ケアチームの「つながり」に実感をもたらす情報システムはどこにあるか│やさしい手・香取幹

2020.12.26
2024.09.12
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医療と介護の”つながり”は新しいサービスをつくりだしていく

介護の現場では、利用者の世代交代とともに求められるものが変化しています。それに伴い、利用者が求めるものを実現する仕組み「地域包括ケアシステム」の深化も推進されています。

この深化は、医療と看護と介護の機能的な融合によってその「つながり」をも深化させます。

「つながり」の深化は、業務をスムーズに進め、生産性を高め、働きの成果を拡大し、その成果として給与水準の上昇という効果をもたらすものです。介護分野で働く一人ひとりにメリットがあります。

また、地域でサービスを受ける利用者は、「つながり」すなわち、医療と看護と介護の機能的かつ、有機的な融合により、いままでにはない新たな付加価値を享受することができてきているのです。

医療・介護の職員らは利用者のニーズの理解とそれに対する適合をします。ニーズに従って迅速に供給がなされます。また、「つながり」の中でそれぞれのサービスが適切に同期し、そして、根拠に基づいた説明責任が果たされ、さらに安心してサービスを受けることができるのです。

その新たな付加価値は、実は情報システムを媒介として供給されています。

新しい付加価値をもたらすシステムは、クラウドシステムとして、ウェブを介して供給されています。

新型コロナウィルス感染症の拡大と対策を気づきのきっかけとして、情報システムを媒介とした、人と人の密接な関連と、その関連による、医学的、あるいは生活上の成果が見えてきています。

情報システムの利用は、その未来は、医療施設、介護施設、高齢者住宅、そして患者の自宅の垣根を越えて、成果を拡大しながら発展する可能性があります。

ICTによる多職種連携、在宅医療と介護の連携

最近の介護の現場では、情報システムを通じて、ケアチームのメンバー一人ひとりに利用者の最新情報を常に供給しています。

訪問看護も訪問介護も居宅介護支援も、みんな同じ情報を共有しサービス提供ができてきています。在宅医師の情報は、訪問看護師を通じてケアチームに申し送ります。

訪問介護員も、サービス提供責任者も、訪問看護師も、介護支援専門員も、通所介護職員も在宅医療の医師もみんな、利用者の情報を共有し、その情報を見つめ、同様に心配をして、どのように在宅生活支援を行うべきか、考えています。

このことにより、ケアチームを構成するすべてのメンバーが、詳細な利用者情報を知る立場になります。医師の診療方針や看護師の申し送りが、すべての介護職員に共有され、その情報にそってサービスが展開されていく。スマートフォンやタブレットなどの情報端末を通じてその情報が供給されていくのです。これは、メンバー一人ひとりのコミュニケーションを促進させて、「利用者一人ひとりをどのように支えたいのか」、共感の空間ができあがり、メンバー同士の相互作用により、学習支援の効果を発揮していきます。

ICTを介したコミュニケーションを重ねることにより、「つながり」形成されていくのです。

ICTの活用は生産性の向上に寄与する。

ICTの活用により発生した「つながり」は、さらに組織もそれに適合して進化していきます。

PC、スマートフォン、タブレットによって、すべての職員が高度な情報を獲得し相互に関連しあっていることから、必然的にケアチームの組織構造は、有機的組織となっていきます。フラットな関係性からコミュニケーションに基づいて、すべての介護職員が情報と知識を得て、一人ひとりの利用者に、連携したサービスを混乱することなく提供することを実現していきます。

ピラミッド型のヒエラルキー構造では、コミュニケーションと情報交換に大きなコストと時間を消費してきました。一つの行動を行うためにも、確認とお伺いの費用と時間をかけて進めることが必要ですが、これまでかかっていたこの費用と時間が削減され、部門間の同期がなされます。

