11月5日に開かれた第191回社保審・介護給付費分科会にて、通所系サービス利用者の口腔機能や栄養ケアマネジメントへの取組が議題にあがりました。介護職員によるスクリーニングの取組や管理栄養士との連携など、介護報酬改定に向けた今後の検討案が示されました。
厚労省が示した資料によると、口腔機能向上加算を算定している通所介護事業所は12.2%に留まっています。算定していない理由として「口腔機能向上加算が必要な利用者の把握が難しい」「必要性について利用者(家族)の同意を得ることが難しい(歯科専門職がいないのでうまく説明できない)」「算定を支援してくれる歯科医療機関がない」との意見が上位を占めています。
また、歯科医師による口腔内評価において、通所サービス利用者のうち歯科受診の必要性ありと診断された割合は59.1%にのぼります。要介護者の調査結果でも、歯科医療や口腔健康管理が必要な高齢者が64.3%であるのに対し、過去1年以内に歯科を受診した割合は2.4%に留まっています。
こうした背景を受け、通所サービス利用者の口腔機能低下を早期に確認し、口腔機能の低下予防や維持につなげる観点から、介護職員も実施可能な口腔機能スクリーニングの取組を推進する検討案が示されました。
本論点について日本歯科医師会の小玉剛氏は、口腔状態を簡便にスクリーニングするサービスの新設には賛成としたうえで、「スクリーニング実施後の流れや道筋をわかりやすく示してほしい。必要な社会資源や行政との連携など、スクリーニング後の処置が円滑につながる体制の整備が必要」と意見を述べました。
通所サービスにおける栄養状態の調査結果について、低栄養状態(BMI18.5未満)の利用者がいる事業所は、通所リハで33.9%、通所介護で18.9%を占めています。一方で、利用者のBMIを把握していない事業所が半数以上を占めるという調査結果が示されました。
厚労省はこうした背景を受け、栄養改善が必要な利用者を的確に把握したうえで適切なサービスにつなげる観点から、管理栄養士や介護職員の連携による栄養ケア・マネジメントを推進する検討案を提示しました。さらに、居宅訪問を含めた栄養ケアが重度化防止につながるという観点から、管理栄養士による居宅を訪問しての栄養改善サービスを推進する方向性も示しました。
これらの検討案に対して目立った反対意見はなかったものの、管理栄養士の人員確保を懸念する声が多数あがりました。配置要件の緩和や兼務範囲の検討などを含め、今後も議論が進められていく見込みです。
引用:第191回社保審・介護給付費分科会「自立支援・重度化防止の推進(検討の方向性)」より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年11月10日掲載のものです。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。