2022年度からの介護現場での指導の変更点まとめ

2022.11.29
2022.11.29
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厚生労働省は2022年度から介護保険施設・事業者に対する指導や監査にまつわる指針やマニュアルを改正しています。このページでは、実地での指導に関する内容について変更になっている部分を整理します。

(関連記事:vol.1061介護保険施設等の指導監督について(通知)の送付について【22年3月通知改正対応】介護サービス事業所・施設の指導・監査とは?)

目次
    実地指導(現・運営指導)の指針が変更された背景
      実地指導から運営指導への名称変更とオンラインの活用
        運営指導の効率化についての記載
          運営指導の実施頻度の明記と推進

            実地指導(現・運営指導)の指針が変更された背景

            介護保険制度が創設されて以来、介護サービス事業所や施設数は増加し続け、介護サービスの種類や各種加算等の制度が複雑化しています。また、高齢者の虐待件数も増加を続けているという社会的問題も存在しています。

            こうした課題に行政として対応するため、国は自治体による指導(集団指導・実地指導)を効果的・効率的に実施し、基準違反や介護報酬請求の不正が疑われる場合には適時適切に監査を実施できるようにするため、指針などの変更を行いました。

            実地指導から運営指導への名称変更とオンラインの活用

            改訂後の介護保険施設等指導指針では、実地指導について指導形態を以下の通り具体的に定めています。

            【1】介護サービスの実施状況指導(個別サービスの質(施設・設備や利用者等に対するサービスの提供状況を含む)に関する指導)
            【2】最低基準等運営体制指導(運営基準等に規定する運営体制に関する指導)
            【3】報酬請求指導(加算等の介護報酬請求の適正実施に関する指導)

            さらに、行政による指導の効率化を進めるため、施設・設備や利用者等の状況以外の「実地でなくても確認できる内容」である【2】と【3】については、情報セキュリティの確保を前提として、オンライン会議システム等の活用が可能であることも明記されました(ただし、自治体向けのマニュアルでは必要な設備の整備や確認文書の共有方法について介護保険施設等側の過度な負担とならないよう配慮し、オンラインでの実施を強制することのないよう、配慮を求めています)。

            実地でなくても行政指導が実行できる要件を定めたのと同時に、実地指導という名称も22年度から「運営指導」に改められています。

            運営指導の効率化についての記載

            運営指導の「効果的・効率的」な指導を推進するため、ローカルルールの是正も進められています。新しい指針では運営指導の標準化・効率化を推進するために、以下の内容が明記されました。

            • 運営指導では「標準的」な確認項目と確認文書以外の項目は、特段の事情がない限り確認を行わない、確認文書以外の文書は原則求めない。
            • 確認項目を踏まえることで、1回の運営指導にかかる時間をできる限り短縮し、介護保険施設や事業所と自治体双方の負担軽減を図る
            • 同一所在地や近隣に所在する介護保険施設等に対する運営指導については、できるだけ同日または連続した日程で行うなどして効率化を図る。
            • 老人福祉法など介護保険法に関連する法律に基づく監査との合同実施については、自治体の担当部門間で調整を行い、 同日または連続した日程で行うことを一層推進する。
            • 運営指導において介護施設・事業所が準備する文書は、原則として、前年度から直近の実績に関するものとする。
            • 提出を求める資料や書類の写しなどは1部とし、自治体が既に保有している文書(新規指定時、指定更新時、変更時に提出されているものなど)は再提出を求めない。
            • 介護保険施設等において作成、保存等されている各種書面が電磁的記録により管理されている場合は、ディスプレイ上で内容を確認することとし、別途、印刷した書類等の準備や提出は求めない。
            • 利用者等へのサービスの質を確認するためにその記録等を確認する場合、原則として3名以内とする。※居宅介護支援事業所については、原則として介護支援専門員1人あたり 1名〜2名の利用者について記録等を確認する。

            運営指導の実施頻度の明記と推進

            指針の変更点としては、以下のような内容も示されています。

            • 運営指導の実施頻度は、原則、指定等の有効期間(6年)内に少なくとも1回以上とする。なお、施設サービス・居住系サービスについては、3年に1回以上の頻度で実施することが望ましいこととする。

            この規定に関連して、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で自治体による実地指導の実施率が低調という実態があります。

            厚労省の集計によると、2020年度の実地指導の実施実績は全国約30万1000カ所の介護事業所(20年4月1日現在)に対して、全国平均で6.9%でした。

            そこで、厚労省は22年度以降は特に指定の有効期間内に1回も現地での指導を受けていない事業所に対して、積極的に運営指導を実施するよう全国の自治体に求めています。

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