ですが、介護事業所へのキャリアパス導入が政策として進められてきた経緯などを振り返っておきたいと思います。
一般にキャリアパスとは、組織内でのキャリアアップの道筋を指します。
介護業界で「キャリアパス」が大きくクローズアップされたのは、2009年よりスタートした介護職員処遇改善交付金がきっかけでしょう。支給にあたって「キャリアパス要件」が示されたため、介護事業者は大急ぎでこれを満たすための施策を講じる必要がありました。
厚生労働省が示した「キャリアパス要件」を解釈すると、組織内での昇進・昇格の要件を明確にした等級制度を基盤として、それに対応した評価・報酬制度、さらにキャリアアップを支援する教育制度を導入することが求められていると言えます。つまり、人事の基本システムを導入せよということです。
茨城キリスト教大学経営学部准教授。博士(政策学)、MBA(経営管理修士)。人事労務系シンクタンク等を経て現職。公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査検討委員会」委員。著書に『福祉サービスの組織と経営』(共著)中央法規出版(2021年)、『介護人材マネジメントの理論と実践』(単著)法政大学出版局(2020年)など。