2022年10月から「産後パパ育休」開始で社会保険料の計算が複雑に

2022.08.26
2022.08.26
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事業者に広く関わる法改正に、育児・介護休業法があります。
2022年10月に始まる新制度と事業者に必ず覚えていただきたい対応について解説します。

目次
    1.改正育児・介護休業法は段階的に施行
    2.育児期間中の社会保険料免除の仕組み 
    3.育児休業中の休業と就労の考え方

    1.改正育児・介護休業法は段階的に施行

    法改正の内容

    今回の育児・介護休業法改正の目的は、出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにするためとされています。

    具体的には、2022年4月1日から、育児・介護休業法が3段階で施行されます。

    1段階目は、22年4月1日より、次の2つの措置の義務化取得要件の緩和が行われています。

    【1】育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
    以下のうちからいずれか一つ以上の措置を講じる義務

    • 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
    • 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
    • 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
    • 自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
    【2】妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置 
    育児休業制度等に関する以下の事項の周知と休業の取得意向の確認を個別に行う義務

    周知事項
    • 育児休業・産後パパ育休に関する制度
    • 育児休業・産後パパ育休の申し出先
    • 育児休業給付に関すること
    • 労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

    個別周知・意向確認の方法

    • 面談    ※オンライン面談も可能
    • 書面交付 
    • FAX    ※労働者が希望したときのみ可能
    • 電子メール ※労働者が希望したときのみ可能
    【3】有期雇用労働者が育児休業・介護休業を取得できる取得要件の緩和
    有期雇用労働者のうち引き続き雇用された期間が1年以上の者は、育児休業も介護休業も取得できるようになります。

    2段階目は、直前に迫る22年10月1日より、新たに産後パパ育休が創設されます。また、現状では育児休業の分割取得は原則としてできませんが、分割取得が可能となります。

    3段階目は、23年4月から、従業員数1,000人超の企業に対して、育児休業等の取得状況を、年に1回公表することが義務付けられます。

    産後パパ育休(出生時育児休業制度)はこれまでとは全く違う制度

    ここからは、22年10月1日に適用される内容にフォーカスします。前述の通り、育児休業制度の内容が改正され、新たに始まるのが、産後パパ育休(出生時育児休業制度)です。

    産後パパ育休とは、育児休業とは別に子の出生後8週間以内に4週間まで出生時育児休業(産後パパ育休)の権利を保障するものです。

    厚生労働省が提供している産後パパ育休と育児休業の概要比較資料を見れば、産後パパ育休がこれまでの育児休業とは全く別物であることが容易に理解できます。休業中の就業の可否については、産後パパ育休と育児休業では全く異なりますから、労務管理上で特に注意が必要です。

    産後パパ育休(R4.10.1 ~) 

    育休とは別に取得可能

    育児休業制度

    (R4.10.1 ~)

    育児休業制度

    (~R4.9.30)

    対象期間

    取得可能日数

    子の出生後8週間以内に

    4週間まで取得可能

    原則子が1歳

    (最長2歳)まで

    原則子が1歳

    (最長2歳)まで

    申出期限 原則休業の2週間前まで 原則1か月前まで 原則1か月前まで
    分割取得 分割して2回取得可能

    (初めにまとめて申し出ることが必要)

    分割して2回取得可能

    (取得の際にそれぞれ申出)

    原則分割不可
    休業中の就業 労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能 原則就業不可 原則就業不可
    1歳以降の延長 育休開始日を柔軟化 育休開始日は1歳、

    1歳半の時点に限定

    1歳以降の再取得 特別な事情がある場合

    に限り再取得可能

    再取得不可

    出典:厚生労働省 育児・介護休業法の改正について より

    https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000851662.pdf

    2.育児期間中の社会保険料免除の仕組み 

    育児休業等期間中の社会保険料の免除とは?

    育児休業等期間中の社会保険料の免除とは、被保険者から育児休業または育児休業に準ずる休業を取得することの申し出があった場合に事業主からの届出により、育児休業の開始日の属する月から終了日の翌日が属する月の前月までの社会保険料が免除となる制度です。

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