2024年度の介護報酬改定に向け、居宅介護支援の対応を巡っては検討項目が多岐に渡りそうです。
社会的な要請の広がりや高度化に応じる近年の施策には、主任ケアマネジャーの配置要件の設定などがあります。またヤングケアラーへの対応など、ケアマネジャーには新たな役割も期待されています。これに対し、適性な評価や研修受講のための負担軽減策が不十分であり、人材不足につながっているという認識は広がってきているようです。
4月から居宅介護支援事業所が指定を受けられることになった介護予防支援も併せ、最新の検討事項について詳しくお伝えします。
(※12月21日追記:2024年度介護報酬改定項目(居宅介護支援に関するもの)の決定版はこちらで紹介しています。)
7月24日の社会保障審議会・介護給付費分科会は、以下のサービスについて検討しました。
このうち、居宅介護支援・介護予防支援については、21年度の報酬改定で変更になった運用も多く、今回も分科会の委員らから多様な指摘や要望があがりました。
居宅介護支援介護及び介護予防支援を巡る検討事項として、厚労省が示した論点は以下の通りです。
今後、高齢者人口の更なる増加や現役世代の減少に伴う担い手不足が見込まれ、多様な利用者のニーズへの対応が求められる中、業務効率化等の取組による働く環境の改善等を図るとともに、ケアマネジメントの質を向上させていくために、どのような方策が考えられるか。
(※太字は編集部による)
また、この方策を話し合う前提として、21年度改定では「質の高いケアマネジメント」の推進を図る観点から
「業務効率化」などを推進するため、
を行ったことなどを"現状"として整理しています。
なお、法改正(全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律)によって、24年4月には居宅介護支援事業所も市町村から介護予防支援の指定を受けて同サービスを実施できるようになることが既に決まっています。
ここからは当日の分科会での検討の切り口を整理します。
特に多くの委員が指摘したのが、ケアマネジャーの不足についてです。
厚労省が示したデータでは、居宅介護支援事業所で働くケアマネジャーの人数は「横這い」であり、居宅介護支援事業所の数は近年減少傾向にあるものの、同省としては「事業所の大規模化の影響を受けたもの」と捉えていると説明されました。
(【画像】第200回社会保障審議会介護給付費分科会 資料6より。以下同様)
しかし、委員らはその立場を問わずケアマネジャー不足を課題と受け止めているという認識を示しました。
具体的な人材確保策としては、
などの要望があがりました。
22年度の調査によると、居宅介護支援事業所の管理者に主任ケアマネジャーを配置している事業所の割合は約80.8%です。21年3月末時点で管理者が主任ケアマネジャーでなかった事業所には、27年(令和9年)3月までの経過措置が認められています。
管理者を主任ケアマネジャーとする要件について、稲葉雅之委員(民間介護事業推進委員会代表委員)は、「主任ケアマネジャーの役割や業務と管理者の役割や業務とは必ずしも一致しているわけではない」と指摘しました。そこで、「管理業務負担の軽減を図るなど、主任ケアマネとしての力を発揮できるよう」、ICTを活用した業務効率化や労働環境の改善策を推進することを求めています。
また、田中志子委員(日本慢性期医療協会常任理事)は、主任ケアマネが確保できないために立ち上げや事業継続が困難となっている居宅介護支援事業所の存在を指摘。
主任ケアマネの要件に求められる法定研修の受講やケアマネジャーとしての勤務経験年数について見直す余地があると主張しました。
厚労省側も、主任ケアマネの要件については「設定の根拠に立ち戻りまして、検討させていただきたい」と応じました。
人材不足への対応策としても触れましたが、「質の向上」という観点からは、ケアマネジメントにおける情報連携や相談支援の範囲の拡大が求められています。
小林司委員(連合総合政策推進局生活福祉局長)は、第9期介護保険事業計画の基本指針に「ヤングケアラーなどの家族支援」が盛り込まれたことにより「ケアマネジャーの負担も増えていくことを想定されるわけで、これらに対して、介護報酬上何ができるのか」と新たな役割に見合った評価を求めています。
長内繁樹全国市長会(豊中市長)も、昨今のケアマネジャーに期待される役割の広がりを受け、「現場を疲弊させる」と懸念を表明。複合的な課題解決に取り込む支援体制の強化についても議論が必要と主張しました。
24年4月からは居宅介護支援事業所も、市町村から介護予防支援(介護予防ケアプランの作成等)について指定を受け、利用者と直接契約してサービス提供できるようになります。また、これと同時に、総合相談支援業務についても、地域包括支援センターが一部を居宅介護支援事業所に委託できるようになります。
古谷忠之委員(全国老人福祉施設協議会参与)はこの見直しについて、以下の検討を進めるよう要望しました。
改定で対応すべき事項として、医療機関との情報連携の更なる推進についても取り上げられています。
長崎県知事の代理として参加した寺原朋裕参考人は、同県の在宅医療関係らのネットワーク(あじさいネット)を広げる中で得た知見などを紹介。26年度(令和8年度)に整備される医療情報プラットフォームでも、介護現場が情報基盤を活用できるよう、「できるだけ現場の意識改革ICT化を進めることが重要」と指摘しています。
具体的な施策としては
に取り組むことを国に求めています。
また経団連の井上隆委員は、
などを求めました。
濵田和則委員(日本介護支援専門員協会副会長)は、医療機関との情報連携でICTが活用できるような環境整備を推進するほか、多職種が集まれない場合は、「一部職種は意見照会で良いとする」など、運用の簡素化などにも期待を示しました。
濵田委員は、ケアマネジャーの代表としての立場から21年度改定で見直しなどが行われた各項目についても意見を表明しました。
居宅介護支援を巡っては今回は議題となっていないものでも、LIFE関連の加算創設など、注目すべき論点が残っています。
介護経営ドットコムでは引き続き、報酬改定までの検討状況をお伝えしてまいります。
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