コストをかけない介護事業所のIT化へのファーストステップ

2023.03.15
2023.03.15
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はじめまして。わたしは、介護事業所のIT化を支援しているNPO法人タダカヨの佐藤拡史と申します。昨今、介護業界では「IT活用」「生産性改善」などの言葉がよく聞こえてきます。皆様は、この言葉を聞いてどのように感じられていますか?

「興味はあるけど、何から始めたら良いか分からない」
「やりたいけど、お金がない」
「ITの苦手な職員が多いから、うちでは無理」

このように感じられている方も多いのではないかと思います。本コラムでは、そのような方に有益な情報をお伝えしていきます。

目次
    「お金がかからないIT」の普及を非営利で目指す
      コロナ禍の面会制限が活動開始に
        介護従事者のための無料オンラインPCスクールには月間1000名が参加
          高齢者施設向け無料レクでウェブ会議のハードルを下げる

            「お金がかからないIT」の普及を非営利で目指す

            NPO法人タダカヨは、「ITを上手に使って、お金をかけずにより良い介護へ」というVisionを掲げ、全国の介護事業所へ「業務に役立つ無料もしくは低コストのITツール」の普及活動を行っている非営利団体です。「タダカヨ」という少し変わった法人名は、「タダでカイゴをヨクしよう」という言葉の略語です。所属メンバーの多くは、社会福祉法人や医療法人で勤務している現役の介護従事者であり、本業の合間を縫ってタダカヨの非営利活動に励んでいます。

            世の中には、高機能かつ低価格のITツールが溢れています。それらの中には、Zoomに代表される「ウェブ会議ツール」、LINE WORKSに代表される「ビジネスチャット」、Google workspaceに代表される「グループウェア」などのように、介護事業所の業務に有益で、かつ無料で使えるITツールも多数含まれています。

            私たちは、これらのITツールを「お金のかからないIT」と呼んでいます。このお金のかからないITを全国24万件の介護事業所へ2025年までに届けることが、私たちが掲げている目標の1つです。その結果、日本中の介護従事者の負担軽減を実現することに加えて、IT化のコスト削減効果によって、介護事業所の「収益性の向上」や介護従事者の「待遇の向上」にも貢献したいと想って活動しています。

            コロナ禍の面会制限が活動開始に

            この活動を始めたきっかけは、新型コロナウイルスの第一波が到来していた2020年まで遡ります。当時、私たちは「コロナ禍で面会が出来なくなった高齢者施設のご利用者様に、オンライン面会を届けたい」という思いから、有志が集まって「LINE・Zoomを使ったオンライン面会マニュアル」を制作して、インターネット上に無償公開しました。

            このオンライン面会マニュアルはSNSやクチコミで広まり、累計7万回以上もダウンロードされて私たちのところには日本中からたくさんの感謝の声が寄せられました。その時、私たちは「世の中にある便利な無料アプリが、介護業界にもっと普及したら、介護従事者もご利用者もご家族も、もっともっとハッピーになるのでは?」と考えました。こうした活動を本格的に行うためにNPO法人タダカヨを設立し、現在に至ります。

            介護従事者のための無料オンラインPCスクールには月間1000名が参加

            ここからは、タダカヨが行っている具体的な活動を紹介させて頂きます。私たちは、「小規模の介護事業所のIT活用を応援したい」という想いから、介護従事者のための無料オンラインPCスクール「タダスク」を定期的に開講しています。

            毎月20-30回、平日の夜や週末に様々なテーマの講義を開いています。有難いことに参加人数がどんどん増えており、直近では月間1,000名が参加するまでに規模が拡大しました。参加者のお仕事は、独立系の居宅介護支援事業所やデイサービスで管理者やケアマネを務めている方が多く、利用者支援や社内マネジメントの時間を創出するために、熱心に業務効率化のノウハウを吸収されています。

            タダスクでは、現在13名のメンバーが講師を務めています。講師メンバーのほぼ全員が、介護事業を営む法人で勤務しており、かつデジタル庁から「デジタル推進委員」として任命を受けています。介護現場とITの双方に精通しているこれらのメンバーが、自分たちの職場で実際に行っているIT活用ノウハウを中心に、受講生へレクチャーしています。また全講義のプログラムの内、7割以上の講義は、受講生が実際にITツールを触りながら学習する「体験型」のプログラムとなっています。

            タダスクで行っている代表的な講義テーマは、以下の通りです。

            ・介護保険申請を効率化するエクセルフォーマット作成ワークショップ
            ・介護事業所の業務に役立つスマホ活用術
            ・無料アプリで始めるFAXのペーパーレス管理術
            ・無料アプリを使ってPDFを編集・電子署名してみよう
            ・探したい情報・ファイルが直ぐに見つかる「検索テクニック」

            タダスクに継続的に参加されている方からは、様々な業務改善事例・成功事例を伺っています。詳しくは、次回のコラムで解説します。

            もしご興味を持たれた方は、ぜひ当法人のホームページもご覧になってください。

            高齢者施設向け無料レクでウェブ会議のハードルを下げる

            また、当法人は、「通所・入所系高齢者施設にウェブ会議ツール活用のきっかけを届けたい」という想いから、こうしたツールを使った無料オンラインレクイベント「タダレク」を定期開催しています。体操レクや音楽レク、落語会、お花見ツアー、マジックショーなどの様々なイベントを毎月1-2回開催しています。参加者数は、多いときでは1回で1,000施設以上・1万人以上に及び、多くのご利用者様と介護スタッフ様に喜んで頂いています。

            タダレクをきっかけに初めてウェブ会議ツールを使用した施設は、累計2,327施設に上ります。使ってみる前は、「私には絶対無理!」と言っていたスタッフが、いざ使ってみると意外と簡単だと気付き、その後「次の〇〇委員会は、オンラインでも参加できるようにしませんか?」などと、IT化に前向きになったというお話しも多数お聞きしています。ウェブ会議ツールは、「会議・委員会・研修のオンライン化」や「オンライン面会」、「オンラインレク」だけではなく、「管理者と職員のオンライン面談(1on1ミーティング)」「サービス担当者会議のオンライン参加」「ご家族とのオンライン面談」など、多数の有効活用事例が生まれています。

            以上、コストをかけないIT化のファーストステップとして、NPO法人タダカヨの活動をご紹介しました。次回は、タダスクの受講生である介護事業所の管理者が、実際にどのような業務改善を実現できたかについての事例をご紹介します。最後まで読んで下さりありがとうございました。

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