厚生労働省は、2022年度に介護職員の賃上げを目的として導入された介護職員処遇改善支援補助金と介護職員等ベースアップ等支援加算(以下・ベースアップ等加算)の影響などを調べる調査を12月に実施します。
ここで得られたデータは、24年度介護報酬改定の検討内容にも影響します。また、この加算以降の新たな職員らの賃上げについて、検討が続けられる意向が政府にあることなどが一部で報道されており、加算の算定有無による事業所間の給与格差は広がっていくかもしれません。
*関連記事:介護職員等ベースアップ等支援加算と処遇改善加算、特定処遇改善加算の違いを比較
介護職員らの処遇改善を目的とした加算は現在、「介護職員処遇改善加算」(以下・処遇改善加算)と「介護職員等特定処遇改善加算」(以下・特定加算)があり、10月からはこれに、ベースアップ等加算が加わります。※このほか原則として、4月までに補助金を申請した事業所では、9月までの期間もベースアップ等加算算定事業所と同額程度の賃上げが実施されています。
厚労省は、ベースアップ等加算や介護職員処遇改善支援補助金の影響を、既存の2加算や介護職員らの給与などの状況と併せて評価するための調査を年末に実施します。
この調査の結果は2023年春の社会保障審議会・介護給付費分科会で報告される予定です。
*参考:7月14日開催の社会保障審議会・介護給付費分科会介護事業経営調査委員会資料
直近の状況として、既存の2加算の最新の算定状況(21年9月末時点)を見ておくと、処遇改善加算を算定している施設・事業所は9割を超えており((I)(II)(III)のいずれかを算定している割合)、特定加算は7割以上の施設・事業所が算定していました((I)(II)のいずれかを算定している場合)。
【画像】22年4月7日社会保障審議会・介護給付費分科会資料より
また、参考までに、介護事業所の各加算の算定状況と、そこで働く職員の職種ごとの平均給与額の関係をみると、以下のようになっています。
介護職員 32万3,190円(前年比7,780円増) 看護職員 37万1,340円(前年比6,730円増) 生活相談員・支援相談員 34万4,790円(前年比 8,420円増) 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士または機能訓練指導員 35万1,110円(前年比 8,840円増) 介護支援専門員 35万6,310円(前年比8,240円増)
介護職員 31万6,610円(前年比7,380円増) 看護職員 36万9,210円(前年比6,410円増) 生活相談員・支援相談員 33万8,370円(前年比8,250円増) 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士または機能訓練指導員 35万80円(前年比8,300円増) 介護支援専門員 35万3,560円(前年比7,660円増)
※いずれも21年9月末時点の常勤職員。金額は月給 ※特定加算は(I)(II)のいずれかを取得している事業所 ※処遇改善加算は(I)~(V)のいずれかを取得している事業所
*関連記事:通所介護・訪問介護の1割超が”昇給の仕組み”未整備
先述した過去の調査では、処遇改善加算の最上位区分である(I)を取得ができていない事業所に対してその理由が確認されています。具体的には、「職種間・事業所間の賃金のバランスがとれなくなることが懸念されるため」や「昇給の仕組みを設けるための事務作業が煩雑であるため」などが挙げられていました。
しかし、介護職員の給与については、労働組合などが他産業と比較しても見劣りしないレベルになるまで、継続して引き上げるよう求めています。また、介護や障害福祉職員らの賃金について検討している政府の専門委員会(公的価格評価検討委員会)も、「人手不足の解消等に向けて、今回の措置(介護職員処遇改善支援補助金)の結果も踏まえつつ、更なる処遇の改善に取り組むべき」と指摘しています。
こうした状況から、24年度介護報酬改定に向けて、さらに介護職員らの処遇改善が図られるような仕組みの新設が検討される可能性があります。
これまでの賃上げの経緯を踏まえると、既存の加算算定を阻んでいる要因を各施設・事業所でクリアできるかどうかによって、介護職員らの待遇格差は広がっていくことになるでしょう。
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