社会保障審議会・介護給付費分科会では、2024年度の医療介護同時改定に向けて、医療と介護の連携をさらに促すための施策が検討事項の一つとなっています。
厚生労働省が示した基本的な方向性としては、医療機関には「生活」の視点を踏まえた情報提供を、介護現場には「医療」の視点を含めたケアマネジメントを求める姿勢が打ち出されています。
また、ケアマネジメントの過程や介護施設で”人生の最終段階”における利用者の意思決定支援に関わる立場からは、適切な表現やタイミングの共有など、現場の懸念を払しょくさせるサポートを求める声がありました。
社保審・介護給付費分科会では、8月末からサービス横断的な事項についての検討を進めているところです。厚生労働省がこれまでに示してきた議題は以下の通りです。
1.認知症への対応力強化 2.医療・介護連携、人生の最終段階の医療・介護 3.新しい複合型サービス 4.地域の特性に応じたサービスの確保
1.介護人材の処遇改善等 2.人員配置基準等 3.介護現場の生産性向上の推進/経営の協働化・大規模化 4.外国人介護人材に係る人員配置基準上の取り扱いについて
こちらのページでは、8月30日に行われた【医療・介護連携、人生の最終段階の医療・介護】を巡る検討についてまとめています。
まず、前段の「医療・介護連携」を巡って、厚労省が示した論点は以下の通りです。
2040年にかけて医療と介護どちらのニーズも有する高齢者が、双方のサービスを利用する機会はさらに増える見込みです。そこで、医療と介護の関係者、関係機関同士が、相互の顔の見える関係を構築し、情報提供・共有を効率的に行うことが益々重要となります。
介護報酬上でも、介護施設と居宅や医療機関との間を行き来する上で情報連携を図ることを評価する加算などがさまざまに創設されてきました。
(【画像】第222回社会保障審議会・介護給付費分科会資料2より(以下・同様))
これに関して健康保険組合連合会の伊藤悦郎委員は、情報連携に関連した評価のうち、算定率が低いものもある点を指摘。そのうえで、「報酬上の評価だけで改善するのではなく情報連携の体制の整備を早急に進めるべき」と提言しました。
具体的な施策として、医療と介護で共有すべき情報内容や様式などを整備すること、医療DX・介護DXの視点を踏まえたICTの活用推進策を検討することなどを提示しています。
医療・介護連携に関する加算を見直す切り口としては、厚労省側も算定に用いられる一部の様式は、「現病歴等の診療状況に関する情報を記載する項目が中心であり、生活歴等を記載する項目が比較的乏しいもの」があることを指摘しています。
また、介護給付費分科会での検討が始まる前に、診療報酬についての検討を行うメンバーと行われたすり合わせ(同時報酬改定に向けた意見交換会)では、「医療側の「生活」に配慮した視点がかけている」という指摘もあったところです。
医療ニーズを持つ利用者の「生活」に着目した情報連携を可能にする方策が、今後”検討の視点”として示されています。
もう一つの議題が、「人生の最終段階における医療・介護」です。論点を以下に示します。
近年は自宅や介護施設等における死亡割合が増加しており、2021年における死亡場所は、医療機関が67.4%、自宅が17.2%、介護施設等が13.5%となっています。
特に、介護施設等の割合が近年上昇していることから、施設における”人生の最終段階における医療・介護の在り方”が中心的な検討事項の一つといえます。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。