新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、介護事業でのICTの活用に注目が集まっています。第192回社保審・介護給付費分科会が11月9日に開かれ、運営基準や加算の要件等で求められている各種会議でのICTの活用や、文書の負担軽減について議論が行われました。
サービス担当者会議など運営基準において必要な会議や、加算の要件となる各種会議について、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、テレビ電話など、ICTを活用して会議を開催することを原則可能にするとの方向性が厚生労働省から示されました。
医療・介護の関係者間で実施する各種会議は、ICTの活用による開催を可能にし、利用者等が参加する会議などは、利用者や家族の同意を得ることを要件とし、可能にしてはどうかと提案しています。
また、リハマネ加算など居宅への訪問が要件となっているものは、訪問の重要性を十分考慮したうえで、ICTの活用について引き続き検討するとの方向性が示されました。
なお、ICTを活用した会議の実施においては、個人情報保護の観点から「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイドライン」や「医療情報システムの完全管理に関するガイドライン」等を参考にすることが求められています。
委員からは、利用者や家族にとっても負担軽減になるとして賛成の意見があった一方、テレビ電話での会議で対応可能な内容なのか疑問視する意見もありました。
多くの事業所の悩みとなっている各種文書の事務負担について、負担軽減のための具体的な方向性が厚労省から示されました。
①署名・押印
ケアプランや重要事項説明の同意を確認する際に必要な、利用者や家族の署名・押印を不要とする方針が示されました。「押印についてのQ&A(内閣府、法務省、経済産業省 2020年6月19日)」によると、メールやSNS上のやりとりの保存で、同意の立証を代替できるとしています。
現状、通所介護や通所リハ・訪問リハなどの計画書の様式例には署名欄がありますが、署名欄を様式例から削除する方針も示されました。
②従業員数の記載と変更届
行政に提出する運営規程や重要事項説明書に記載する従業員の員数について、「◯◯人以上」と記載することを認める方針が示されました。さらに、変更の届け出は年に1回で足りることを明確化するとしています。
③記録の保存
介護分野の運営基準で保存を義務づけられている記録について、電磁的な対応を認める方針です。記録の保存期間は、他の制度の取扱いも参考に明確化が図られます。
④重要事項の掲示
運営規程の概要や勤務体制など重要事項は「事業所の見やすい場所に掲示しなければならない」と規定されていますが、これを閲覧可能な形でファイル等で備え置くことなどを可能とする方針が示されました。
引用:第192回社会保障審議会介護給付費分科会「介護人材の確保・介護現場の革新」より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年11月12日掲載のものです。
ライター歴8年、介護業界取材歴5年。介護業界の経営者や現場責任者、介護関連施設への取材を重ねてきました。介護業界を支える皆さまの役に立つ情報発信を心がけています。