介護事業所にとって、若年スタッフの採用は大きな課題です。こうした状況の中で「ヤングケアラー」のような若い頃からご家族等の介護に関わる方の課題とスキルに着目し、活躍の場を提供している事例があります。
今月は、若年層のケアラーの雇用について考えてみましょう。
介護業界で若年人材の採用が困難な状況にあるのはなぜでしょうか。
それには、給与水準の低さや肉体的・精神的な負担の大きさ、予測できない緊急対応が頻繁に求められることなどによるプレッシャーの高さなどが考えられるでしょう。
加えて、キャリアパスの不透明さも若年層の定着を阻む要因です。若年層は一般的に自己成長の機会やキャリアの進展を求めますが、介護業界では昇進やスキルアップへの機会創出が道半ばです。
前提として、介護事業所が若者にとって魅力的な職場となるには、給与の改善、労働環境の整備、そしてキャリアパスの明示が必要です。
また、介護事業所の採用手法としては、主に求人広告や紹介制度がありますが、これらの手法では十分な人材確保が難しくなってきています。
このような状況下で人材不足の短期的な解決を急ぐあまり、適切な選考ができずにミスマッチが発生するケースも多く発生しています。結果、採用した人が短期間で辞職してしまうという悪循環に陥っているのが多くの事業所の現状といえます。
現状を打破するには、新しいアプローチが必要です。
ここで着目したいのが若年層ケアラーの可能性についてです。
日本ケアラー連盟の定義によると、「ヤングケアラー」とは、18歳未満の若者で、家庭内で日常的に介護を行う人々を指します。また、18歳から30歳代までの「若者ケアラー」も同様に、進学や就職、仕事と介護の両立といった課題を抱えています。
若者ケアラーは、家庭内での介護に従事してきたことで、自然と介護のスキルや責任感を育んでいます。言い換えると、介護現場で即戦力として活躍できる人材である可能性が高いです。また、彼らは利用者への共感力が強く、思いやりや傾聴力といった介護に必要なソフトスキルを持ち合わせていることも多いといえます。
このような人材の活躍の場が提供できれば、介護事業所は即戦力を確保しつつ、社会的意義のある取り組みも実践できるでしょう。
採用のアプローチについては、従来の手法でアピールするだけでなく地域の口コミ、スタッフや利用者からの情報が大切となります。 ケアラーを支援する団体との接点を創出するなど、まずは彼らがどこにいるかを知り、接点を持ちたいところです。
ケアラーを採用して活躍してもらうためには、いくつかのポイントがあります。
Office SUGIYAMA グループ代表。採用定着士、特定社会保険労務士、行政書士。1967年愛知県岡崎市生まれ。勤務先の倒産を機に宮崎県で創業。20名近くのスタッフを有し、採用定着から退職マネジメントに至るまで、日本各地の人事を一気通貫にサポートする。HRテックを精力的に推進し、クライアントのDX化支援に強みを持つ。著書は『「労務管理」の実務がまるごとわかる本(日本実業出版)』『新採用戦略ハンドブック(労働新聞社)』など