厚生労働省は2022年度から介護保険施設・事業者に対する指導や監査にまつわる指針やマニュアルを改正しています。このページでは、実地での指導に関する内容について変更になっている部分を整理します。
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介護保険制度が創設されて以来、介護サービス事業所や施設数は増加し続け、介護サービスの種類や各種加算等の制度が複雑化しています。また、高齢者の虐待件数も増加を続けているという社会的問題も存在しています。
こうした課題に行政として対応するため、国は自治体による指導(集団指導・実地指導)を効果的・効率的に実施し、基準違反や介護報酬請求の不正が疑われる場合には適時適切に監査を実施できるようにするため、指針などの変更を行いました。
改訂後の介護保険施設等指導指針では、実地指導について指導形態を以下の通り具体的に定めています。
【1】介護サービスの実施状況指導(個別サービスの質(施設・設備や利用者等に対するサービスの提供状況を含む)に関する指導) 【2】最低基準等運営体制指導(運営基準等に規定する運営体制に関する指導) 【3】報酬請求指導(加算等の介護報酬請求の適正実施に関する指導)
さらに、行政による指導の効率化を進めるため、施設・設備や利用者等の状況以外の「実地でなくても確認できる内容」である【2】と【3】については、情報セキュリティの確保を前提として、オンライン会議システム等の活用が可能であることも明記されました(ただし、自治体向けのマニュアルでは必要な設備の整備や確認文書の共有方法について介護保険施設等側の過度な負担とならないよう配慮し、オンラインでの実施を強制することのないよう、配慮を求めています)。
実地でなくても行政指導が実行できる要件を定めたのと同時に、実地指導という名称も22年度から「運営指導」に改められています。
運営指導の「効果的・効率的」な指導を推進するため、ローカルルールの是正も進められています。新しい指針では運営指導の標準化・効率化を推進するために、以下の内容が明記されました。
指針の変更点としては、以下のような内容も示されています。
この規定に関連して、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で自治体による実地指導の実施率が低調という実態があります。
厚労省の集計によると、2020年度の実地指導の実施実績は全国約30万1000カ所の介護事業所(20年4月1日現在)に対して、全国平均で6.9%でした。
そこで、厚労省は22年度以降は特に指定の有効期間内に1回も現地での指導を受けていない事業所に対して、積極的に運営指導を実施するよう全国の自治体に求めています。
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