2021年度の介護報酬改定の効果検証を行うための調査研究事業によって、介護施設や事業所の科学的介護情報システム(LIFE)の活用状況が明らかになりました。2021年6月時点で科学的介護推進体制加算などの関連加算を算定している施設や事業所の半数以上が、LIFEの導入前後で利用者のアセスメントに「変化があった」と回答するなど、広範囲で影響が伺えます。
3月7日の社会保障審議会介護給付費分科会介護報酬改定検証・研究委員会では、2021年秋季に実施した2021年(令和3年)度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査結果の概要案について評価しました。
なお、同様の趣旨の調査は22年度と23年度にも行われます。これらに先立って21年に実施された調査項目は下記の4つです。
(1)介護医療院におけるサービス提供実態等 (2)LIFE を活用した取組状況の把握および訪問系サービス・居宅介護支援事業所におけるLIFE の利用可能性の検証 (3)文書負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減 (4) 福祉用具貸与価格の適正化
(2)のうち、LIFEを活用した取り組み状況を把握するための調査では、「LIFE登録済み事業所」(21年6月に科学的介護推進体制加算等のLIFEに関連した加算算定があった事業所。回答数2,170事業所)と「LIFE未登録事業所」(21年6月に科学的介護推進体制加算等のLIFEに関連した加算算定がなかった事業所。1,128事業所)にそれぞれアンケートやヒアリングを実施しました。
この調査では、特にリハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養等の多職種連携といった取り組み状況を把握し、さらなるLIFEの活用に向けた課題を洗い出すことが目的とされています。
まず、LIFE登録済み事業所の回答について主なものを見てみましょう。
「LIFEを活用することで役に立った点」としては、「LIFEに利用者のデータを入力し管理することで、利用者の状態や課題を把握しやすくなった」(34.8%)が最も多く、LIFEの活用によって「利用者アセスメントの頻度が統一された」(23.9%)「利用者アセスメントの方法が統一された」(23.3%)なども比較的多くなっています(複数回答)。
【画像】第24回社会保障審議会介護給付費分科会介護報酬改定検証・研究委員会(2022年3月7日開催)資料より(以下同様)
LIFEへの登録状況では、60人以上の利用者を登録している事業所・施設が27.0%を占めていました。また、6割を超える事業所で全利用者のデータを登録しています(定員数に対するデータ登録者の割合が100%)。
LIFEへのデータ登録状況のほかに、LIFE活用にかかった時間についても回答が集まっています(2021年9月分データ提出分)。かかった時間を施設単位で集計すると、アセスメントに最も多くの時間が割かれ(平均14.6時間)、記録ソフトへのデータ入力にも平均12.5時間かかっていました。
さらに、LIFEの活用において重要なのはデータの入力や提出ではなく、そのデータを活用してPDCAサイクルを回し、ケアの向上を図ることです。
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この点、LIFEの活用に伴う議論の実施状況や多職種連携の状況を見ると、既存の委員会で議論した事業所・施設が18.6%、委員会等の組織体以外で議論した事業所・施設が16.9%ありました。こうした事業所・施設では、利用者の状態像の変化(53.7%)や状態像を踏まえたケア内容・実施方法等(49.8%)について、議論や検討が行われています。
さらに、今後のLIFEを「活用できそうと感じる」取り組み内容として、4割以上の施設・事業所が多職種間や介護支援専門員との情報共有、他職種での会議体での情報共有を挙げるなど前向きな姿勢も伺えます。
利用者のアセスメントにおいても、LIFE導入前後で変化が「あった」と回答した事業所・施設は50.1%ありました。 ADL評価や、行動・心理症状・意欲など幅広い評価項目でアセスメントの実施割合が増加している点は、着目すべき成果といえそうです。
LIFE未登録事業所の状況からは、事業所側の体制整備などの課題が読み取れます。
まず、LIFE未登録事業所のうち、80.9%の事業所・施設はデータ分析を「実施したことがない」と回答。利用者・家族等へのフィードバックについても、79.0%の事業所・施設が「実施したことがない」と回答しています。
未登録事業所の今後のLIFE活用意向は、「活用したい(アカウント申請済み)」「活用したい(アカウント申請予定)」 を合わせると67.5%に上りました。
一方で、 「活用したいと思わない」と回答した事業所・施設は32.5%で、その理由は、「データ入力する職員の負担が大きい」(63.8%)が最も多くなっていました。
調査結果案の内容は、今後開かれる社会保障審議会介護給付費分科会でも改めて議論され、2024年度介護報酬改定に向けた検討課題を示す資料として扱われます。
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