11月26日に開かれた第194回社保審・介護給付費分科会にて、2021年度の介護報酬改定に向けた具体的な論点と対応案が示されました。居宅介護支援に関しては、逓減制の適用を45件からとする具体案や、特定事業所加算の見直し、介護予防支援での新加算の創設などが議題となりました。
居宅介護支援事業所について、近年一貫して厳しい経営状況となっている実態が問題視されています。これに対し、適切なケアマネジメントの実施を確保しつつ経営状況の改善を図る目的で、報酬の逓減制(ケアマネージャー1人あたりの担当件数が40件を超えると報酬が半減、60件を超えると3分の1以下になる仕組み)を緩和する検討案が議論されてきました。
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本分科会ではこの検討案に対する数値基準として、逓減制が適用となる1人あたりの担当件数を「40件」から「45件」へと緩和する具体案が提示されました。その際、一定のICT活用または事務員の配置を算定要件とする方向性も示されました。
この検討案に複数の委員が概ね賛同したほか、日本医師会の江澤和彦氏は「ケアマネジメントの質の確保をぜひ推進してほしい。数の視点から質の視点への変化が求められている」と意見を述べました。
質の高いケアマネジメントの推進を図るという観点から、居宅介護支援における特定事業所加算の見直しについても議題となっています。2019年度の居宅介護支援事業所の収支差率はマイナス1.6%と、厳しい経営実態が伺えます。この点について厚労省は、特定事業所加算を取得した事業所の収支差率は比較的高い傾向にあると提示。一方で、小規模事業所の中には現行の配置要件を満たせないケースがある点にも焦点を当て、加算区分の設定と要件の拡充に関する検討案を示しました。
また、現行では上位加算Ⅰ~Ⅲと評価軸が異なる特定事業所加算Ⅳについては、名称を「医療介護連携体制強化加算(仮称)」と変更する見直し案も提示されています。
地域包括支援センターが行う介護予防支援のケアマネジメントは業務負担が大きいという実態を踏まえ、居宅介護支援事業所との連携による外部委託の推進が求められています。一方で、実際に委託された介護予防ケアプランは全体の47.7%に留まっています(2016年度実績)。
厚労省はこうした背景を受け、より外部委託を行いやすい環境整備を進めることを目的とし、委託時における居宅介護支援事業所との連携を評価する「委託連携加算(仮称)」の創設を提案しました。
高松市長の大西秀人氏は、厚労省からの具体案の提示に感謝を述べたうえで、「利用者に関する情報連携が効率的に行えるように、個人情報に配慮をしたうえで、ICT等の活用を踏まえた制度設計と環境整備を推進していただきたい」と提言しました。
これらの論点をもとに、12月の取りまとめに向けて、居宅介護支援の報酬改定の議論が進んでいます。
引用:第194回社保審・介護給付費分科会「居宅介護支援・介護予防支援の報酬・基準について」より
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。