11月16日に開かれた第193回社保審・介護給付費分科会にて、2021年度の介護報酬改定に向けた具体的な論点と対応案が示されました。訪問介護に関しては、看取り期における「2時間ルール」の弾力化や、特定事業所加算の見直し、通院等乗降介助の範囲拡大などが議題となりました。
現行では、訪問介護に係る2時間ルールとして、前回サービスから概ね2時間未満の感覚で訪問介護サービスが提供された場合、それぞれのサービス提供所要時間を合算して報酬を算定することとされています。
一方で、看取り期に1日あたりの訪問回数が増えた事業所は約3割あるとの調査結果が出ています。
訪問介護における看取り期への対応を充実させ、報酬体系を簡素化するという視点を踏まえて、厚労省は「看取り期における訪問介護に係る2時間ルールの弾力化」を提案しました。この方向性について、日本経済団体連合会の間利子参考人は「弾力化そのものは否定しないが、全体の回数が増えすぎないような枠組みが必要では」と意見を述べています。
本分科会では特定事業所加算について、訪問介護以外のサービスで適応されている類似加算「サービス提供体制強化加算」を踏まえた見直し案が提案されました。慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究所教授の堀田聰子氏は、方向案には賛同するとしたうえで「加算の目的の棚卸が必要ではないか」との意見を述べたほか、目立った反対意見は聞かれなかったため、今後は提案に沿って検討が深められていく見込みです。
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通院等乗降介助について、自宅が始点または終点となる場合に、病院から病院もしくは通所系・短期入所系サービス事業所から病院といった目的地間の移送についても、介護報酬の算定を認める方向性が提示されました。
日本医師会の江澤和彦氏は「2つ目のパターンは現在、通所系事業所の職員が無償で行っているのが現状。現場になじむのか、ニーズを検討してほしい」と述べました。パターン1については反対意見が見られなかったため、おおむね対応案に沿う形で議論されていくと思われます。
生活機能向上連携加算(Ⅱ)の算定要件について、「サービス提供責任者とリハビリ専門職等がそれぞれ利用者宅を訪問した上で協働してカンファレンスを行う」という現行の要件に対し、利用者・家族も参加するサービス担当者会議での開催を要件として可能にする対応案が示されました。委員からの反対意見はなく、上記の方針で議論が具体化されていく見込みです。
引用:第193回社保審・介護給付費分科会「訪問介護・訪問入浴介護の報酬・基準について」より
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。