2024年度介護報酬改定では、訪問介護や定期巡回・随時対応型訪問介護看護など一部のサービスの基本報酬がマイナスとなった。この2つのサービスは、11月に公表された介護事業経営実態調査においてそれぞれ、7.8%、11%と非常に高い収支差率が示されていたため、ある程度のマイナスは想定できた。
居宅介護支援も4.9%と決して低くは無い収支差率だったので、全体の改定率(0.61%)を超えたことは評価出来る。その分岐点となったのは、賃金アップの考え方である。訪問介護は介護職員だけで構成されるため、介護職員等処遇改善加算もすべてが介護職員の賃上げにまわる。しかし、居宅介護支援には処遇改善加算は存在しない。
居宅介護支援は在宅サービスでは最も大幅な0.9%弱の基本報酬アップだった。しかし、介護職員等処遇改善加算の対象ではないために、事業者は経営努力の中でケアマネジャーの賃上げを実施する必要がある。国も実際に、“引き上げた基本報酬を処遇改善に充てて欲しい”という考えを示している。こうした対応まで視野に入れると、かなり厳しい改定率である。
逓減制が緩和されて担当件数が44件となったことも、収入の増加分をケアマネジャーの処遇改善の原資とする意図がある事は間違いないだろう。もちろん、賃上げは義務では無い。しかし、圧倒的なケアマネジャー不足を勘案すると、その処遇改善は急務であり、大きな経営課題である。
また、既存加算の算定要件の多くも変更となった。新たに同一建物減算も創設され、激変の改定となっている。
居宅介護支援では、ターミナルケアマネジメント加算の対象疾患に制限がなくなった。これまでは末期ガンのみだったので算定対象が大きく拡大したことになる。
同時に特定事業所医療連携加算の算定要件において、ターミナルケアマネジメント加算の算定回数が、これまでの5回以上から、15回以上と一気にハードルが上がった。いくら対象疾患が緩和されたとは言え、年間15回の算定は非常に厳しいと言える。特に、小規模事業者の算定は確実に困難となった。
もともと、ターミナルケアマネジメント加算の算定要件である“死亡日及びその前後数日の居宅訪問”は現実的には厳しい算定要件だ。看取り期に入った利用者のケアプランの見直しは、ほとんど必要無い。ただ静かに旅立ちを見守るだけである。居宅訪問の理由が無く、死亡日に訪問する理由も示しにくい。そもそも、死亡日は家族も多忙で、ケアマネジャーの訪問は歓迎されない。
年に15回の加算算定は、ケアマネジャーの在籍人数が多い大規模事業所でない限りは難しい。とは言え、ターミナルケアマネジメント加算は400単位、特定事業所医療連携加算は 月125単位である。可能な限り、死亡日の訪問を出来る体制を仕組みとして構築して算定を目指すべきである。
今回改定は、6年に一度の医療と介護の同時改定だ。その趣旨から、情報連携に関連する加算にも変更が加えられた。入院時情報連携加算はこれまで、情報提供期日が3日以内(200単位)と7日以内(100単位)であったものを、当日中(Ⅰ、250単位)と3日以内(Ⅱ、200単位)に短縮された。7日も経ったらすでに病院は準備を終えている、つまり、情報提供のタイミングとしては遅すぎることがその理由である。
小濱介護経営事務所 代表。一般社団法人日本介護経営研究協会専務理事。一般社団法人介護経営研究会 専務理事。一般社団法人介護事業援護会理事。C-MAS 介護事業経営研究会最高顧問。