介護事業所は、常に介護事故の危険と隣り合わせです。人が生活する場所ですから、それはある意味当然です。
介護事故の中には、必要な注意を尽くしていたにもかかわらず、発生してしまったものもありますが、介護事業所側に「過失」が認められる事故もあります。その場合、介護事業所は、利用者に生じた損害を賠償する必要があります。そして、通常は、介護事業所では、法律の専門知識を有していない管理者や施設長が、事故後の対応を担当することになります。中には、「いざという時のために賠償責任保険に加入しているから、対応は保険会社に任せておけば良いのだろう」と考える人がいますが、これは大きな勘違いです。
以下、介護施設側に過失が認められる場合の賠償対応について詳しく解説しますので、管理者や施設長等、事故対応の窓口を担当される方は是非チェックしてください。
<相談内容>
私は特別養護老人ホームの施設長です。
去年、利用者(男性)が特養の2階の非常階段から誤って足を滑らし、階段の踊り場まで転げ落ちるという事故が発生しました。この利用者は認知症を患っており、施設から出ていこうとする離設行動が頻繁に見られており、非常階段から出ていこうとする姿も何度か目撃されていました。
施設内では、職員に対し、「非常階段を開けっ放しにしないように」と注意喚起を行っていたのですが、職員が清掃作業を行う際に、非常階段の扉にストッパーをかけ、開けたままの状態にしており、職員が目を離した隙に利用者が非常階段から出て行ってしまったようです。
利用者は足を骨折する重傷を負い、現在、入院中です。
介護事故後の流れを確認しましょう。
①利用者の救護措置を迅速に行う ②ご家族へ速やかに事故報告を行う ③事故報告書を作成し、行政へ報告を行う ④保険会社へ速やかに事故報告を行う
※重大事故発生時は警察が現場に捜査に来ることがありますが、本稿では警察対応は紙面の都合上割愛します。
という流れです。
本来は、もっと細かく対応すべきことがあるのですが、あくまで全体の流れのイメージを掴んで頂くための概括的な記載にしています。
特に重要な場面は、②です。ご家族に対しては、速やかに事故報告を行うことが大切です。
弁護士法人かなめ代表弁護士。29歳で法律事務所を設立。 現在、大阪、東京、福岡に事務所を構える。顧問サービス『かなめねっと』は35都道府県に普及中。 福祉特化型弁護士。特化している分野は、介護事業所・障害事業所・幼保事業所に対するリーガルサポート、労働トラブル対応、行政対応、経営者支援。 無料で誰も学べる環境を作るためYouTubeチャンネル『弁護士法人かなめ - 公式YouTubeチャンネル』を運営中。https://www.youtube.com/@kaname-law テキストで学びたい人向けに法律メディアサイト『かなめ介護研究会』も運営中。 https://kaname-law.com/care-media/