第194回社保審・介護給付費分科会が11月26日に開かれ、2021年度の介護報酬改定に向けた具体的な論点と対応案が示されました。通所介護を対象としたADL維持等加算では、対象サービス・算定要件の見直しに関する具体案や、通所サービスにおける口腔機能のスクリーニングを評価する検討案などの提案があり、議論が進みました。
2018年の介護報酬改定で新設されたADL維持等加算について、現行では通所介護および地域密着型通所介護が対象となっており、対象サービスを拡大する検討案が議論されてきました。また、要件が複雑である点や、評価開始時点のADLを考慮しきれていない等の現行の課題も論点となり、より適切なアウトカム評価と運用に向けた見直し案が検討されています。
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これまでの議論を踏まえ厚労省は、ADL維持等加算の見直しに関する具体案を提示しました。加算の対象となるサービスを認知症対応型通所介護、特定施設入所者生活介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設にも拡大することや、「5時間以上」というサービス提供時間の要件の廃止、CHASEを用いて利用者のADL値を提出し、フィードバックを受けることを求めることなどが、見直し案として盛り込まれています。
また、通所リハ・訪問リハを併用している利用者については、リハ提供事業所と連携をしてサービスを実施している場合に限ってADL維持等加算に係る計算式の対象とすることや、要介護度が3以上である利用者が15%以上という現行要件を緩和することなども、見直し案として組み込まれました。
前回までの議論では賛否が分かれる意見が多かった本論点ですが、今回の分科会では目立った反対意見は聞かれませんでした。そんな中、全国老人福祉施設協議会の小泉立志氏は、要件緩和に賛同したうえで、「(サービスによって)ADLの改善だけを目指すのが難しい場合もある。状態の維持が評価されるべき取り組みもあるため、ADL利得の考え方についてはその点に配慮してほしい」と意見を述べました。
第191回分科会にて、通所サービス事業所の介護職員も実施可能な口腔機能スクリーニングの取組を推進する方向性が提示されています。
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これを受け、厚労省は本分科会にて、介護職員が実施可能な口腔機能スクリーニングの取り組みを加算として評価する方針を示しました。また、当該スクリーニングを栄養スクリーニング加算の取り組みと併せて提供する方向性を提案しました。
これに対し、日本歯科医師会の小玉剛氏は大いに賛成すると述べたうえで、「栄養スクリーニングと併せての実施ではなく、口腔スクリーニング単独でも実施できるよう要望する。また、現行の栄養スクリーニング加算の単位数は極めて低い。現場の負担に応じた評価をしてほしい」と提言しました。
委員から特に反対意見はなく、12月の取りまとめに向けて、検討案の方向で議論が進んでいく見込みです。
引用:第194回社保審・介護給付費分科会「自立支援・重度化防止の推進」より
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。