訪問介護事業では有効求人倍率が過去最高値となり、職員の高齢化も進むなど人材確保が事業継続する上での深刻な課題となっています。また、訪問先までの移動時間が長いためにサービス提供を断った事業所が存在するなど、特に中山間部などの地方では訪問介護の安定したサービス供給の基盤が揺らいでいることが伺えます。
7月24日の社会保障審議会・介護給付費分科会では地域性の違いを報酬体系に反映させる新たな枠組みの構築や長時間移動に対する金銭的な補償を求める声も目立ちました。
2024年度介護報酬改定に向け、人材不足への対応と地方でのサービス提供をどう考えるかは訪問介護の2大テーマといえそうです。
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本分科会では訪問系サービスの報酬体系が議題となり、厚生労働省は以下のサービス種別について意見を求めました。
ここからは訪問介護について、意見が集中したポイントを整理します。
厚労省が訪問介護について示した今回の「論点」は、「需要が増加する一方で、訪問介護員の不足感が強い状況である中、利用者の状態に応じて必要となるサービスを安定的に提供するために、どのような方策が考えられるか」です。
まず、訪問介護を安定的に提供するための重要な課題として、地域差を報酬上どのように扱うかに焦点となりつつあります。
厚労省はこの問題の検討にあたり、全国町村会による「地方分権改革に関する提案」(令和4年)を提示しました。中山間地域では利用者宅が点在し事業所からの移動距離や時間が長くなるため、「介護報酬における移動時間の取扱いの明確化、報酬の算定方法など既存の介護報酬単価の見直し等を求める」ものです。
(【画像】第220回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1より(以下・同様))
「地域によっては特別地域加算や中山間地域等における小規模時評所加算が該当しない例もある」などとして、米本正明委員(全国町村会行政委員会)は、地域の実情に応じた方策を求めました。
訪問介護の安定したサービス供給が揺らいでいることを伺わせるデータとして、この日、厚労省は、訪問介護事業者が「ケアマネから紹介のあった方へのサービス提供を断った理由」も紹介しています。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。