【2024年度介護報酬改定】入浴介助加算や個別機能訓練加算の見直しに向け検討│通所介護の個別論点まとめ

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社会保障審議会・介護給付費分科会では、2024年度介護報酬改定でのサービス別の対応について詳細の検討に入りました。デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護)では、厚生労働省が入浴介助加算の算定要件に、研修の受講を求めることなどを提案しています。これには委員からの反対意見もあり、まだどのように着地するかは見通せません。しかし、何らかの見直しが行われる可能性は大きそうです。

そのほか、個別機能訓練加算の見直しなどの論点とその検討状況についてお伝えします。

入浴介助加算(I)に研修要件を設けることなどを厚労省が提案

10月26日の会合では通所系サービスについて2回目の審議が行われました。

そのうち、通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護について、厚生労働省は以下の通り具体的な改定案を示しています。

入浴介助加算の見直し案 (対象サービス:通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護)

  • 入浴介助加算(Ⅰ)(40単位/日)の算定要件に入浴介助の技術を高めるための研修を組み込む。
  • 入浴介助加算(Ⅱ)(55単位/日)の算定要件について、
    • 利用者の居宅への訪問の頻度やタイミング、大浴槽での入浴介助などの扱い(これまでに疑義照会などが多い/Q&Aで示されている内容など)を明確にし、理解を促進する。

(【画像】第229回社会保障審議会・介護給付費分科会資料より(以下同様))

  • 利用者宅の浴室の環境評価・助言について、医師等(医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員その他の職種の者)からICT機器を活用して評価・助言を受けるなどして介護職員が訪問した場合も算定を認める。

(※入浴介助加算の要件等はこちら

個別機能訓練加算の見直し案 (対象サービス:通所介護・地域密着型通所介護)

  • 上位区分である個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ(85単位/日)について機能訓練指導員の配置要件緩和と適正化(単位減)を実施する。

通所系サービスにおける3%加算・規模区分特例の存置(対象サービス:通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護・通所リハビリテーション)

  • 感染症の蔓延や利用者が被災して通所介護等が利用困難となった場合に備え、3%加算や規模区分の特例を緊急時に対応できる加算として存置する。

(※個別機能訓練加算の要件等はこちら

豪雪地帯等に対する通所介護等の取扱いの明確化(対象サービス:通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護・通所リハビリテーション)

  • 利用者の急な体調不良等と同様に、積雪等のやむを得ない事情によって通所介護計画上の所要時間よりもサービス提供時間が短くなった場合は、「通所介護計画上の単位数を算定して差し支えない」ことを留意事項通知で明確化する。

厚労省の提案に対する委員の賛否

以下に各論点に沿って検討状況をまとめます。

入浴介助加算の見直しに対する意見

入浴介助加算に関して、(Ⅰ)の改定案には入浴介助の技術修練を促したいという厚労省の狙いがあります。これは(Ⅱ)を算定している事業所では研修を実施している事業所が多い傾向にあったことを踏まえたものです。

ただし、研修の受講は事業者や職員の負担を伴うため賛否は分かれています。

具体的には以下のような意見がありました。

  • 21年度改定によって、研修受講に対応するための施設や職員の負担は増えている。慎重な検討が必要。
  • 物価や燃料費の高騰、長時間の入浴介護に必要な労力を踏まえた単価アップが不可欠。
  • 研修要件自体には賛同するが、通所介護の利用者の状態像は中重度の方から認知症の方まで多様。リフト浴や機械浴等の設備の導入やメンテナンスに係る経費、人員体制確保のための経費など利用者の状態像に応じた対応も求められる。コストを勘案した単位設定を求める。
  • 研修を受講しやすいような配慮が必要。
  • 自立支援に資する入浴介護のスキル習得は重要。取り組みを推進してほしい。

一方、入浴介助加算(Ⅱ)は、21年度で創設された要件(”利用者宅の浴室環境の評価や整備”、”利用者宅の浴室環境を踏まえた入浴計画の作成”、”医師らとの連携”など)が算定のハードルとなっているのが現状です。そのため、厚労省の提案に対する賛否だけではなく、根本的な見直しを求める意見も複数ありました。

主なものに

  • 要件の明確化と簡素化を進めるべき。
  • 事業所の算定意向がないのは、医師等の確保・連携が困難という理由が大きい。この課題にアプローチできる検討を求める。
  • 利用者家族の立場からすると、そもそもの必要性が疑問。要介護者が居宅で入浴する場合は見守りが必要。
  • 利用者の身体状況や賃貸住宅など改修等が困難、経済的に環境改善が難しいなど自宅での入浴を行う環境とすることが困難と見られる場合の算定可否について明示してほしい。
  • 通所系サービスの中核は、在宅生活を送るための課題を克服することにあり、加算(Ⅱ)の創設趣旨は、自宅での入浴を可能にするためのものである。
    特に個浴介助には継続的な実現研修による技術の習得が不可欠。

といった意見がありました。

個別機能訓練加算の見直しに対する意見

個別機能訓練加算の見直し案は機能訓練指導員の配置時間要件を緩和する分、単価減を提案するものですが目立った反対意見は出ていません。

今回俎上に上っている上位区分(I)ロの算定率は通所介護で26.8%、地域密着型通所介護で12.6%と高くはないことも影響しているでしょう。

配置要件や専従要件の緩和については、

  • 機能訓練を受けた利用者への効果などを分析したうえでの検討が必要。
  • サービスの質の低下について懸念する。

などの見方も表明されています。

コロナ特例(3%加算・規模区分特例)の維持に関する指摘

感染症の流行や災害などによってサービス提供が難しい場合に備え、加算の枠組みを残すという方針で、これもめだった反対はありませんでした。

その上で、

  • 加算を存置する場合、緊急事態宣言がなされた場合など対象を明示的に限定すべき。それができない場合は、本分科会の了承を必要とするべき。
  • 客観的な基準を設け、対象となる感染症や災害を判断すべき。

といった指摘がされています。

豪雪地帯を含む特定の地域におけるサービス提供について

厚労省の提案そのものへの反対意見は出ていませんが、以下のような要望がありました。

  • 単位算定に関する取扱いの明確化だけでなく、中山間地域における特別地域加算等の充実などさらなる支援が必要。
  • 豪雪地帯などでは、通所系サービスにも特別地域加算と中山間地域における小規模事業所加算を適応させることで対応すべき。
  • 雪かきのための施設内人件費や除雪業者への支払いなど、経営概況調査上の支出から読み取れない負担もあるので、豪雪地帯の負担について独自の調査をしてはどうか。

大規模や共生型サービスの報酬アップなどを求める意見も

委員からは厚労省の提案以外にも、基本報酬のアップなどについて要望がありました。

以下が主な内容です。

  • 共生型サービスの普及に向けた検討(基本報酬の減算の取り扱いを見直すなど)を進めてほしい。
  • 他産業に遜色ない賃上げの水準や物価上昇に見合う大幅な基本報酬の増額を求める。
  • 中重度ケア体制加算と認知症加算について要件緩和と段階的な加算評価を求める。
  • 大規模型はより多くの方の状態像に対応する必要があり、利用者数が多いためにICT化や人員配置上のコストもかかっている。大規模ならではの資質にも考慮して、スケールメリットだけに着目して基本報酬を低く設定するのではなく見直してほしい。

厚労省の提案に挙がっていた入浴介助加算(I)(II)、個別機能訓練加算それぞれの要件の見直しなどは今後さらに詳細が詰められることになるでしょう。

そのほかの要望など、今後の動向についても進展があり次第お伝えしてまいります。

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