このコラム(連載)は、高齢者社会ラボによる『介護の質の評価に関する調査』(アセスメント編、ケアプラン~モニタリング編・以下「本調査」)の結果をもとに、そのなかで私が「気になるポイント」を示しながら、介護支援専門員(以下「ケアマネジャー」)のみなさんの実務に役立つ情報提供や論考を行うものです。
今回(第2回目)は、兼ねてからケアマネジャーに対して指摘され続けている「医療・介護連携」について、あらためて考えてみたいと思います。
本調査の結果で、私が最も気になったポイントは、「アセスメントにおける分析時の連携相手」(図1)と「サービス担当者会議の参加者」(図2)で、医師などの医療関係者とケアマネジャーの連携体制が極めて弱いことが示されていることです。
(図1)
(図2)
前者では、「医師」と「ほぼ毎回連携している」という回答は22.3%にとどまり、「看護師」と「ほぼ毎回連携している」という回答も25.9%に過ぎません。その他の選択肢である福祉系専門職との連携の状況と比べると、かなりの低率となっています。
また、後者では、担当者会議の参加者について、「医師」が「ほとんど参加していない」「全く参加していない」という回答は、合わせて80%を超えています。また、「栄養指導員」についての同様の回答も、合わせて80%近くなっています。
さらに、本調査と並行して行われた『介護の質の評価に関するインタビュー調査』では、担当者会議の実施において困難に感じていることとして、複数のケアマネジャーから「日程調整が困難」という悩みの訴えがあったほか、あるケアマネジャーからは「医師がこちらで調整した時間の担当者会議に必ずしも出席してくれるわけではない」という問題点も示されています。
これらの結果からは、ケアマネジャーが医療分野の専門職との連携をうまく図れていないことが示唆されていると言ってよいでしょう。利用者(要介護高齢者等)の大多数は医療的なニーズも抱えながら日々暮らしていますから、その暮らしを支援する使命を背負ったケアマネジャーにとって、このことは大きな問題点だと指摘できます。
一方、別の全国規模の調査(※注1)によると、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが保有する資格(複数回答)は、介護福祉士が約72.0%、社会福祉士が約14.6%など、福祉分野に軸足を置いているケアマネジャーが多数であることが示されています。つまり、身体面・精神心理面・社会環境面の複合的な視点からアセスメントやケアプラン作成を行う必要のあるケアマネジメントにおいて、必ずしも身体機能や精神機能に関する専門性が高くない福祉系専門職がケアマネジャーの実務を多く担っている実態にあるわけです。この意味では、医療専門職との連携が自分自身の知識や技術を補完するうえでも欠かせないはずです。そのことは、たとえば利用者の医療的リスクを見逃さないようにするといった点にも役立ちます。
高齢者分野における医療・介護連携は、1980年代の老人保健制度の時代から積年の課題となっています。一朝一夕に解決する問題でもありません。なによりも、介護・福祉専門職にとっては、医療機関や医療専門職の「敷居の高さ」を感じることも多いでしょう。
しかし、近年は「患者の生活を支えるには介護専門職やケアマネジャーとの連携が重要」「自分も介護専門職に伝えたいことがある」と考えている医師や医療専門職が増えています。特に訪問診療医や訪問看護師はそのような場合が多く、もはやケアマネジャーがさほどに「敷居の高さ」を感じる必要はない、と私は考えています。
どうしても医師との連携や入退院時の調整を図ることが難しいような場合には、ほとんどの市町村で実施されている「在宅医療・介護連携に関する相談支援窓口」(地域支援事業の一環である在宅医療・介護連携推進事業による取り組みのひとつ)にケアマネジャーが相談する、という方法もあります。また、大規模な医療機関には地域連携室などといった退院調整の部署が設置されているケースも多く、医療ソーシャルワーカーなどに連絡を入れることで調整を図ることができることも少なくありません。
ただし、これに関して一点だけ厳しい指摘をしておきたいと思います。私は、各地の市町村からの依頼を受けて、「ケアプラン点検」の業務にあたったり「地域ケア個別会議」のアドバイザーを務めたりする機会が多くあります。そこでいつも気になっていることは、サービス担当者会議の記録などを見ると、医師の意見の照会すらしていないケースが多いという点です。多忙な医師が担当者会議に出席できないこと自体はケアマネジャーの責任ではありませんが、医師の専門的な見地からの意見の照会(文書やメールなど)すらしていないという事態は、ケアマネジャーの不手際・不作為というだけでなく、法令(運営基準)にも抵触することとなります。「敷居の高さ」「苦手意識」がそうさせているのかも知れませんが、それを言い訳にせず、適切な対応を行うようにして欲しいと思います。
前述した調査(※注2)によると、ケアマネジャーにとっての業務プロセスの負担感を尋ねた設問(多肢選択・複数回答)では、居宅介護支援において最も多かった回答は、23項目の選択肢のうちで「医療機関・主治医との連絡・調整」(56.3%)でした。それほど医療・介護連携は負担の大きい業務なのだということがわかります。
しかし一方、医師や医療専門職との連携によって、利用者の病状や予後に関する情報は入手できるようになりますし、医学的な面から生活上の留意事項・禁忌事項や適切な機能訓練や福祉用具等の利活用の方法も、ケアマネジャーが理解できるようになります。なによりも、利用者の医療的リスクを理解することで、心身機能の悪化を防ぎ、入院・入所を防ぐこともできるようになるはずです。
このような「利用者本位」という観点からも、医療・介護連携に関するケアマネジャーの努力を期待したいと思います。
1) 『居宅介護支援事業所及び介護支援専門員の業務等の実態に関する調査研究事業報告書』p24,三菱総合研究所,2019
2) 同掲p145
社会福祉士、介護支援専門員。1986年から社会福祉・医療分野での相談援助の実践に従事。医療ソーシャルワーカーや居宅介護支援事業所での介護支援専門員の実務経験を経て、2005年から東洋大学で福祉専門職養成教育と介護保険制度・ケアマネジメント等の研究に従事。現在、東洋大学福祉社会デザイン学部教授。