私は、NPO法人タダカヨ理事の次田芳尚と申します。現在は、完全テレワーク型居宅介護支援事業所の代表取締役をしております。キャリアは在宅介護支援センターのソーシャルワーカーに始まり、老人保健施設の相談員、グループ全体の広報企画室長など幅広い職種を経験させていただきました。
私が専門学校を卒業した年は、「ウインドウズ95」というOS(オペレーティング・システム)が発表され、パソコンが一般業務に用いられるようになった時期でした。
めんどくさがり屋の私は「仕事はコンピュータに任せれば良い」という不純な理由で活用を始めたのを思い出します。
こんな私が、IT(インフォメーション・テクノロジー)・ICT(インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジー)の活用を前提とした完全テレワーク型居宅介護支援事業所を立ち上げ、NPO法人タダカヨに賛同してJOINすることになった経緯と今後の展望についてお話しさせていただきます。
私は、株式会社279の起業に至るまで、介護現場やコンサルティングサービス、介護業務ソフトの開発会社と幅広い分野で経験を積んできました。
介護現場で初めて具体的な業務効率化に取り組んだのは、在宅介護支援センターに併設されていた特養のショートステイを担当していた時のことです。ショートステイでひとたびご利用者様の入所が決まると、様々な書類を作成するために、お名前やご住所、生年月日や性別などご利用者様の情報を何回も記載しなければいけません。めんどくさがり屋で字を書くのがとても苦手な私はこの仕事がとても苦痛でした。
そこで、「パソコンで入力をして、その入力データを選ぶだけで全ての書類が出来上がれば時間短縮にもなるし、汚い字で書く必要もない」と考えました。具体的には、ファイルメーカーというデータベースソフトを使って、自らショートステイの予約管理システムを作ることにしました。
このシステムを使って業務改善をした結果、予約受付からの処理はソフトに日付を登録するだけで、ほとんどの書類作成ができるようになりました。さらに全体的な業務改善が進んだ結果、月間稼働率をほぼ100%を維持することができ、返戻なども年間で数回という結果を出すことができました。
私にとってさらに大きな経験となったのは、ISOの取得に組織的に取り組んだことです。
みなさんは、ISO9001という認証をご存知ですか?簡単にいうと「ちゃんとした組織はこういう仕組みがあって品質が保たれている」という活動をしている組織を認証する制度です。
工場やサービス業などでは認証をとることがよくありますが、医療や介護においてもサービスの品質保証・向上のために取得する組織が一時期増えていました。私が所属していた法人グループでもISO9001の認証取得を目標として規定やマニュアルの整備を進めるにあたり、プロジェクトメンバーを務めさせていただくこととなりました。この経験によって、組織に必要な活動の種類や品質向上のための活動の基礎を学ぶことができました。実は、これがITやICTを使った生産性向上に大きく役立っています。
なぜなら、ISO取得では業務プロセスを「見える化」するか仮定があるからです。事故やヒヤリハットを整理し、助言を受けながら組織の業務プロセスを見直して改善していきます。その結果として生産性や品質の向上が実現するのです。この業務プロセスを見直す際に、デジタル技術を用いることがDX(デジタルトランスフォーメーション)のノウハウ取得に繋がります。とても良い経験をさせていただきました。
話は変わりますが、私は、介護支援専門員の資格を持っています。「ケアマネジメント」に初めて触れたのは、就職して初めての仕事である、在宅介護支援センターのソーシャルワーカーとしてでした。日本にケアマネジメントという言葉・手法が輸入され、広めなければいけないという時期に、在宅介護支援センターとしてケアマネジメントを地域で実践していました。その後、2000年に介護保険制度が施行され、今のケアマネジャーの仕事が確立してきました。ケアマネジャーの仕事は、正しくケアマネジメントを実施してご利用者様のニーズとサービスをリンケージ(繋げて)いくことです。介護保険が施行されると共に、介護の現場では一気にパソコンの利用が始まりました。あえて、パソコンの利用と書きますが、当時、インターネットはまだまだADSLで回線を引くのが一般的で、光回線が普及し始めてきた時期です。パソコンは使うが、まだインターネット技術はなかなか使われていない時代でした。インターネットは、単に「検索して調べる」ためのツールだった時代です。
それから時代が10年ほど経過し、2007年にiPhoneが登場、2010年にiPadが登場しました。これらのプロダクトを生み出したスティーブ・ジョブズが世界を変革したと言っても過言ではないでしょう。これによって時代が一気に変わりました。
このころ私は、”事務所に出勤して仕事をして、その後ご利用者様のご自宅にモニタリングや介護サービス調整のために訪問し、再び事務所で残務等を行い帰宅する”というケアマネジャーの働き方に疑問を持つようになっていました。「ITを活用すれば、事務所で行う仕事は出先で行うことができる。それならば出勤の必要もないのではないか」と思うようになったのです。
そして、同じ思いを持った仲間と、テレワークケアマネの事業所を立ち上げようと思い至ったのが、2021年のことです。奇しくも時代はコロナ禍に突入していく時でした。この頃にはITの役割も検索ツールに留まらず、テレワークができる技術が多数出現し、一般的に使われてました。
ITを上手に使って、お金をかけずにより良い介護へ」をVisionに掲げ、介護事業所に無料/低コストのITツールの普及活動を行っている非営利団体。所属メンバーの多くは、社会福祉法人や医療法人で勤務しており、本業の合間を縫ってタダカヨの非営利活動に励んでいる。介護従事者のための無料オンラインPCスクール「タダスク」、高齢者施設向け無料オンラインレク「タダレク」などを主催。