第191回社保審・介護給付費分科会が11月5日に開かれ、ADL維持等加算に関する論点と検討案が提示されました。通所介護事業所以外のサービスへの対象拡大や算定要件の簡略化などの方針が示されましたが、委員からの意見は賛否両論。介護報酬改定に向け、議論の余地を残す展開となりました。
委員からの意見が集中したのは、ADL維持等加算の取得率についてです。2018年の介護報酬改定で新設された当該加算ですが、算定事業所数は1年間で1.5倍に増加しているものの数が少なく、算定率は2.38%に留まっています。
ADL維持等加算を届出しない理由に関する調査結果によると、「要介護度3~5の利用者割合が算定要件(15%以上)を満たさない」が47.4%、「Barthel Index(以下、BI)を用いた評価負担が大きい」が43.3%を占めています。
また、初月のBI値が高いと6月目のBI値が低くなるなど、初月のBI値が影響している点も着目され、現行の要件では対応しきれていない課題点に対する適切なアウトカム評価の必要性も検討されました。
通所介護事業所以外のサービスへ対象を拡大する検討案について、全国健康保険協会の安藤伸樹氏は「通所リハなど他のサービスへ拡大していく方向には賛成。そのうえでADL維持等加算におけるADL利得が要件としてしっかりと機能するよう見直すことが必要」と意見を述べました。
一方で、全国老人福祉施設協議会の小泉立志氏は「当面は取得率のアップを目指すべき。算定率拡大のためには要件の緩和と単位数の見直しが必要。まずは通所系サービスを中心にADL維持等加算を浸透させ、そのうえで居住系サービスに広げていくなどの段階的な拡大が望ましい」と提言。他の委員からも、まず算定率をあげることに注力すべきではとの意見が複数あがりました。
本分科会での意見を踏まえて、対象サービス範囲や算定要件の簡略化、適切なアウトカム評価の見直し等に向けた検討が進められていくと思われます。
引用:第191回社保審・介護給付費分科会「自立支援・重度化防止の推進(検討の方向性)」より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年11月10日掲載のものです。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。