令和6年介護報酬改定審議は、第一ラウンドの審議を終え、業界団体がそれぞれ5―10分程度のスピーチを行う業界団体ヒヤリングというイベントが終了した。今、第二ラウンドの介護報酬改定審議に移行している。第一ラウンドの審議では、各サービスの論点が出揃った。しかし、具体的な改定の方向性は、2巡目に持ち越された印象が強い。今週から始まった定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護についての審議では、近い将来の統合に向け、両サービスの一体的実施についての議論が始まったところだ。
今回は、これから2巡目に入る検討にあたり在宅サービスに関する注目ポイントをみていきたい。
令和6年度改定は6年に一度の、医療、介護、障害のトリプル改定となる。
3年弱続いたコロナ禍の影響や、ウクライナ戦争を起因とした物価高騰など、経営環境が悪化していることから、プラス改定を望む声が増している。問題は、国の政策の中心が少子化対策に大きく舵を取ったことだ。現内閣の重要政策である「異次元の少子化対策」での3.5兆円の財源確保には、社会保障費用の抑制が不可欠とも言われている。すなわち、今後の財政予算の動向に令和6年度介護報酬改定が委ねられているのだ。そして、その結論はまだ見通せない。
現実的には、過去2回と同様に1%に届かないプラス改定となることを予想している。
たとえプラス改定となったとしても、介護職員処遇改善3加算の一本化と加算率の引き上げ、さらには居宅介護支援事業所への処遇改善加算創設の可能性がある中で、これらの増額部分もプラスの改定率と見なされる。そのため、実質的にはマイナス改定となる可能性も高いだろう。
さらに、事業者にとって見過ごせないもう一つの不確定要素が、自己負担2割の対象者の引き上げである。この可否も大きく影響するだろう。
小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護については、第9期介護事業計画においても、国の重点化サービスである。今回の審議においても、その普及促進策が重要な論点となっている。
また、令和6年度介護保険法において、看護小規模多機能型が機能訓練の場であることが明記された。今後は、機能訓練関連の加算や算定要件の強化が期待される。しかし、小多機と看多機は介護厚生労働省の最重点サービスとして位置づけられているに関わらず、未だに経営が安定しない状況が続いているのも現実だ。その原因のひとつが施設ケアマネジャーの存在とされる。
居宅介護支援事業所のケアマネジャーが利用者を多機能型サービスに紹介する場合、結果として自らの利用者を手放す事になる。そのため、ケアマネジャーは紹介多機能サービスを紹介しづらい構造になっている。
過去の介護報酬改定審議においても、多機能型のケアマネジメントを居宅介護支援事業所に移すことが論点になったが、その結論は出ていない。管理不能となるからだ。未だに多機能型は、“使い放題のサービスである”というイメージが強い。しかし、その契約定員は29人であり、通いサービスの定員は18人が上限となっている。
仮に、多機能型のケアマネジメントを居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担うこととした場合、29人全員が毎日通いサービスを使うケアプランを立ててしまったら、定員18人の通いサービスはパンクしてしまう。
しかし、今回の審議においてもケアマネジメントを居宅介護支援事業所へ移行するよう求める声が多い。
小濱介護経営事務所 代表。一般社団法人日本介護経営研究協会専務理事。一般社団法人介護経営研究会 専務理事。一般社団法人介護事業援護会理事。C-MAS 介護事業経営研究会最高顧問。