こんにちは、藤田博之と申します。私は滋賀県大津市で福祉用具専門相談員として活動する傍ら、介護ITコンシェルジュとして地域の介護事業所のICT導入支援を行っています。また、NPO法人タダカヨで「お金のかからないIT」を普及させる活動に取り組み、無料オンラインPCスクール『タダスク』を運営しています。
活動を通じて感じるのは、ITの力が業務の効率化と介護職員の働きやすさを格段に向上させるということです。しかし、多くの介護事業所がどのツールを使えば良いのか迷っている現状もあります。そこで今回から、日々の業務に役立つ具体的なツールを紹介します。
第1回は、様々な場面で活用でき、しかも無料で使えるツールとしてGoogleレンズに焦点を当ててご紹介します。
Googleレンズとは、Google検索の画面の右側にあるカメラアイコンからアクセスできるツールで、スマホのカメラで撮影した画像やパソコンに保存されている画像から物やテキストの情報を認識し、瞬時に検索や翻訳、コピーなどができる強力なAIツールです。
介護現場では、Googleレンズを次のようなシーンで活用することができます。
何かを調べる際に、正確なキーワードが思い浮かばないことがあります。Googleレンズを活用すると、写真を撮るだけで迅速に情報を得ることができます。例えば、以下のシーンで役立ちます。
・事務用品の発注 事務所内で使用するボールペンやファイルなどの備品が足りなくなった時、Googleレンズで製品の写真を撮影すると、メーカーや型番、価格情報をすぐに確認できます。この方法で、類似品と比較しながら発注を行うことが容易になります。
・福祉用具や介護ロボットの使い方 新たに導入した福祉用具や介護ロボットの使用方法を調べたい場合に、Googleレンズで機器の写真を撮影し、オンラインで詳細な説明書や使用ガイドを探すことができます。その結果、介護職員が機器を正しく使用できるようになります。
・植物の名前の特定 目の前に美しく咲いている花の名前もGoogleレンズで調べることで、利用者との会話を広げることに役立ちます。
Googleレンズのもう一つの活用方法として、手書きのメモや紙の書類を撮影し、テキストデータとしてデジタル化をする方法があります。これにより、手動でのデータ入力の手間を省き、入力ミスを減らせます。介護現場では、次のような場面で効果を発揮します。
・薬のラベルの読み取り
薬のラベルを撮影し、その文字情報をデジタル化して申し送りに活用。薬の名称や服用方法、注意事項等をそのままデジタルで記録し、スタッフ間で共有することで、薬の誤投与を予防することができます。
・会議録のデジタル化
会議で配布された紙の議事録やメモをGoogleレンズで撮影し、テキストデータとして保存。この方法によって、手書きメモを再入力する手間が大幅に軽減されます。
・看護サマリーやケアに関する情報
利用者のケアに関する情報や看護サマリー等をGoogleレンズで撮影し、その内容を介護記録に直接貼り付けることができます。こうすることで、重要な情報が正確に記録され、スタッフ間の引き継ぎが円滑に行えるようになります。
技能実習生などの外国人材が介護現場で働く際、言語や文化の違いから生じるコミュニケーションの課題があります。Googleレンズは、こうした課題を解決するツールとしても活用できます。
・外国語のテキスト翻訳 日本語に不慣れな技能実習生が、施設内で使用される日本語の書類や掲示物を理解するのに役立ちます。Googleレンズを使って撮影したテキストを瞬時に翻訳することで、言語の壁を越えて適切な作業を実施できるようになります。
このように、Googleレンズは介護現場のさまざまな場面で効果的に活用でき、業務のスピードと精度を大幅に向上させるツールです。情報収集の迅速化に加え、介護業務の効率化やミスの削減にも貢献します。また、現場のデジタル化を推進し、コミュニケーションを円滑にすることで、業務の質をさらに高めるサポート役として期待できます。
ここでは、スマホアプリのGoogleレンズの基本的な使い方をご紹介します。
1.Googleアプリを開く スマホでGoogleアプリを開き検索ボックスの右側にあるカメラアイコン(Googleレンズのアイコン)をタップします。
2.画像を選択 カメラが起動したら、撮影したい対象に向けてシャッターを押します。または、端末内のギャラリーから既存の画像を選択することもできます。
3.画像の分析 Googleレンズが画像を読み込むと、自動的に画像内の情報を分析し始めます。(数秒で完了します。)
4.関連情報を開く 分析が完了すると、画像内の要素に対応する情報が表示されます。知りたい部分をタップすると、さらに詳細な情報が確認できます。画像の中にテキストが含まれていれば、「テキストを選択」が表示され、タップでコピーできます。
スマホのスクリーンショット機能を活用すると、さらに効率的にGoogleレンズを利用できます。
例えば、スマホ画面上に表示された専門用語などはスクリーンショットで撮影し、Googleレンズでその意味を調べることができます。
なお、Pixelシリーズなど一部のスマートフォンでは「かこって検索」という名称でGoogleレンズが更に便利に扱えます。
また、Googleアカウントでログインするとスマホで読み取ったテキストを「パソコンにコピー」することもできます。これにより、スマホで撮影したテキスト情報をパソコンに送り、作業をスムーズに進めることができます。
パソコンのGoogle Chromeを利用している場合、[Googleレンズで検索]のメニューもあり、スクリーンショット機能も搭載されていますのでパソコンの操作に不慣れな方も安心して活用できます。
今回ご紹介したGoogleレンズは、介護現場の業務効率化に大きな可能性を秘めています。紙の書類をデジタル化し、キーボード入力が苦手な職員でも簡単に記録を作成できるようになるなど、現場の負担を軽減した事例もあります。これにより、介護職員は利用者とのコミュニケーションや他の重要な業務により多くの時間を割くことができるようになります。
Googleレンズは、情報収集の迅速化やデータのデジタル化を通じて、介護現場の効率化とサービスの質の向上に貢献する強力なツールです。これを活用することで、介護の現場に新たな可能性が広がるでしょう。IT・ICT技術をうまく取り入れ、利用者にとってより良いケア環境を提供していくことが、これからの介護経営に求められる姿勢だと感じています。
ぜひ実際に試してみてください。
ITを上手に使って、お金をかけずにより良い介護へ」をVisionに掲げ、介護事業所に無料/低コストのITツールの普及活動を行っている非営利団体。所属メンバーの多くは、社会福祉法人や医療法人で勤務しており、本業の合間を縫ってタダカヨの非営利活動に励んでいる。介護従事者のための無料オンラインPCスクール「タダスク」、高齢者施設向け無料オンラインレク「タダレク」などを主催。