介護事業所で”スキマバイト”や”スポットワーカー”を活用するコツ【特定社労士が解説】

2024.09.03
2024.09.03
会員限定
ホームニュース専門家コラム介護事業所で”スキ…

先日、オフィススギヤマが関与している介護事業者様が、”スキマバイト”や”スポットワーカー”のような臨時雇用のマッチングサービスを活用して、スタッフ不足を補う取り組みをしていました。この介護事業所はもともと、さまざまな新しいチャレンジにも積極的で、今回のサービス活用もその一環です。

スポットでの雇用やそのマッチングサービスについては、「専門職の集まりである介護事業所で活用することは困難ではないか」という考えがあります。しかし、私は工夫次第で十分対応できると考えています。

スタッフ不足で悩んでいる事業所にはぜひ、今回のコラムを読んでいただき、選択肢として検討いただきたいと思います。

目次
    1.介護業界でも注目が集まる”スキマバイト”や”スポットワーカー”
      2.スポット労働者の受け入れは業務の切り分けが鍵
        3.業務切り分けの具体的な手順とスポットワーカーが働きやすい環境づくり
        4.スポットワーカー活用における労務管理のポイント
        5.長期的な人材戦略としてのスポット雇用サービスの活用方法と事例
        6.スポット雇用サービスの効果的な活用は有効な人材戦略に

        1.介護業界でも注目が集まる”スキマバイト”や”スポットワーカー”

        深刻な介護業界の人手不足。少子高齢社会という構造的な要因があるため、すぐには改善が見込めません。職員の確保は事業運営の継続において最も重要な課題となっており、そのための新たな手段として先述したようなスポット雇用サービスが注目されています。

        これは、短期間や単発で働きたい人と、急な人手不足に対応したい事業者をマッチングするサービスです。介護事業所では急な欠員があっても繁忙期であっても、サービスに穴を開けることなく運営を続けることが可能になります。

        2.スポット労働者の受け入れは業務の切り分けが鍵

        介護事業所でこうしたサービスを活用する際に最も重要となるのが、専門職が担うべき業務と非専門職が担う業務を明確に切り分けることです。これは、サービスの質を維持しつつ、効率的な人材活用を行うための基盤となります。

        専門職業務は、介護福祉士や看護師などの専門資格を持つ職員が担当すべき業務です。これには、利用者の身体介護、医療ケア、緊急時の対応など、専門知識や技能が必要な業務が含まれます。これらの業務は、利用者の生命や健康に直接関わるため、経験の浅いスポット雇用者に任せることはリスクが伴います。

        一方で非専門職業務は、資格や特別な訓練を必要とせず、短期間のトレーニングで対応可能な業務です。これには、施設内の清掃、食事の配膳、備品の管理、レクリエーションのサポートなどが含まれます。これらの業務をスポットで働く労働者に任せることで、専門職が利用者のケアに集中する環境を整えることができます。まさに、非専門職業務を切り出し、スポット雇用者に担当してもらうことが今回のポイントとなります。

        3.業務切り分けの具体的な手順とスポットワーカーが働きやすい環境づくり

        業務の切り分け方には、さまざまな方法があると思います。それぞれの事業所の業態、組織に合った方法で実施していただければよいでしょう。以下は、事例としてご紹介します。

        (1) 業務のマッピングと分類

        まず、事業所内の全業務をリストアップし、各業務について専門職の対応が求められる内容かどうかを評価します。このプロセスを通じて、業務を「専門職が担当すべき業務」と「非専門職でも担当可能な業務」に分類します。たとえば、利用者の入浴介助や服薬管理は専門職が担当すべき業務に分類できますが、食事の配膳や清掃業務は非専門職に任せることができます。

        ※記事の最後で業務リストのフォーム例をプレゼントしていますので、必要な方はお申し込みください。

        (2) スポット雇用者専用マニュアルと業務手順の整備

        スポットで配属される労働者が効率的に業務を遂行できるよう、わかり易く、短時間で理解できるマニュアルや業務手順書を整備します。

        このマニュアルは文字だけでなく、画像や図解を活用し、一目で理解できるようにしましょう。

        これを準備することにより、スポット雇用者が短期間で業務に慣れ、一定の品質でサービスを提供できるようになります。

        また、業務の標準化を進めることで、誰が担当してもスムーズに業務が進む環境を作り出すことが可能です。

        (3) 研修と教育の実施

        非専門職業務を担当するスポットの労働者には、就業前に必要最低限の研修を行います。この研修では、基本的な介護業務の知識や、利用者とのコミュニケーション方法、施設内のルールなどを学びます。これにより、利用者とのトラブルを防ぎ、安心して業務に取り組めるようになります。

        スポットで働く労働者を受け入れる際に有効な準備やツールとしては次のようなものも考えられます。

        • ポスターや標識の設置

        介護事業所内の要所に「安全第一」や「ここに注意」といったポスターや標識を設置します。目立つ場所に配置することで、安全意識を高める効果があります。

        • クイックリファレンスカード

        ポケットに入るサイズの「クイックリファレンスカード」を作成し、いつでも業務チェックができるようにします。

        4.スポットワーカー活用における労務管理のポイント

        スポットで働く労働者の労務管理について、注意が必要なポイントを解説します。

        (1) 労働契約の明確化

        スポット雇用者に対しても労働契約を明確にし、契約書に業務内容や労働条件を詳細に記載することが重要です。

        残り2668文字
        この資料は会員限定コンテンツです。
        会員情報をご登録いただくと、
        介護業界の経営支援に役立つ限定公開記事をお読みいただけます。
        業界ニュースや
        専門家記事が
        無料で読み放題
        加算も取得できる
        研修動画が
        無料で見放題
        業務で使う
        各種帳票が
        無料ダウンロード
        関連記事
        介護経営ドットコム編集部
        2024.09.10
        2024年度末までに介護事業者で対応が必要な「経営情報の報告」とは?【ニュース解説】
        #サービス共通 #リスク管理
        畑山浩俊
        2024.08.16
        借金がある生活困窮者は介護施設に入れるか?―ケアマネジャーからの法律相談
        #リスク管理 #居宅介護支援 #施設系サービス
        大月えり奈
        2024.08.14
        介護業界の人手不足が続くも離職率改善 働きやすさを叶える環境作りがカギ
        #人材採用/定着 #サービス共通