健康経営とは、企業が従業員の健康を大切にし、それを経営の中心に置く考え方です。従業員の健康を守り、向上させるためのさまざまな取り組みを行うことを指します。これにより、従業員が元気で働きやすい環境を作ることができ、企業全体の生産性や業績も向上すると考えられています。
経済産業省は、健康経営の重要性を認識し、企業が健康経営に取り組むことを支援しています。具体的には、「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」という名前で、健康経営に優れた企業を選定し、それを公表することで、他の企業にも健康経営を推進するよう促しています。
健康経営の実践によって、企業は次の3つのメリットを享受できます。
1 従業員の健康:従業員が健康であれば、病気で休むことが少なくなり、長く働くことができます。また、健康な状態であれば、仕事の効率も上がり、より良い成果を出すことができます。
2 企業のイメージ向上:健康経営を行っている企業は、社会的にも高く評価されます。これにより、優秀な人材を引き寄せることができるだけでなく、顧客からの信頼も得られやすくなります。
3 経済的メリット:従業員が健康であれば、医療費の削減や生産性の向上など、経済的なメリットも得られます。
従業員の健康が企業にどのようなメリットをもたらすのか、次の3つの視点で具体的に解説します。
〇身体的健康面 エネルギーレベル: 健康な状態では、体内のエネルギー代謝が適切に機能し、疲れにくくなります。これにより、長時間の作業でも集中力を保つことができます。
免疫力: 健康な体は病気になりにくく、もし病気になっても回復が早くなります。こうした状態が保てていれば休む日数が減少し、連続して働くことができます。
〇精神的健康面 ストレスの低減: 健康な状態では、ストレス耐性が高まり、仕事中の小さなトラブルやプレッシャーに対しても冷静に対応できます。
集中力: 心の健康が保たれていると、集中力が増し、タスクに取り組む際の効率が向上します。
意欲・モチベーション: 身体的・精神的に健康であると、自分の仕事に対する意欲やモチベーションが高まり、より質の高い成果を出す動機付けが強くなります。
〇社会的健康面 コミュニケーション: 健康な状態の人は、他者とのコミュニケーションがスムーズになり、チームでの作業効率や協力の質が向上します。
周囲へのポジティブな影響: 健康な従業員は、周りの人々にもポジティブな影響を与え、全体の雰囲気やチームの生産性を向上させることができます。
上記のメカニズムにより、健康な状態である従業員は、仕事の効率を上げ、より良い成果を出すことができると考えられています。
一方で、不健康な従業員の存在が、介護事業所にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
職場の健康や生産性に関連する2つの重要な概念である、「プレゼンティーズム」と「アブセンティーズム」を解説します。
〇プレゼンティーズム(presenteeism) プレゼンティーズムは、従業員が体調やメンタルの不調にもかかわらず、職場に出勤し続ける現象を指します。
プレゼンティーズムが発生すると、介護事業所に次のような影響を与えます。
①業務の質の低下: 不調のまま出勤することで、業務の効率や質が低下する可能性が高まります。
②ミスの増加: 体調不良や集中力の低下により、ミスが増えるリスクが高まります。
③感染症の拡大: 体調不良で出勤することで、感染症などの病気を他のスタッフや利用者に伝播するリスクが増加します。
④職場の雰囲気の悪化: プレゼンティーズムが常態化すると、職場の雰囲気やチームの連携が悪化する可能性があります。
〇アブセンティーズム(absenteeism) アブセンティーズムは、従業員が病気や私事などの理由で職場を欠勤する現象を指します。
アブセンティーズムが発生すると、介護事業所に次のような影響を与えます。
①業務の遅延: スタッフが欠勤することで、業務が滞るリスクが高まります。
②他のスタッフへの負担増: 欠勤したスタッフの業務を他のスタッフが補完する必要が出てきます。これにより、他のスタッフの負担が増加します。
③サービスの質の低下: スタッフが不足することで、利用者へのサービスの質が低下する可能性があります。
④経済的損失: 長期的な欠勤や頻繁な欠勤により、代替要員の確保や社会保険料の負担などの経済的な損失が生じる可能性があります。
介護事業所においては、スタッフの健康やメンタルの状態が直接的にサービスの質や利用者の安全に影響を与えるため、これらの現象を適切に管理することが非常に重要です。
プレゼンティーズムやアブセンティーズムの原因を特定し、それに対する対策を講じることで、事業所のサービスの質や経済的な健全性を維持・向上させることができます。
健康経営を実践したくなりましたよね。
健康経営が、企業のイメージ向上に寄与する具体的なメカニズムは以下の通りです。
Office SUGIYAMA グループ代表。採用定着士、特定社会保険労務士、行政書士。1967年愛知県岡崎市生まれ。勤務先の倒産を機に宮崎県で創業。20名近くのスタッフを有し、採用定着から退職マネジメントに至るまで、日本各地の人事を一気通貫にサポートする。HRテックを精力的に推進し、クライアントのDX化支援に強みを持つ。著書は『「労務管理」の実務がまるごとわかる本(日本実業出版)』『新採用戦略ハンドブック(労働新聞社)』など