今まで必要としてきた手続きが削減されていくことにより、生産性が飛躍的に高まっていきます。

コミュニケーションを提供する情報システムによって供給される「つながり」は組織の生産性の向上に大きく貢献することがわかってきたのです。

フラットな組織構造

また、情報システムによって、日々情報の交換を行ってきている参画メンバーの行動規則が明確になってきます。日々の活動の秩序と日々の活動の成果が保証されている環境が提供されます。保証されている環境によって参画メンバーの安心と増していきます。

成果を明確に定義されているメンバーは、安心を基盤として活動の速度を向上させていきます。

さらに、フラットな組織構造に基づいて、一人ひとりの構成メンバーが地域の評価と成果の獲得を重ねていきます。

活動環境が保証され、メンバー一人ひとりの活躍が強化されていきます。

組織への信頼感が増強され、人材の定着率も飛躍的に向上します。

情報システムによって供給される「つながり」は、組織のへの信頼に貢献をしていきます。

規模の経済の獲得

情報システムを活用したコミュニケーションを通じた、高度な利用者情報と「支え方に関する共感」は、フラットな組織構造をもたらし、有機的に活動します。

さらに、組織の構成員は、利用者の状況を、情報システムを通じて把握する能力が高まります。組織内の利用者情報、患者情報にもとづいた活動方針が明確になります。

コミュニケーションの速度が向上するとともに、情報獲得の速度、意思決定の速度、活動の速度が速まり、1行為ごとのサービスの質が高まります。

サービスの質の高まりに応じて、1組織がまかなう利用者の数を増加させることができます。たとえば、これまで、利用者50人が管理限界であった一つのケアチームが、利用者が75人になっても、同様の品質で活動ができるようになるなどの効果が表れます。

つまり、情報システムを前提とした「つながり」は、拠点の利用者数の管理限界を引き上げて、1拠点あたりの規模の経済(スケールメリット)を拡大するのです。

ICT活用は利用者本位のサービス提供と従業員のやりがいに関連する。

経験の浅い介護職員には、医師看護師、ケアマネジャー、家族、介護職員らから提供された情報供給が行われることにより、より具体的な活動の支援が行われます。

サービス提供では、緊急度に応じて区分された情報が供給され、優先順位が明確となった活動の指示がなされます。

アセスメントと個別援助計画のPDCAサイクルは、情報システムの端末を自由に閲覧して情報として供給される。仮に経験年数の浅い介護職員であっても、端末を駆使して情報を活用し、在宅生活継続の関与度を向上させ、利用者に在宅生活継続の価値をもたらしていきます。このような経験は、短い期間に反復しておこなわれていくのです。

そして、この介護職員は、成長の実感や専門性の確保、利用者本位の仕事観が醸成されていきます。

まさに、情報システムによって供給された「つながり」は、人材の育成に大きな効果をもたらしているのです。

人と人のコミュニケーションを中心においた情報システム「ICT」を活用することにより、働く人、利用者に「つながり」をもたらし、「つながり」は、在宅医療と看護の連携により、医学的な効果を発揮している。また、「つながり」は、看護と介護の適切な連携を生み、利用者の在宅生活継続に効果をもたらしていることがわかってきたのです。

医療・看護・介護の情報システムに基づいた連携の試みは、病棟内でも進み始めています。

この試みが成功したあかつきには、病棟、在宅医療、在宅介護の垣根がより低くなり、医療と介護の連続性を保つサービス提供が可能となります。

このサービスの連続性は、入院患者、在宅の患者に、多くの利益をもたらすようになることが考えられます。

いま、病棟においても、在宅においても、活動する多職種が適切に関連を保ちながら、情報と知識を提供してサービスの実行を支援するシステムが不可欠になりつつあります。

そのシステムは、さらに人々の「つながり」を意識したデザインにどんどん変化を遂げていくのではないかと考えます。そして、「つながり」を意識した、新しい職業「介護職員」は、やりがいのある職業として社会に見直されていく必要があると考えます。

介護を経営する私たち、介護サービスを提供する私たちには、いま、この「つながり」の実感をもたらす体制を整備し、ケアチームにドライブをかけていくことが求められているのです。

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