10月22日に開かれた第189回社保審・介護給付費分科会では介護報酬改定に向け、特定事業所加算の見直しをはじめ、訪問介護分野における複数の論点と方向性が示されました。
特定事業所加算は、質の高いサービスを提供する事業所の評価を目的とした加算である一方、算定要件を満たしているにもかかわらず非算定、もしくは下位の区分を算定している事業所の割合は、加算Ⅰ~Ⅲでそれぞれ41.1%、36.1%、54.8%となっています(2020年調査研究事業の速報値より)。その理由として、「利用者の区分支給限度基準額の超過を回避するため」と回答した事業所が一定数存在している事実が示されました。
この点に対し、類似加算として訪問介護以外のサービスにおけるサービス提供強化加算が提示されました。サービスの質を評価する上記加算は、区分支給限度基準額の対象外に位置付けられています。
これを踏まえ、訪問介護における特定事業所加算についても区分支給限度基準額の対象外とする方向性が検討されました。この方向性が実現すれば、要件を満たしているのに算定していない事業所が減り、上位加算を取得できる事業所が増えると思われます。委員からは賛同する意見が多く集まりました。
生活機能向上連携加算(Ⅱ)の算定要件の緩和についても論点となりました。「サービス提供責任者とリハビリ専門職等がそれぞれ利用者宅を訪問した上で協働してカンファレンスを行う」という要件に対し、カンファレンスを、サービス担当者会議と同時に開催できるようにする、という方向性が示されています。利用者や家族にとってもスケジュール調整がしやすくなるなど、賛成意見が多数あがり、上記の方針で議論が具体化されていく見込みです。
通院等乗降介助について、居宅が始点または終点となる場合に、病院から病院もしくは通所系・短期入所系サービス事業所から病院といった目的地間の移送についても、介護報酬の算定を認める方向性が提示されました。こちらも委員から概ね賛成意見が集まっています。
在宅での看取りのニーズが高まっていくことが予測されるなか、訪問介護職員の看取りに関する加算の新設が提案されました(訪問入浴介護も同様)。
この点について前向きな意見が目立った中、民間介護事業推進委員会の今井準幸氏は「看取り期の介護にかかわる介護職員を対象とした研修会がないのが実情」と提言。国に対して研修体制作りの必要性を訴えました。訪問介護職員がACP(アドバンス・ケア・プランニング)の研修を修了していることを新加算の要件にしてはどうかという意見もあがっています。
引用:第189回社保審・介護給付費分科会「訪問介護・訪問入浴介護の報酬・基準について(検討の方向性)」より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年10月26日掲載のものです。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。