10月の賃上げ改定、介護職員等特定処遇改善加算の枠組み引き継ぐ形で審議報告へ

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社会保障審議会・介護給付費分科会は2月7日、2022年10月の臨時介護報酬改定で実施する処遇改善(介護職員等特定処遇改善加算(仮称)の創設)について協議しました。これまで具体策を議論してきた内容に沿って、「審議報告」をまとめます。
期中改定であることなどから、2月から運用が始まっている「介護職員処遇改善補助金」の仕組みを基本的に引き継ぐものとすることなどを正式に認めます。

2022年10月臨時介護報酬での対応についての見解が明文化

介護給付費分科会の総意としてまとめられる審議報告では、介護職員等特定処遇改善加算(仮)の創設について、以下の枠組みで実施することを示します。

(1)加算の対象(取得要件)
・ 加算対象のサービス種類は、これまでの介護職員処遇改善加算等と同様のサービス種類とする。
・一定のキャリアパスや研修体制の構築、職場環境等の改善が行われることを担保し、これらの取組を一層推進するため、介護職員等特定処遇改善加算と同様、現行の介護職員処遇改善加算(I)から(III)までを取得している事業所を対象とする。
・加算額の3分の2以上はベースアップ等(「基本給」又は「毎月決まって支払われる手当」)の引上げに用いる。
(2)加算率の設定
・ サービス種類ごとの加算率は、介護職員処遇改善加算と同様、それぞれのサービス種類ごとの介護職員の数に応じて設定する。
(3)事業所内における配分方法
・事業所の判断により、介護職員以外の職員の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう、柔軟な運用を認める。事業所内の配分方法に制限は設けない。

*関連記事:10月の臨時改定に向け検討開始、厚労省は新たな処遇改善加算の創設を提案

賃上げの在り方については、分科会の委員からもこれまで指摘や懸念事項、一部反対意見などが表明されています。しかし、10〜3月までの対応についての見解は今回で概ねまとめられることとなりました。

なお、検討における付随意見としては、現時点で以下の内容が明文化されています。

▽これまで処遇改善の対象となっていないサービス種類・職種についても、これらのサービス種類・職種における担い手不足や賃金の実態等を踏まえ、加算の対象とすべき。
▽サービス種類ごとに加算率を設定することにより給付額を算出する場合、介護職員を平均よりも手厚く配置している事業所において、介護職員一人当たりの給付額が相対的に低くなることや、加算を取得しない事業所の介護職員が対象とならないことから、各事業所の介護職員の配置数に応じて給付額が決まる仕組みとすべき。

特に、介護職員の手厚い配置については、業務効率化や社会保障費の抑制策とも対にあるものして論じられがちです。経団連が、テクノロジーの活用の推進を通じて介護施設の人員基準を見直すよう主張したことなどが大きく報道されていますが、こうした周辺の動きを含め、制度がどのような方向に改正されていくのか注目すべき事項です。

審議報告に盛り込まれた指摘は、2024年度介護報酬改定に向けた検討事項として扱われることが考えられます。今回厚労省が示した「案」の段階では示されていませんが、これまで実施されてきた処遇改善を含む制度や仕組み・事務手続きの簡素化、財源の在り方についての見直しといった論点も、持ち越されています。

審議報告案の表現や記載事項については、修文の要望なども出ていますが、スケジュールの関係上、田中滋座長と厚労省事務局で必要な対応を協議し、委員らが確認の上、厚労省が公表する予定です。

介護職員処遇改善支援補助金巡り混乱も、自治体から国による事業者への制度説明要望

介護職員を中心とした新たな賃上げに関連して、介護報酬改定に先行して導入されている介護職員処遇改善支援補助金についても、現時点では混乱が起こっています。

厚労省は、2月1日に事業者からの問い合わせを受け付けるコールセンターを設置しました。また、このタイミングで事業者へ制度を周知する資料や補助金の申請に必要な様式も示しています。

しかし、黒岩祐治・神奈川県知事の代理で7日の会合に出席した水町参考人は、県の窓口には事業者から「コールセンターに電話がつながらない」「制度の詳細部分について、コールセンターから県に聞いて欲しいと言われた」といった返答が寄せられていると訴えました。

その上で厚労省に対し、コールセンターの回線を増設することと、制度に関する問い合わせはコールセンターで対応するよう求めました。

さらに県で実施する申請書の審査をサポートするため、コールセンターに寄せられた質問への回答を都道府県に提供することも要望しています。

同補助金についてはこれまでに、介護事業所での賃上げの先行実施とその報告を行うこととするスケジュールが示されていますが、自治体では情報不足によって詳細を明示できず苦慮している様子が伺えます。

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【参考画像】自治体では申請手続きについて詳細を示せていない(兵庫県のウェブサイトから抜粋/22年2月8日にアクセス)

第207回社会保障審議会介護給付費分科会資料掲載ページ
*関連記事:介護職員処遇改善支援補助金に関するQ&Aを発出、厚労省

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